日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
9月7日 18時53分
二十四節気・白露(はくろ)
野山の草木に、白い露が付くようになるころ
朝晩の気温が下がり、大気中の水分が野の葉に触れて、水滴がつく様子を「白露」と言い表しています。
秋分まであと15日。
そろそろ秋の気配が感じられるようになる時期です。
「白露」は秋の季語でもあり、キラキラと輝く草の露が目に浮かぶ、情緒的で美しい詠み言葉です。
白露の期間の七十二候
9月7日から9月12日ごろ
白露初候・ 草露白[くさのつゆしろし]
草の葉についた露が朝日を受けて、白く光って見える季節。
晴れた秋の日が続き、朝晩と日中の寒暖差が大きくなってくるころに見られる風景を、「草露白」という美しい言葉で表現しています。
雨が降ったわけでもないのに生まれる露は、まさしく自然のパワーそのもの。
いつもより少し早起きをして、庭の草花や路地の野草をながめてみましょう。
自然の力強さが実感できますよ。
9月13日から9月17日ごろ
白露次候・ 鶺鴒鳴[せきれいなく]
セキレイがなきはじめるころです。
セキレイは日本に古くからいる鳥で、川や池などに近いところに生息しています。
細い足でちょこちょこと歩き回り、谷川のせせらぎに合わせて長い尾を上下に振る姿はなんともかわいらしいもの。
縁結びや夫婦円満のご利益があるともいわれています。
9月18日から9月22日ごろ
白露末候・ 玄鳥帰[つばめさる]
「玄鳥」とはツバメのこと。
秋が深まり、寒さを感じ始めた渡り鳥が旅立つころです。
民家や商店の軒下では、子育てを終えたツバメたちが、そろそろ旅の準備を始めているかもしれません。
翌年やってくるツバメは、生まれた場所や住み慣れた環境をどのようにして記憶に留めて飛び立つのでしょう。
あの小さな目でどんな景色を見ているのでしょうね。
◇ ◇ ◇
* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
◇ ◇ ◇
*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。