• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫の「ゴロゴロ」の効果について。

    猫のおかげでメンタルが安定するようになった私

    生きづらい時代。

    私のSNSのお友達のほとんどが、「心が不安定な方」と、そして「猫が好きな方」です。

    私自身がそうだから……というのはあるのでしょうが、きっと、このふたつは深い絆で結ばれているような気がするのです。

    私自身、心の病気を数えきれないほど持っています。

    よく耳にすることのある「死にたい気持ち」はもちろんのこと、ささいなことでパニック状態にまでなる「不安」。そして、「イライラ」や「激しい落ち込み」。これらのメンタルの不調と隣り合わせで生きています。

    実は、かつて猫と暮らす以前は、私はそんな持ちきれない感情のジェットコースターに振り回されて、パートナーに暴言などを吐いたり、家で暴れたりを繰り返していました。自分でも自分が抑えきれなくなっていることは分かるのですが、クールダウンする方法が分からないのです。

    そんな私が、今ではちょっとやそっとの腹の立つことやショックなことがあっても、毎日、にこにこしあわせを感じていられるようになりました。

    何が変わったのか。

    99%が「猫のチカラ」です。

    画像: 猫のおかげでメンタルが安定するようになった私

    猫の「ゴロゴロ」が心身をいやしてくれる

    もちろん、「猫を怖がらせてはいけない」という自制心から、暴れたりするのを我慢したというのもあります。でもそれ以上に、彼らが私の回復の力になってくれたこと。

    それは「ゴロゴロセラピー」でした。

    悲しいことや落ち込むことがあって、誰にも心を開けずに横たわって耐えているとき、猫はふっとそばにきてくれます。

    そして、「大丈夫?」「かまってよー」と、私の顔のそばに寄り添い、ゴロゴロと優しい音で喉を鳴らしてくれるのです。

    私の気持ちの乱れも知らずになんてのんきな……そんなふうに思いながらも、涙がこぼれます。すぐそばに命がいること。私を信じ、受け入れてくれていること。

    気がつけばすうーっと眠りの中に誘われ、やりきれない気持ちもどこかへいってしまうのです。

    セロトニンを分泌させる効果も

    この「ゴロゴロセラピー」。実は医学的にも証明されているそうなのです。

    猫のゴロゴロ音の周波数は25ヘルツの低周波。これは副交感神経を優位にする働きがあるそうで、ハッピーホルモンといわれる「セロトニン」を分泌させる効果もあるのだとか。

    すると、自律神経やホルモンバランスを整えてくれるだけでなく、血圧を下げたり、不安を和らげたり、ストレスをなだめたり……免疫力や自然治癒力まで高めてくれるそうなのです。

    すでに、セラピーキャットが医療や介護の現場で活躍してくれています。ゴロゴロセラピーだけでなく、逆に猫のお世話をすることで癒しにつながり、回復や治癒になるケースも少なくないそうです。

    もちろん、猫も魔法使いではありません。

    本当にどうしようもなく苦しいとき、いくらゴロゴロを聞いても立ち直れない場合もあるでしょう。そんなときは、信頼できる人に頼んで、自分も猫も癒してもらう。

    猫に「甘え方」を教わるのも大切な、猫の役割だと感じています。

    画像1: セロトニンを分泌させる効果も

    画像2: セロトニンを分泌させる効果も

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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