(別冊 天然生活『心と体が若返る小さな習慣』より)
「いい」「悪い」、「好き」「嫌い」の判断をやめる
私たちは日々たくさんの「判断」をしており、そのほとんどがしなくてもいい、むだな判断です。
「自分なんて」という自虐、「ついてない」という落胆、「やってもうまくいかない」という尻込み、「あの人はこうらしい」という品定めや、好き嫌いの人物評価。
これらは、勝手な決めつけや思い込みにすぎません。判断をすると、わかった気になれたり、自分が正しいと思えたり、結論が出せた気がして気持ちがいいのです。
だからついつい、人は判断してしまう。しかし、判断はやがて完璧主義、潔癖、批判的などの性格を形成します。
思い込みが激しくなり、人間関係の軋轢を生み出します。判断をやめてみることで、人生はもっと楽になるはずです。
ポジティブな言葉ではなく、自分を肯定する言葉を念じる
自己否定がやめられないとき、「自分はできる」とか「大丈夫、うまくいく」などとポジティブな言葉を自分にかけても、後ろ向きな感情が前向きに塗り替えられることは、ないように思います。
むしろ、空々しく感じることのほうが多いのではないでしょうか。
仏教が目指すのは「正しい理解」なので、現実と合致しない言葉がけを拠り所にはしません。
大切なのは、自己否定という判断のループを止めること。
そのためには、嘘のないシンプルな言葉を投げかけるだけでいいのです。
「しょせん無理」「どうせ私なんて」などの自己否定が生まれたときには、ただ「私は私を肯定する」と念じてください。
自己否定に歯止めをかけるための、おまじないの言葉です。
自分を否定しそうになったら、散歩をする
「自分はダメだ」「またうまく行かなかった」などの自己否定も、判断のひとつです。
繰り返してもいいことはひとつもありませんが、理屈で「自己否定をやめよう」と思っても、すぐにできるものではないでしょう。
そもそも自分が判断をしていることに、人は気づけないもの。自分を決めつけるような考えが生まれたら「あ、判断した」と気づけるよう、心に留めてください。
そして、自分を否定しつづけてしまうときは、外に出て散歩をすることをおすすめします。体の感覚に意識を向けられると同時に、屋外の景色や、温度などを感じられるからです。
頭の中でもやもやと考えたりせずに、一歩、一歩、大地を踏みしめながら、空の色、街の明かり、木々の緑、ただよう香り、空気の冷たさ(または暖かさ)をキャッチします。
いま存在しているのは、感覚だけ。その事実を感じられたら、頭の中をぐるぐるしていた苦悩が「もうない」とわかるはずです。
自分を否定しがちな人は、ぜひこのエクササイズを続けてみてください。
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<監修/草薙龍瞬 構成・文/石川理恵 イラスト/しまむらひかり>
草薙龍瞬(くさなぎ・りゅうしゅん)
宗派に属さず、仏教の本質を伝えている僧侶。興道の里で仏教講座を開催。『反応しない練習』(KADOKAWA)、『大丈夫、あのブッダも家族に悩んだ』(筑摩書房)、『消えない悩みのお片づけ』(ポプラ社)など累計著書が30万部を超える。日々に役立つ仏教についてブログでも発信。https://genuinedhammaintl.blogspot.com/
※記事中の情報は、別冊 天然生活『心と体が若返る小さな習慣』掲載時のものです