• あるものを最後まで使いきったり、再利用やリメイクをして生かしたり。小さなアイデアで、楽しく、やさしい暮らしを実践できます。着物リメイク作家・松下純子さん、ものを生かし直す、暮らしの楽しみをお届けします。今回は発酵食品づくりやセルフリノベーションなど、住まいや暮らしのお話です。
    (『天然生活』2020年8月号掲載)

    受け継いだものは、暮らしに生かしてこそ輝く

    先人の知恵や技を受け継ぎ、暮らしに生かしたいという松下さんの思いは、住まいや暮らしにも。甘酒などの発酵食品づくりや、炭火での調理といった知恵も楽しみながら取り入れています。

    また、大阪の下町にある築90年の長屋を、立派な天井の梁や、昔ながらの建具を生かしつつ、少しずつ改装していることもそのひとつ。

    ほかにも、気に入った器は割れたり、欠けたりしても、あきらめずに金継ぎをして愛おしみます。

    「本漆を使う本格派の金継ぎではないのですが、汁漏れもこれで留められますし、まだまだ使えます」

    金継ぎされた器は、ていねいに修復された特別な表情が加わって、いっそう素敵に見えます。手仕事でつくられたよいものは、ふだんの暮らしのなかで身にまとったり、食卓で使うことでより輝く。そんなことを教えてもらいました。

    松下純子さんの家で楽しむ工夫
    発酵食品を手軽に

    画像: 発酵食品あれこれ

    発酵食品あれこれ

    温度管理が簡単なヨーグルトメーカーで納豆、甘酒、しょうゆ麹を手づくり。しょうゆ麹は野菜に添えてお酒のあてにしたり、日々のお料理にも出番が多い万能選手。甘酒も飲むだけでなく、料理の甘味づけとして活用。

    「材料を合わせて一定の時間おくだけで、何もしなくてもおいしくなるのがうれしくて。シンプルな料理に発酵食品を足すだけで味に深みが出るから、忙しい日にも重宝します」

    画像: 大豆と生麹があればいろいろ楽しめる

    大豆と生麹があればいろいろ楽しめる

    画像: ぶどうを発酵させてワインビネガーに

    ぶどうを発酵させてワインビネガーに

    松下純子さんの家で楽しむ工夫
    セルフリノベーションを愉しむ

    画像: かつて物入れだった場所を、玄関にリノベーション

    かつて物入れだった場所を、玄関にリノベーション

    かつて大工さんが住んでいたという築90年の長屋を、趣きある梁や柱、建具などは生かして改装。

    「壁の色などもいっぺんに全部決めてしまうのではなく、少しずつ手を入れながら考えました。アイデアも費用も、ゆっくりなら負担が少ないのがいいんです」

    物入れだったスペースは壁を抜き、風通しのよい玄関に生まれ変わらせました。引き戸は押し戸として再利用し、手前には大理石を敷きつめて。

    画像: 小学生の息子、凛太朗君も壁塗りをお手伝い

    小学生の息子、凛太朗君も壁塗りをお手伝い

    松下純子さんの家で楽しむ工夫
    金継ぎで長く器を愛おしむ

    画像: 片口や飯碗のほか、ガラス器も金継ぎできるそう。素朴な器が独特の表情に

    片口や飯碗のほか、ガラス器も金継ぎできるそう。素朴な器が独特の表情に

    お母さまが長らく陶芸をたしなみ、金継ぎも習得していることから、好きな器は割れても継いで使いつづけます。ただ、金継ぎすると、用途は少し変わるそう。

    「この茶色い器は私の飯碗でしたが、ごはんではなく、おひたしなどを入れるようになりました。くっつきやすいものを入れてゴシゴシ洗うと、金粉がはがれてしまう恐れがあるんですね。でも金継ぎすることで、さらにいとおしくなりますよ」

    松下純子さんの家で楽しむ工夫
    割れた植木鉢を簡易コンロに

    画像: 炭火にはつきっきりではなく、畑仕事の合間に調理することが多いそう。マシュマロを串先につけて焼き、食べることも

    炭火にはつきっきりではなく、畑仕事の合間に調理することが多いそう。マシュマロを串先につけて焼き、食べることも

    畑仕事をしている庭の一角に、割れた植木鉢を利用した簡易コンロを。

    「アルミホイルに包んだお芋や玉ねぎを入れておき、晩ごはんの材料として使ったりしています。炭火だとやっぱりおいしくて。発酵食品もそうですが、とくに凝ったことをしなくても、素材をいくつか用意するだけで時間が勝手においしくしてくれる、というのが好き。そんな料理未満のシンプルな手づくりだから、続けられるんです」

    画像: 松下純子さんの家で楽しむ工夫 割れた植木鉢を簡易コンロに


    〈撮影/辻本しんこ 取材・文/野崎 泉、鈴木理恵(TRYOUT)〉

    松下純子(まつした・じゅんこ)

    「Wrap Around R.」主宰。現代の暮らしになじむデザインの着物リメイクを提案。『型紙いらずの浴衣リメイク』(河出書房新社)ほか著書多数。
    webサイト:http://w-a-robe.com/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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