• 子どもが独立し、再び夫婦ふたりの暮らしがスタートした料理研究家の上田淳子さんに、夫婦ふたりの暮らし方について伺いました。
    (『天然生活』2023年8月号掲載)

    相棒という距離感を保てる家に住み替え

    この春、『今さら、再びの夫婦二人暮らし』を上梓した料理研究家の上田淳子さん。改めて始まるふたり暮らしに向け、中古の戸建てをリフォームして住み替えました。思いきって暮らしをリセットした姿が、反響を呼んでいます。

    しかし初めから、住み替えを考えていたわけではありません。それまでの暮らしに疑問をもつようになったのは、コロナ禍で増えた夫の在宅勤務がきっかけでした。

    「当時の私の仕事場は自宅のキッチン。私の撮影中、夫は水すら気軽に飲めない状況でした。夫が我慢しているかと思うと、私も仕事に集中できなくて。自分のペースを乱されるのがストレスでした」

    また、夫は同世代にありがちな仕事人間で、家のことはすべて妻に任せるタイプ。もうすぐ双子の子どもたちが独立して、再び夫婦ふたり暮らしに戻るのに、このまま夫の定年を迎えるのはまずいと、強く思ったそうです。

    夫婦の距離感について語り合うことからスタート

    とはいえ、具体的に何をすればいいのかわからなかった上田さん。夫と一緒にいる時間だけはあったので、話し合うことから始めてみました。しかし、話は漠然としていてなかなか前に進みません。そこで、テーマを絞って自分なりに考えてから、夫に提案することに。

    ひとつ目のテーマに選んだのは、ほどよい夫婦の距離感です。ふたりで過ごす時間と、自分時間とのバランスについて検討しました。

    画像: 編集者の夫の基地は3階の書斎。床の間や仏壇置き場を本棚に改装。趣味のお酒も楽しめるよう、奥に小さな流しを設置。在宅勤務の日は一日中ここで

    編集者の夫の基地は3階の書斎。床の間や仏壇置き場を本棚に改装。趣味のお酒も楽しめるよう、奥に小さな流しを設置。在宅勤務の日は一日中ここで

    「わが家の場合、夫婦共通の趣味はないけれど、それぞれやりたいことはたくさんある。ふたりとも相手の世界を尊重し、お互い好きなことをして生きていきたい性分。ときどき一緒に行動するくらいがちょうどいいのかな、という具合に考えていきました」

    たどり着いたのは、相棒という距離感です。お互いの気配を感じながら、それぞれが好きなことをしていくという、夫婦対等に生きていく関係性です。

    夫に提案すると、すんなり同意してくれたそう。必然的に次のテーマは、相棒という夫婦の距離感を保つために必要な住空間、となりました。

    画像: 上田さんの基地は1階のキッチンスタジオ。料理撮影や料理教室を行うほか、DVD鑑賞や読書もここで。「夫が急に入ってくる心配がないので気が楽です」

    上田さんの基地は1階のキッチンスタジオ。料理撮影や料理教室を行うほか、DVD鑑賞や読書もここで。「夫が急に入ってくる心配がないので気が楽です」

    「夫の帰宅が遅く、家であまり会わない日々から一転。リビングで四六時中顔を合わせるのは、とてもじゃないけど息が詰まる。それぞれの部屋は絶対必要だよね。キッチンスタジオがあれば、撮影中のストレスが解決できそう。住み慣れて友達も多くいる東京で、人が集まれる“基地”みたいな場所があれば楽しいんじゃないかなど、たくさんの意見が出ました」

    これらをすべてかなえるためには、住まい自体を替えるほうが早いだろうという結論に達し、それまでの家よりも広い中古の戸建てをリフォームして、住み替えることにしたのです。



    <撮影/山田耕司>

    上田淳子(うえだ・じゅんこ)
    料理研究家。調理師専門学校の西洋料理研究職員を経て渡欧。ヨーロッパや日本のレストランで修業後、独立。自宅で料理教室を主宰するほか、雑誌やテレビ、広告などで活躍。近著に『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)、『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』(世界文化社)。インスタグラム@ju.cook

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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