• 予約の取れない漢方家・櫻井大典先生に教わる“心の養生法”。現代人の日頃の小さな不調に中医学と漢方の視点から向き合います。『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)より、「しっかり寝てるのに気力が出ない」という悩みについての解説を紹介します。

    「睡眠時間は毎日しっかり7時間取っています。でも、なぜか日中眠くなり、集中力が続きません」

    毎日、ほぼ深夜1時までには寝て、朝8時前後に起き、11時頃から仕事を始める、というスケジュールです。

    7時間、もしくはそれ以上睡眠を取っている日もあるのですが、午前中は頭がぼんやりとして集中力が続かず、午後2時すぎからようやく調子が乗ってくるという感じです。

    朝から活発に働くための秘訣はありませんか?

    “何時間眠るか”よりも、“何時に寝るか”が重要

    中医学で睡眠について語るときは、実は睡眠時間よりも、何時に眠ったか、という時刻が重要になってきます。下の図を見てください。

    これは、時刻と、その時刻に活発に働く臓器の関係を表した、「子午流注(しごるちゅう)」と呼ばれるものです。

    なかでも重要なのは23時から深夜3時。図を見ると、23時から深夜1時は六腑の「胆(たん)」が該当していますね。

    画像: “何時間眠るか”よりも、“何時に寝るか”が重要

    「胆」という臓器は消化器官の一つで、消化の最終段階を行う場所です。つまり、ここで「胆」が活発に働くことで、体に栄養を補給し、日中疲労した体の修復を行うわけです。

    でも、この時間に体が起きて活動していると、エネルギーがそちらにも使われますから、「胆」は全力で働けません。修復したいのに栄養が足りない、という状況が起こるわけです。

    だから23時に起きている=活動しているのはよくない。できればその前の時間帯、21時からすでにリラックスし、体が眠りに向けて準備している状態が望ましいです。

    この時間に該当する「三焦(さんしょう)」という六腑は、体内の水分調節を行うリンパ管のような働きをする場所で、水を流して掃除をする、みたいなイメージです。

    そして、「胆」の次は、五臓の「肝(かん)」の時間帯。「肝」は「血(けつ)に」を貯めておくタンクのような役割と考えられています。この時間に、「血」がつくられ、「肝」に貯められるわけです。

    つまり、21時から23時の間で、余分な水を流して体内の浄化を済ませ、23時から深夜1時の間に消化・吸収の最終段階を終えて体に栄養が補給され、深夜1時から3時までに栄養を蓄えたきれいな「血」が「肝」に貯められる、というスケジュール

    21時から深夜3時までは、いわば体内のメンテナンス時間なのです。そのいずれかの時間帯でも起きているのであれば、臓器の働きは鈍くなりますから、体は修復されないまま朝を迎えてしまいます。

    相談者の方の眠る時刻を見ると、中医学の観点から言えば、睡眠が取れていない、という判断になります。

    さらに言うと、23時に「胆」が消化の最終段階をするわけですから、逆算すると夕食は18時までに済ませておくことが理想です。

    できる日だけでも、理想の時間割を

    とはいえ、これは理想の話。僕も22〜23時に寝るように努めていますが、難しい日もあります。また、夜勤など、お仕事の都合でどうしてもこの時間に眠ることはできない方がたくさんいらっしゃることも、日々実感しています。

    そういう場合は、休みの日だけでも「子午流注」の時間割に沿って睡眠をとることをおすすめします。

    ちなみに子どもの場合は、より自然に近い存在なので、子午流注により厳格に則って21時までの就寝を目指すのがよいでしょう。

    ただし、しっかり昼寝をしている場合は、多少遅くなるのはしょうがないことです。22時頃までの就寝を目指しましょう。

    画像: できる日だけでも、理想の時間割を

    本記事は『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)からの抜粋です

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    X(旧Twitter)での発信が人気を集め、予約の取れない漢方家と評判の櫻井大典さんが「不眠」「不安」「イライラ」などの不調を中医学と漢方の視点から解説。ひとつひとつの悩みに対して、ときに自身の体験談を絡めながら丁寧に向き合います。生活習慣における対処法から、効果が期待できる漢方食材の一覧表まで役立つ情報が満載です。



    櫻井大典(さくらい だいすけ)
    漢方コンサルタント、国際中医相談員、日本中医薬研究会会員。漢方薬局の家に生まれ、幼少の頃から漢方薬に慣れ親しみながら、北海道の自然の中で育つ。カリフォルニア州立大学へ進学し、心理学や代替医療を学ぶ。帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学び、中国・首都医科大学附属北京中医医院、雲南省中医医院での研修を経て、国際中医専門員A級資格を取得。現在は、電話およびSkypeで漢方相談にのっているほか、講演や書籍、雑誌、またX(旧Twitter)やnoteを通じ、現代に合った実践しやすい養生法を幅広く発信。Xのフォロワー数は18万人を超え、より多くの人々に中医学の知恵をやさしく、わかりやすく伝え続けている。
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