(『天然生活』2023年12月掲載)
小さなつくり手を応援。おいしく楽しい暮らしを
大学院生のころから約25年京都に住み、都市部ながらも自然環境が近く、小さな街並みで顔が見える関係がつくりやすいと京都・左京区で生活雑貨と乾物の店「すみれや」を営む春山文枝さん。
「すみれや」では、無農薬米や有機野菜、量り売りの乾物、稲を使ったわら細工など、環境に負荷が少ない商品を取りそろえています。
春山さんは自身の生活のなかでも、循環する暮らしを日々、実践中なのだそうです。
「お金を使わない方なのですが、使うときはできるだけ、着るものでも食べるものでも、ていねいにつくられたものに使いたいと思っています。たとえば、廃棄される落ち綿でつくられた靴下ひとつとっても、そういう風につくられたものを履くと気持ちがいいですし、そういうものを選ぶことでつくり手の方たちがものづくりを続けられると思うと、ひとつひとつのもの選びを大切にしたいと思います。私が暮らす左京区では、小さくて個性的なお店がたくさんあるのですが、買って応援することで、それらのお店が続いていくような街に住みたいと願っているんです」
以前は、グローバルな開発問題などに取り組む環境NGOに勤務していた春山さん。
「ずっと環境問題に取り組んでいたのですが、いまは、楽しく暮らしながら実践することで、いい循環へと広がっていくといいなと考えています。おいしいね、素敵だね、という気持ちを環境的にも社会的にも経済的にもいい循環につなげていきたいと始めたのが『すみれや』なんです」
そんな前向きな気持ちを共有していくことで、お金を介在させる以外の循環が生まれます。
「小さなつくり手さんと仲良くなって、メンテナンスの方法や、かっこいい着方など、ものについてわからないことを教えてもらったり、逆に買い手の方が感想を伝えることでつくり手さんの励みになったり。『すみれや』では農家さんのところへ稲刈りのお手伝いに行って、その報酬にわら細工商品の材料の稲を頂いています。こういうことは人や情報の循環となり、つくり手さんを支える一助になります。この循環は、自分たちの楽しい暮らしにもつながっていくのではと考えています」
木造の古い家屋を改装した店内に、春山さんが厳選した商品が並びます。
01_循環する暮らし
量り売りのお店を利用する
欲しい分だけ買ってむだなく使い切れる量り売りは、家庭ごみを減らせるうえ、経済的にも合理的。
お店で購入する際は容器を持参。空きびんとコンテナには、雑穀やレーズンなどの乾物を、巾着はお米を購入する際に使用。
「あずま袋は軽く、持ち歩きがらくなのでよく使います。多めに買ったときのために数枚バッグに入れておきます」
02_循環する暮らし
小さなつくり手から買う
「すみれや」では店主の春山さんみずから、ひとつひとつていねいにものづくりを行っている生産者に直接会いに行き、買い付けを行っています。
そういったものを買うことは「つくっている方たちの応援になります」と春山さん。革のショルダーバッグは購入して7~8年になるそう。
「これまで何度も修繕していただきました」
03_循環する暮らし
手づくりしたり、直して使う
欲しいものを家にある材料を使って手づくりすること、一度手に入れたら修繕しながら使いつづけること。
それは、むだなごみを減らせるうえ、自分好みにできるので、一層愛着がわいてきます。
「ランプシェードは市販品で欲しいものが見つからなかったので晒で手づくりしました。台ふきは穴が開いたところを直し使いつづけています」
04_循環する暮らし
いらなくなったもの、欲しいものを伝え合う
店内にある「ほしいあげるボード」という名の伝言板。
「お客さま同士でご自身の不用品と、欲しいものを貼り紙で伝え合いものの譲渡をされています。冷蔵庫や、チャイルドシート、毛糸など、種類は多岐。お客さまから、ただ捨てるのは心が痛むので、次に使っていただける方がいてうれしいというお話を聞きます」
<撮影/伊東俊介 取材・文/吉田奈央>
春山文枝(はるやま・ふみえ)
京都市左京区で「乾物と生活雑貨 すみれや」を営む。京都・出町柳駅前で「多目的カフェ かぜのね」も運営。アメリカの大学在学中から国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」で活動・勤務。40代から「すみれや」「かぜのね」を運営。ほかに量り売りのお店を普及する活動「くるん京都」に参加。インスタグラム@sumireyakyoto
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです