(『天然生活』2022年2月号掲載)
ガラスの中の小さな苔の森
鎌倉・由比ヶ浜の古民家にある苔専門店「苔むすび」。オーナーで、苔テラリウム作家でもある園田純寛さんのアトリエ兼お店には、大小さまざまな苔が、その愛らしい世界を繰り広げています。
「苔の魅力は、ほかの植物と違ってギュッと小さな世界をガラスの中に閉じ込めて楽しめること。テラリウムはガラスの器の中で育てるので、狭い場所やテーブルの上でも手軽に飾ることができます」
苔の成長に欠かせない湿度管理ですが、テラリウムは器にふたをすることで容器内の湿度を一定に保つことができます。
「最初からできている苔テラリウムの作品なら、すぐに飾ることができてトラブルも少なくてすみます。もちろん、自分の好きな大きさの器を用意して、気に入った苔を植えてテラリウムづくりに挑戦するのも楽しいですよ。家にあるガラスの器でテラリウムをつくるなら、カットしたクリアファイルをふた代わりに。1mmくらいふたをずらして通気道をつくると湿度管理がうまくいきます」
飾る場所はトイレのような狭い場所でもOKですが、光の明るさには注意が必要です。
「直射日光が当たる場所は避けて、やわらかい光で光合成ができるようにします。薄暗い場所なら、日中はライトをあてて、読書ができるくらいの明るさをキープするようにしましょう」
苔は、日本だけでなんと1,800種類もあるそう。そのなかでも初心者がテラリウムで育てやすいのは、ヒノキゴケ、タマゴケ、ツルチョウチンゴケなど。
「苔の森にフィギュアを置いて、自分なりの世界をつくるのもいいですね。苔むすびでは、人や動物のほかにお地蔵さんのフィギュアも人気です」
ガラスの中でゆっくりと育つ苔の森。自宅にいながら小さな自然をじっくりと楽しめそうです。
園田純寛さんの苔の楽しみ、4つの工夫
園田さんの緑の工夫01
苔は室内ではテラリウムで育てる
テラリウムと呼ばれるガラスの容器で苔を育てることで、湿度を一定に保つことができます。ガラスのふたで完全に密閉する容器のほかに、ふたに小さな隙間ができる工夫がしてあるものも。
「空気の通り道をつくることで、ガラスの中が蒸れすぎることを防止。苔の手入れをしながら、2〜3年は同じ容器で育てられます」
園田さんの緑の工夫02
北側の窓辺を緑で彩る
「直射日光のような強い光は、容器の中が高温になり蒸れてしまいます。苔はほかの植物ほど明るさがなくても育つので、北側の窓辺くらいがちょうどいいですよ」
緑の少ない北側の室内がぐっと明るくなりそうです。
園田さんの緑の工夫03
暗い場所ではライトアップを
苔を室内で育てるには、読書が快適にできる程度の光は必要。
「暗い場所で育てるなら、LEDライトをあてるなどの工夫を。苔専用のものもありますが、家にあるスタンドライトをあてるのでも十分です」
園田さんの緑の工夫04
近くで眺めて景色を感じる
数種類の苔を寄植えすることで、ガラスの器の中に小さな森が生まれます。
「苔を楽しむ醍醐味は、近くに顔を寄せて、小さな苔の緑の成長をじっくりと眺めること。虫眼鏡などを使っても楽しいですよ」
〈撮影/近藤沙菜 取材・文/工藤千秋〉
園田純寛(そのだ・すみひろ)
趣味で魅了された苔の世界に。鎌倉で古民家を改装した専門店「苔むすび」をオープン。著書に『はじめての苔テラリウム』(成美堂出版)。
https://kokemusubi.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです