• 2018年の年末に、東京・等々力での営業を終了した、家具と雑貨のお店「巣巣(すす)」。店主の岩崎朋子さんは、新しい場所で、新しいお店を現在準備中です。その場所とは、富山県立山町。この連載は、岩崎さんのお引越しのいろいろ、物件探しから、お店オープンまでのさまざまな出会いや出来事の日々の記録です。今回、ついにNEW巣巣オープンの日を迎えます

    再生 Re-Birth

    家の契約が完了した後すぐに、以前よりご縁のあった彫刻家はしもとみおさんに6月25日スタートで、一ヶ月間のオープニングの展示をお願いしました。

    その後果たして予定通りオープンできるのか、先の見えない状況が続く中で準備を進め、5月末になって、意外と当初のスケジュール通りできそうな感じになってきました。

    みおさんとも相談し、予定してた彫刻のワークショップは無しで、ご来店は事前予約制でやってみようということに。

    新コロナ対策のため、混雑を避け、ゆっくり展示や店を楽しんでいただけるよう人数少なめでご予約を受付しました。物販が中心の店なのに、予約というのもどうなのか?と思ったのですが、みなさん事前にご予約のメールをくださって、順調に枠も埋まって行きました。

    この天然生活での連載をきっかけに、某通信社から取材していただき、北陸の新聞3誌に記事を載せていただきました。

    閉店した時に手伝ってくれた友人たちの手によって、きっちり包んで箱に仕舞われていた商品を陳列しながら、もう一度巣巣を始められるということを実感しました。

    画像: 新しい巣巣の入り口です。

    新しい巣巣の入り口です。

    週末ごとに、庭の手入れや、菜園、池の補修のため立山通いを続けてくれた、サラリーマンの家人。最後の週末は、痛んでいた玄関の砂壁を剥がし、白い珪藻土を塗ってくれました。

    気持ちよくお客様をお迎え出来そうです。

    23日にはみおさんが車に作品を満載し、三重から往復8時間かけ搬入に来てくれました。等身大の黒柴の月くんやうさぎのペティさん、並べたたくさんの彫刻たちもこの古い家にしっくり馴染んでいます。みおさんも、家や周りの風景を気に入ってくれました。

    集落のみなさんも、急に現れてここで店をするという私を、快く受け入れてくれました。いろいろなことに配慮し、応援してくださって、ほんとうにありがたいです。

    6月25日木曜日。ついにオープンの日を迎えました。等々力を閉店した18年の12月以来、一年半ぶりに、巣巣という空間が出来上がり、そこにお客さまをお迎えします。

    画像: はしもとみおさんの作品展。等身大の黒柴月くんがお出迎え。

    はしもとみおさんの作品展。等身大の黒柴月くんがお出迎え。

    巣巣の形ができてくるにつれ、ずっと心の中に感じていた、自分は大丈夫だろうかという拠り所のない不安感や緊張感がなくなっていきました。巣巣=自分そのものだったのだなと改めて思いました。

    メールで予約をくださったみなさんが、順次足を運んでくださいました。時間を区切っての予約にしていたので、混雑もなく、気兼ねなく、それぞれのペースで滞在していただくことができました。

    お客様が分散することで、私も慌てることもなく安心して対応ができるので、7月26日までの全日程を予約制にすることにしました。

    ご来店のお客さんは皆一様に、家や庭の様子にびっくり&感動してくださいます。そしてお話ししていて、あらためて、このタイミングで、この場所にある、このお家に出会えたことは特別なことだったと思いました。富山の人でも、こんな家は見たことがないという人が多いのです。

    画像: 雨の季節が始まり庭の緑が茂ってきました。

    雨の季節が始まり庭の緑が茂ってきました。

    古民家というほど古い家でもなく、昭和中期の住宅、丈夫に作られていて傷みもなく、建主の随所へのこだわりが五十数年を経て、今の私たちに伝わってきます。

    木の窓枠や模様の入ったガラス、作り付けの台所の収納、庭に植えられたたくさんの植栽。新品ではない、ほどよい使い込まれ感が、とても落ち着きます。

    広々した縁側のベンチに座って、庭とお隣の屋敷林を眺めていると、時間が経つのも忘れてしまいます。近くの八幡宮や広がる田畑と北アルプスの風景。別の惑星にきたのではと思ってしまうことも。

    こうして巣巣の第二章が始まりました。

    これまでの巣巣と同じところもあるし、変わったところもたくさんあります。スピリッツは変わりません。

    家具の取り扱いはだいぶ縮小しました。新しいチャレンジもいくつか。小さなカフェスペースを設けていて、コーヒーやお茶と焼き菓子を召し上がっていただけます。インドネシアのバティック生地の自作の洋服を増やして行く予定です。

    昨年から始めている、自分で描いた絵をもとにした作品も並べたいです。音楽ライブやワークショプなどのイベントや配信も、少しずつ行っていけたらと思っています。

    これから先、マイペースで長く続けて行くことが目標です。新しくご縁ができた立山町からならではの発信ができたらと思います。

    自分の中では、ほんとうに移転再開が実現できるのだろうかと、半信半疑だったのですが、常に信じて見守り励ましてくれた友人や家族に感謝。この連載を読んでくださったみなさまにも心からの感謝を。

    みなさんそれぞれのペースで、無理せず、いつか来られる時に遊びにきてください。

    なんせ80歳までは現役で続けるつもりですから。


    画像: 再生 Re-Birth

    巣巣 岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
    世田谷の等々力で「巣巣」という家具と雑貨の店16年営み閉店。現在富山県立山町に移住して新しい店を準備中。バンド「草とten shoes」リーダー。著書に「小さな巣をつくるように暮らすこと」(SBクリエイティブ)。

    <撮影/馬場わかな(プロフィール写真)>


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