クリスマスになると思うこと
無宗教の私ですが、クリスマスというと意味もなくわくわくしてしまいます。
月の初めからシュトーレンを焼き始めたり、クリスマスメニューを考えたり……。こんなに寒い日々なのに、心はぽかぽかあったかくなるのです。
その様子は猫たちにも分かるよう。
シュトーレンの準備をする私の足元をうろちょろしたり、発酵しているヒーターの前で興味深げに見守ったり、彼らもクリスマスが来るのを心待ちにしているように感じます。
クリスマスって、当日も楽しいですが、その準備が一番楽しいですよね。
どんなことをしよう。
思い出に残る日になるのかな。
そんなことを想像しながら、ひとつ、ひとつ、重ねていくのだと思います。
迎えた猫を幸せにしたいという思いを新たにする年末
今年ももうすぐ終わり。そんないま、思い浮かぶのは、「猫の里親さんになる時の思い」です。
我が家は基本的に自分たちが保護した子を家族に迎え入れているのですが、時々、ハンデを抱え貰い手のいない子や、ご家族がご病気で一緒に暮らせない、もしくはご家族が亡くなってしまった、など、事情があってひとりになった猫を家族にすることがあります。
そんな時は、もうドキドキ!
だいたいが大人の猫なのですが、同時に、心に深い傷を負っている子が多くいます。そのため、その子のハンデをサポートするため部屋の模様替えをしたり、ご家族に取り残されてしまった子には、つらかった記憶を忘れられるくらい愛情をそそぎます。
そういった時、すごいパワーを発揮するのが夫の「猫への無償の愛」。
つらかった記憶を消し去るぐらいの愛を
フリーランスで仕事をする我が家は、新しい子が来ると、しばらくは仕事をお休みしてつきっきりで見守りますし、夜も、その子がベッドに来られないようなら、夫はその子のいる場所がどこであれ、寄り添って眠ります。この夏亡くなった老猫「トト」は、2階の寝室に来られない(階段を上れない)子だったので、亡くなるまでの3年間、夫はリビングにマットレスを敷いて眠りました。
目の見えなかった「みつき」は、あぐらをかく夫の膝が大好きで、見えないはずなのに必ずそこに鎮座していました。
それだけ愛情を傾けると、猫たちにもそれが伝わるようで、みんな、夫にラブラブになります。
夫がそばに来るだけで、撫でてもいないのに喉をグルグル……。すっかり「お父さんっ子」になるのです。
我が家には人間の子どもはいません。
幼少期に傷を抱えた私は、子どもを作る決心をこの歳になっても持てませんでした。
でもその分、ありあまる数の猫たちが子どもになってくれました。
夫が猫たちに対し、その子のありのままを愛する姿勢を見せ、ただ受け入れる。どんな悪いことをしても叱らない。そんな姿を見るたび、私は、人間の子はいなくても、子育てを教わっている気がします。
そして今年も、猫という我が子たちと一緒にクリスマスを過ごせるしあわせを噛みしめるのです。
咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」