精進料理は、堅苦しいもの。ストイックなもの。そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。けれど、精進料理はむしろ、どんな人でも受け入れることのできる、おおらかな料理なのです。お肉やお魚を食べられない人も、卵や牛乳にアレルギーを持つ人も、何の気兼ねをすることもなく、一緒に食卓を囲むことができます。主菜、副菜から甘いものまで、家庭で手軽につくれる精進料理のレシピを、「こまきしょくどう」の藤井小牧さんにうかがいました。今回は、「じゃがいもと大根のポタージュ」のつくり方を紹介します。
藤井小牧・著『カフェ風精進料理 こまき食堂』より
じゃがいもと大根のポタージュ
口に含むと、野菜の甘味がゆっくりと広がります。体がポカポカ温まる、とろりとした口あたり。
材料 (4人分)
● じゃがいも | 300g |
● 大根 | 200g |
● 昆布だし(*) | 800ml |
● あれば水菜の葉先 | 少々 |
● 塩 | 適量 |
つくり方
1 じゃがいもと大根は皮をむき、小さめのざく切りにする。鍋に昆布だしとともに入れ、やわらかくなるまで煮る。
2 1をミキサーにかけ、なめらかになったら塩で味をととのえ、器に盛る。あれば水菜を添える。
いただくときに、オリーブオイルをたらしてもよい。
*昆布だしのつくり方
水1リットルに対し、昆布10cm角1枚を入れる。できるならひと晩、短くても30分はつけおく。
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精進料理の汁もの
たとえ、忙しくて家族にごはんをつくる時間が取れなくても、野菜がたくさん入っている汁ものとごはんさえあれば、なんとかなるものです。
だしは、時間があるときにまとめてとっておいてもよいかもしれません。
味噌汁なら、冷蔵庫にある野菜をだしでさっと煮て、味噌を手早く溶き入れれば完成。味噌を溶き入れずにミキサーにかければ、それは季節野菜のポタージュにもなります。
精進料理の考え方
1 五味・五色・五法
五味は、「甘・塩・酸・辛・苦」、五色は「黒・白・赤・黄・青(緑)」、五法は「生・煮る・蒸す・揚げる・炒める」を表します。この、五味・五色・五法を効果的に組み合わせることによって、栄養がととのい、バランスのよい食事をつくることができるのです。また、見た目も美しく、食べる側も楽しい気分になります。
2 「身土不二(しんどふじ)」
人間は自然の中の一部であり、自然環境の中で生かされています。その土地に生きる生物は、その土地で得られる食物を食べることで、その地で生きるための適応力を身につけているという法則が、この「身土不二」です。また、住んでいる土地、地域に身近な産物を大切にするという、「地産地消」を勧める言葉でもあります。
3 「旬」のものを食べる
旬の野菜や山菜にはパワーがあります。旬の時季にはどの野菜も最もエネルギーを蓄えているので、その季節に人間が一番必要とする栄養素や元気をもらうことができるのです。たとえば冬の根菜類は体を温め、夏の瓜類は熱を冷ます効果が。また、旬の野菜はその季節だけでなく、次の季節に合う体をつくります。
4 「一物全体(いちもつぜんたい)」
精進料理の調味料は控えめです。天地の恵みである農産物を大切にし、その素材の持ち味を十分に生かすことが、調理の基本だからです。また、野菜などは丸ごとすべてを使い切ります。命あったものを大事にして粗末にしない考えの根本は、殺生しないことと関連しており、何ひとつ、むだにしないことにつながります。
5 追いかけて逃げるものは食べない
精進料理では、魚も肉も口にしません。何を食べ、何を食べないのか。その簡単な見分け方のひとつが、「追いかけて逃げるものは食べない」です。動物不殺生は、精進料理の基本中の基本。そのこともあり、精進料理のだしにはかつお節が使われることはなく、昆布としいたけなどのきのこが使われているのです。
<料理/藤井小牧 撮影/川村 隆 取材・文/福山雅美>
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。著書『こまき食堂』(扶桑社)が発売中。
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こまきしょくどう
東京都千代田区神田練塀町8-2
TEL.03-5577-5358