(平野恵理子・著『にっぽんの歳時記ずかん 新装版』より)
六月一日は更衣(ころもがえ)
今まで着ていた合服から夏服に替える、暮らしの節目が更衣。職場や学校など制服を着ている人たちは、更衣の六月一日にいっせいに夏服に変わるよ。
これは、いかにも夏が来た、と感じさせてくれる気持ちのいい習慣だね。旧暦を使っていた江戸時代までは、端午の節句が夏の更衣だったんだ。
袷(あわせ)と単衣(ひとえ)
昔は、季節によって着る物の仕立て方や素材が決まっていた。涼しい時季には裏地のついた「袷」を、夏は、裏地のついていない「単衣」に替えた。その切り替えを更衣というんだ。
夏衣の生地
日本の蒸し暑い夏を涼しく過ごすため、着物の素材も工夫されてきた。透けるように薄い絹織物や、縮などの麻織物、木綿の着物を着て、暑さをしのいだんだよ。
素材と織り方
絹:蚕の繭からとった生糸が原料
<織り方>
絽(ろ):細かい穴をあけた、風通しのいい織物
紗(しゃ):細い糸で、間を空けて織ってある、風通しのいい織物
羅(ら・うすもの):レースのように模様のある透けた織物
麻:麻の茎の皮をむいて干し、それを細く裂いてつなげた糸が原料
<織り方>
縮(ちぢみ):布の表面を縮れさせてあるので、肌にくっつかず、快適
上布(じょうふ):高級な麻布。薄くて軽く、暑さをしのぐのに最適
木綿:綿の木の実から採れる繊維を撚った糸が原料
<織り方>
綿絽(めんろ):細かい穴をあけた、風通しのいい織物
綿紅梅(めんこうばい):麻との混紡。クレープ織りになっていて肌にくっつかず涼しい
本記事は『にっぽんの歳時記ずかん 新装版』(幻冬舎)からの抜粋です
平野恵理子(ひらの・えりこ)
1961年、静岡県生まれ、横浜育ち。イラストレーター、エッセイスト。日々の暮らしのほか、山歩きや旅、また着物や暦などに関する作品が多い。著書に『手づくり二十四節気』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、『草木愛しや 花の折々』(三月書房)、『こんな、季節の味ばなし』(天夢人)、『五十八歳、山の家で猫と暮らす』(亜紀書房)、『私の東京散歩術』(山と溪谷社)など。絵本・児童書に『ごはん』『おひなまつりのちらしずし』(ともに福音館書店)、『和菓子の絵本』(あすなろ書房)、『きょうはなんの記念日? 366日じてん』(偕成社)など。
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