• 多くの神話が語り継がれる、宮崎県北部の高千穂郷では、一年中しめ縄を飾る文化が根付いています。地元で60年以上わら細工をつくり続けている「わら細工たくぼ」の3代目・甲斐陽一郎さんにしめ縄のお話を伺いました。たくぼがつくる「縁起物のわら細工」もご紹介します。
    (『天然生活』2020年4月号掲載)

    神話の里で、暮らしに根づく「しめ縄文化」

    宮崎県の北端部、日之影町。

    高千穂峡で知られる高千穂町の隣に位置し、多くの神話や伝説が語り継がれてきました。

    この地域では、古くからしめ縄づくりが盛んに行われており、正月以外も家や商店の軒先にしめ縄を飾るのが日常の光景です。

    3代目の甲斐陽一郎さんが率いる「わら細工たくぼ」では60年以上、ここでしめ縄とわら細工を手がけています。

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    前回のお話はこちら

    画像: 向かって右から房が「七・五・三」の伝統的なしめ縄。正月に新しいものに替えるので、県外からの受注は11月までに終え、12月は地元のしめ縄づくりに専念する

    向かって右から房が「七・五・三」の伝統的なしめ縄。正月に新しいものに替えるので、県外からの受注は11月までに終え、12月は地元のしめ縄づくりに専念する

    「一年中しめ縄を飾る習慣があるのは、宮崎県でも高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町だけなんです」と、3代目の陽一郎さん。甲斐家の玄関にも、立派なしめ縄が飾られていました。

    この日泊まったホテルの入り口にも、立ち寄ったコンビニの自動ドアの上にも。町を歩くと、しめ縄文化が根づいていることがわかります。

    「この地域のしめ縄は、房の数が七・五・三。それぞれ、天神七代・地神五代・日向三代の神さまを表しています。しめ縄は七五三縄とも書く。わらの束で七五三を表現するのは、しめ縄の源流の形です」

    もともと、しめ縄には“結界”の意味があるとか。神さまを家に入れて、家庭の平和を願うのです。

    「神さまというのは宗教的な意味よりも、生活のよりどころというか。ふと手を合わせたくなる、そういう神さまを身近に感じる土地柄かもしれません」

    この地で育ったからこそ、だれかのために願ったり、想いに寄り添ったりするしめ縄は、暮らしのなかで当たり前の存在に。いまの仕事の土台となったのでしょう。

    画像: 35年前、「普通じゃつまんねぇ」と祖父が亀、祖母が鶴を付けたしめ縄。いまも旅館の飾りとして人気

    35年前、「普通じゃつまんねぇ」と祖父が亀、祖母が鶴を付けたしめ縄。いまも旅館の飾りとして人気

    画像: 父・稔さんが毎年つくり、中川政七商店で販売している十二支シリーズ

    父・稔さんが毎年つくり、中川政七商店で販売している十二支シリーズ

    画像: もともとは、しめ縄づくりの合間に趣味的につくられていたわら細工。玄関のねずみの飾りは妹さん作

    もともとは、しめ縄づくりの合間に趣味的につくられていたわら細工。玄関のねずみの飾りは妹さん作

    たくぼがつくる、縁起物のわら細工

    お正月限定の飾りではなく、一年中飾ることができるわら細工。

    どれも「祝結び(いわいむすび)」や「祝酉(いわいどり)」など縁起のよい名前がつけられています。

    茶色は天日干しをして米を収穫したあとのわら、青色は実ができる前に刈り取った青わらで、それぞれが魅力的。

    卵を包んだ「卵つと」や、魔除けの意味をもつ「とうがらし」も飾り物のひとつです。

    安産を願う「湯襷(ゆだすき)」

    画像: 安産を願う「湯襷(ゆだすき)」

    産婆さんがかけていた湯襷(ゆだすき)の結びを、わら縄で表現。「子授・安産・豊穣」の意味がある。

    大胆な「根つき穂つき」

    画像: 大胆な「根つき穂つき」

    実った稲穂を、根も穂も付いたまま綯ったもの。「その土地に根づき、実らせる」という願いが込められる。

    神聖な印象の「瑞穂」

    画像: 神聖な印象の「瑞穂」

    米付きの稲を束ねたシンプルな稲束飾り。神話の中で、神さまが人間に渡した1束の稲を表現している。

    お客をとりこむ「祝酉(いわいどり)」

    画像: お客をとりこむ「祝酉(いわいどり)」

    昔から神使いとされてきた鳥の飾り物、祝酉(いわいどり)。「とりこむ」ということで商売繁盛の願いも。

    縁起物「わらの壁かけ」

    画像: 縁起物「わらの壁かけ」

    横綱結びに、高千穂神話の神である手力雄命と天鈿女命のお面、祝亀を付け、五色の御幣で装飾した縁起物。

    長寿を願う「祝亀(いわいがめ)」

    画像: 長寿を願う「祝亀(いわいがめ)」

    長寿の象徴、祝亀(いわいがめ)。一歩一歩あゆみを進めることから、「継続」の象徴としても親しまれる。

    夫婦円満の「祝鶴(いわいづる)」

    画像: 夫婦円満の「祝鶴(いわいづる)」

    夫婦で一生連れ添う象徴の、祝鶴(いわいづる)。「鶴は千年」ともいい、長寿や繁栄の願いも込められる。

    わらだけの鍋敷き

    画像: わらだけの鍋敷き

    中の芯まで手綯いの縄で制作。わらをこがしながら使うと、経年変化を楽しめる。土鍋など熱いものに。

    梅結びの鍋敷き

    画像: 梅結びの鍋敷き

    手綯いの1本の縄を編み込んで梅結びに。最初と最後の縄を上で結んで吊るす、高度な技術を要する一品。

    わらで包む「卵つと」

    画像: わらで包む「卵つと」

    卵が貴重だった時代、割れないように持ち運ぶため、わらで包んだ基本の結び。いまは飾り物としてつくっている。

    稲わらののれん

    画像: 稲わらののれん

    年に2~3個しかつくれないという受注生産ののれん。人が潜ることで色が変わるので、育てる楽しみも。


    〈撮影/森本菜穂子 取材・文/大野麻里〉

    わら細工たくぼ
    3代目の甲斐陽一郎さんを中心に、宮崎県の日之影町でしめ縄とわら細工をつくる。「たくぼ」とは、この地域で番地の代わりに家を指す屋号。甲斐家の場所は古くからたくぼと呼ばれており、そこから陽一郎さんが名づけたそう。
    https://takubo753.jp/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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    天然生活オンラインショップでたくぼのわら細工を販売します。

    画像1: 「しめ縄文化」が根付く神々の里・高千穂郷で生まれる“縁起物のわら細工”/わら細工たくぼ

    毎年大変ご好評をいただいている、「わら細工たくぼ」の縁起物の飾りを天然生活オンラインショップで販売します。

    3代目甲斐陽一郎さんの指揮のもと、宮崎県・高千穂郷で制作されるわら細工。

    職人による美しい日本の文化と暮らしの道具で、幸せな1年をお過ごしください。

    ▼商品ページはこちらから
    https://shop.tennenseikatsu.jp/search?q=%E3%82%8F%E3%82%89%E7%B4%B0%E5%B7%A5%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BCL

    天然生活 ONLINE SHOP
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    画像2: 「しめ縄文化」が根付く神々の里・高千穂郷で生まれる“縁起物のわら細工”/わら細工たくぼ



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