• 日本には心惹かれる器をつくる作家さんが大勢います。作家と私たちの暮らしをそっとつないでくれるのが器屋さんです。愛媛・松山で20年に渡り、自分たちの体験を元に手仕事の魅力を伝え続ける「うつわ SouSou(ソウソウ)」は、そんな器屋のひとつ。店主の小池さん夫妻に、お薦めの作家をこっそり教えてもらいました。

    誰でも気軽に入れる、開かれたお店に

    古い倉庫をリノベ―ションした店の造りがユニークな「うつわ SouSou」。天井や柱はコンクリート打ち放し、それに温かみを添えるように、床にレンガやモルタル、無垢の板が敷き詰められ、異素材の組み合わせが楽しい空間になっています。

    お店を営むのは、知り合う前からお互い器好きという、小池克志さん、可奈子さん夫妻。克志さんはもともと作家もののガラスの器が好きで、とあるガラス作家さんと知り合いになったことで、ますますその魅力にハマることに。一方、旅好きの可奈子さんは、陶磁器の産地を旅しては器を見る、そんな20代を過ごしたそう。

    そんな二人が出会って「一緒に店をしたいね」という話になり、共通の好きなものを探っていくと、それはもちろん器でした。

    画像: 2001年のオープン後、10年ほどを経て、倉庫跡をリノベーションした現在の店舗に移転した

    2001年のオープン後、10年ほどを経て、倉庫跡をリノベーションした現在の店舗に移転した

    画像: 陶磁器のほか、宙吹きガラス、木工、漆、帆布などの手仕事の作品が並ぶ

    陶磁器のほか、宙吹きガラス、木工、漆、帆布などの手仕事の作品が並ぶ

    画像: 改装の際に、倉庫のシャッター部分をウインドウに変更。店内に陽の光がたっぷりと入る

    改装の際に、倉庫のシャッター部分をウインドウに変更。店内に陽の光がたっぷりと入る

    「店を始めたのが今から20年ほど前、まだ20代の頃でした。その当時はギャラリーと呼ばれるような器屋さんは少なく、あっても敷居が高くて足を踏み入れにくかったんです。自分たちが欲しいと思う器は値がはって、買っても気軽に使えない感じがありました。だから、普段使いできる器がほしかったんです」

    そんな想いを持ちつつ店を始めただけに、「うつわ SouSou」では、気軽に手にとれる価格のものから少々高価なものまで、幅広く揃えることを意識しているそう。「門戸を広くというか、若い人をはじめいろんな人に来ていただきたくて」と話します。

    画像: 店内にある古家具はどれも、小池さん夫妻がご自宅で使っていたもの。窓からは山里をイメージしたという植栽が顔を覗かせ、心地いい空間に

    店内にある古家具はどれも、小池さん夫妻がご自宅で使っていたもの。窓からは山里をイメージしたという植栽が顔を覗かせ、心地いい空間に

    画像: 同じ種類の器をふたつペアにして飾ることで、ディスプレイにまとまりが。「昔、雑貨を扱う店で販売をしていた頃に身につけた感覚で」と可奈子さん。ぜひ見習いたいテクニック

    同じ種類の器をふたつペアにして飾ることで、ディスプレイにまとまりが。「昔、雑貨を扱う店で販売をしていた頃に身につけた感覚で」と可奈子さん。ぜひ見習いたいテクニック

    画像: 器の組み合わせを参考にできたり、素敵なディスプレイは、眺めているだけで幸せな気分に

    器の組み合わせを参考にできたり、素敵なディスプレイは、眺めているだけで幸せな気分に

    使うほどに滲みでる、本当の器のよさを伝えたい

    そんな小池さん夫妻に、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。
    まずは、地元の愛媛県松山市で作陶する亀井紀子(かめいのりこ)さんの鉢です。

    画像: 緑と赤の対比が美しい「紅彩リム鉢」。内側の貫入も味わい深い

    緑と赤の対比が美しい「紅彩リム鉢」。内側の貫入も味わい深い

    「亀井さんは同じ松山で、年代も近く、一緒にご飯を食べながら器の話ができる面白い関係です。お料理がすごくお好きな方で、だからこそ亀井さんの器には、共感できることが多くて。たとえば、縁が欠けにくいよう工夫されていたり、女性の手にあわせた幅で持ち心地がよかったり、料理を盛ったときに想像以上に見栄えするところなんかもそうですね。

    このリム鉢の赤は銅の成分が発色したもの。釉裏紅(ゆうりこう)という焼き物があるんですが、原理はそれに近いそうです。銅が微妙に反応することで、赤色の出方がひとつ一つ違ってすごく面白い。個体差をぜひ楽しんでほしいですね」

    お次は、兵庫県朝来市で作陶されている光藤佐(みつふじたすく)さんの鉢です。

    画像: マットな黒が上品な「黒釉八角鉢」。写真の鉢は、小池さん夫妻が10年ほど前から使っていらっしゃる私物で、使うほどにしっとりしてくるのだとか

    マットな黒が上品な「黒釉八角鉢」。写真の鉢は、小池さん夫妻が10年ほど前から使っていらっしゃる私物で、使うほどにしっとりしてくるのだとか

    「粉引きや白磁、黒釉をはじめ、本当にいろいろな種類の器をつくってらっしゃるんですが、光藤さんほどたくさんの種類を焼ける方は少ないですね。『黒釉八角鉢』はろくろで挽いている作品で、とても手間がかかっています。玉縁(たまぶち)といって縁を折り返してあったり、うっすらと見える側面の白い線は、粘土を搾ってのせているんですよ。

    東洋の古い焼き物を展示する『大阪市立東洋陶磁美術館』に、よく行かれるそうです。足繁く通って、展示を食い入るように見ていると仰ってました。古物からイメージした作品に、それがよく表れているように思います」

    最後は、静岡県周智郡森町で作陶されている高田かえ(たかだ)さんの花器です。

    画像: 唯一無二のフォルムが目を楽しませてくれる花器。左から、白化粧、青錆、赤錆

    唯一無二のフォルムが目を楽しませてくれる花器。左から、白化粧、青錆、赤錆

    「お店を始める20年ほど前、作家さんを探すために器の産地を巡ったんですが、そのときに高田さんに出合いました。当時は独立したての頃だったと思うのですが、衝撃が走るほどの圧倒的な才能で。高田さんの作品で特に人気が高いのは花器とオブジェで、花器のファンは本当に多いです。

    花器はすべて手びねりでつくられているんですが、高田さんから作品が届くたびにそれぞれ形が全然違っていて。まだまだ引き出しがたくさんあるんだって、いつも驚かせてくれます。この三つの花器は、土化粧をかけてあったり、釉薬を混ぜてあったりと、それぞれ複雑な味わいがあります」

    20年近くお店を続けてきた小池さん夫妻ですが、その20年の間に、作家さん選びについて、少しずつ変化があったようです。

    「器はとにかく使い込むようにしています。使わないとわからないことのほうがはるかに多くて。店を始めた20代の頃はまだ若く、見た目から入ることもあったのですが、この20年の間に、『使うほどにわかるよさ』に重きをおくようになりました。いま店に来てくださっている若いお客さんにも、まずは気に入ったものから器の世界に入ってもらい、もう一歩先に進まれたときに、そういうよさをうまく説明できるようにしたいです」

    使うほどに渋みを増す色や質感に感動したり、使い勝手のよさを日々実感したりと、使い続けてわかる器のよさを長年に渡って体感してきた小池さん夫妻。その確かな目で選ぶ器は、きっとあなたの生活を豊かなものにしてくれるはず。

    「うつわ SouSou」があるのは、道後温泉から車で5分ほどの場所。「素敵な器に出合った後は、温泉でのんびり」なんて素敵な旅もできそうですね。

    ※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。

    <撮影/小池克志・可奈子 取材・文/諸根文奈>

    うつわ SouSou(ソウソウ)
    089-977-8594
    11:00~19:00
    月休み  ※月曜が祝祭日の場合、翌火曜休み
    愛媛県松山市石手1丁目3-19
    バス:伊予鉄バス「松山市駅(いよてつ高島屋)」7番乗り場で乗車し、「上石手」バス停で下車、徒歩1分
    車:「松山インター」から約30分
    http://sousou.biz/
    http://sousou.biz/shopping/(オンラインショップ)
    ◆10月24日より光藤佐展を開催予定


    This article is a sponsored article by
    ''.