• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。飼い主を悩ませるいきものの粗相。だけど、人間都合の模様替えも、猫にはストレス。見直すべきところがありそうです。

    猫に合わせて暮らすとインテリアがダサくなるという悩み

    夢にまで見たしあわせな猫との生活。ですが、いきものと暮らすということは、人間の思いのままに生活を営めないということでもあります。

    たとえば、トイレ。どれだけおしゃれなインテリアにしても、猫用トイレは必ず必要です。部屋の一角にはそれを置かなければなりませんし、お掃除も忘れてはならない大切なことです。

    そんな猫の排泄事情。

    実は、我が家には今まで二匹、排泄で頭を抱えた猫がいました。1匹は、飼い主さんが亡くなりになり我が家に来た、膀胱と腸がまひした「イレーネ」。この子はおしっこもうんちも垂れ流しで、慌てて「洗えるペットシーツ」などを床に敷き、ソファやベッドも同じものでカバーしました。正直……いっきに家がダサくなりました。

    2匹目は、先日亡くなった老猫「トト」。この子は最初は普通におトイレができたのですが、年齢を重ねるにつれ、おしっこの場所を間違えてしまい、様々な場所でおもらしをするようになってしまいました。

    この時も、イレーネの際に買ったペットシーツが役立ち、私と夫の「できればこうしたい」という信念である「おむつなし生活」を送ってもらうことができました。

    イレーネもトトも亡くなり……、我が家は十年ほどぶりに、おもらしの心配をしないですむ家になりました。

    念願の北欧インテリアに模様替えした矢先…

    トトを亡くしてすぐの心に空いた寂しさを埋めたいという気持ちから、私はインテリアに凝るようになりました。今まで2階の寝室で寝ていたのですが、ふと1階のリビングの横の和室にも、高齢の猫でもひょいと上れる高さの低いベッドがあればと思い立ち、安いものですが買いました。枕やタオルケットも北欧風で揃え、猫たちも気に入って、しあわせ1階生活が始まった――と思ったのは1週間たらずのことでした。

    まだ1歳の「コウ」が、なぜかベッドで盛大におもらしをするようになったのです。

    画像: 念願の北欧インテリアに模様替えした矢先…

    猫の粗相の理由を調べると思い当たることが

    正直、思いきりへこみました。ようやく好きなインテリアにできるようになったのに。また、おしゃれじゃないおもらし対策の部屋にしなければならないの?

    私は半分泣きながら、インターネットを検索しました。「洗えるペットシーツ おしゃれ 北欧」など、だめでもともとで探していくと……あったんです。最初にそれらを必要とした頃にはなかったような、デザイン性の高いマットレスカバーやシーツが。

    使用項目を読んで、なるほど、と思います。そういったカバーやシーツは、ペットの粗相だけでなく、今の時代、お年寄りの介護や女性の突然の生理、お子様のおねしょなど、人間が生きていく日常の中でどんどんその必要性が認知されてきていたのです。

    これでコウがおもらしをしても安心。いきものは粗相だってする。それを受け入れて一緒に過ごせば問題ない! そう思ったのですが……それは大きな間違いでした。

    やっぱり今日もしてしまったおもらしに、インターネットで「猫 ベッド おしっこ」と調べていくと、猫の粗相には重大なSOSが隠れていたのです。

    猫が粗相をしてしまうのには6つの原因が。

     (1)トイレの環境が気に入らない

     (2)住宅環境が大きく変化した

     (3)体の衰え

     (4)排尿に関わる病気

     (5)発情によるマーキング

     (6)トイレの場所を覚えられていない

    (3)から(6)は全部クリアです。だけど、(1)と(2)を読んで青ざめました。そのまま当てはまっていたのです。1階にベッドを置いたことにより住宅環境が変化しました。ベッドの分、2つあったトイレを1つにし、普段あまり使われていないほうを仕事部屋に移動してしまいました。

    画像: 猫の粗相の理由を調べると思い当たることが

    粗相に隠されたメッセージ

    「いきものは粗相が当たり前」だなんてとんでもない思い違いだったのです。

    それからは、ベッドは捨てることはできないので、その部屋のトイレを2つに戻し、人間は臭くても、猫が寝て起きたらすぐトイレに行けるようそばに設置しました。またこまめな掃除も、改めて心に誓います。

    「あるがまま」を受け入れることはいっけん正しいことのように思えるけれど、大切なメッセージを見逃してしまうこともある……。

    粗相というSOSをきっかけに、もっと猫たちに居心地の良い我が家にしたいと、心底思うのです。


    画像: 粗相に隠されたメッセージ

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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