(『天然生活』2020年8月号掲載)
受け継いだものは、暮らしに生かしてこそ輝く
先人の知恵や技を受け継ぎ、暮らしに生かしたいという松下さんの思いは、住まいや暮らしにも。甘酒などの発酵食品づくりや、炭火での調理といった知恵も楽しみながら取り入れています。
また、大阪の下町にある築90年の長屋を、立派な天井の梁や、昔ながらの建具を生かしつつ、少しずつ改装していることもそのひとつ。
ほかにも、気に入った器は割れたり、欠けたりしても、あきらめずに金継ぎをして愛おしみます。
「本漆を使う本格派の金継ぎではないのですが、汁漏れもこれで留められますし、まだまだ使えます」
金継ぎされた器は、ていねいに修復された特別な表情が加わって、いっそう素敵に見えます。手仕事でつくられたよいものは、ふだんの暮らしのなかで身にまとったり、食卓で使うことでより輝く。そんなことを教えてもらいました。
松下純子さんの家で楽しむ工夫
発酵食品を手軽に
![画像: 発酵食品あれこれ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/c69ec88c05e2f548b996180ed969c21a4aa6d2e5.jpg)
発酵食品あれこれ
温度管理が簡単なヨーグルトメーカーで納豆、甘酒、しょうゆ麹を手づくり。しょうゆ麹は野菜に添えてお酒のあてにしたり、日々のお料理にも出番が多い万能選手。甘酒も飲むだけでなく、料理の甘味づけとして活用。
「材料を合わせて一定の時間おくだけで、何もしなくてもおいしくなるのがうれしくて。シンプルな料理に発酵食品を足すだけで味に深みが出るから、忙しい日にも重宝します」
![画像: 大豆と生麹があればいろいろ楽しめる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/a2c62773a7a49afcc2a2a5cc51f1c26a75a26733.jpg)
大豆と生麹があればいろいろ楽しめる
![画像: ぶどうを発酵させてワインビネガーに](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/05be13eb54d65f573965c1cd4cd7487a4498f022.jpg)
ぶどうを発酵させてワインビネガーに
松下純子さんの家で楽しむ工夫
セルフリノベーションを愉しむ
![画像: かつて物入れだった場所を、玄関にリノベーション](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/d9ffe0b05a9a3a54be28cba0da45953361f29e87.jpg)
かつて物入れだった場所を、玄関にリノベーション
かつて大工さんが住んでいたという築90年の長屋を、趣きある梁や柱、建具などは生かして改装。
「壁の色などもいっぺんに全部決めてしまうのではなく、少しずつ手を入れながら考えました。アイデアも費用も、ゆっくりなら負担が少ないのがいいんです」
物入れだったスペースは壁を抜き、風通しのよい玄関に生まれ変わらせました。引き戸は押し戸として再利用し、手前には大理石を敷きつめて。
![画像: 小学生の息子、凛太朗君も壁塗りをお手伝い](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/529ac696526412c0f6a7ff90a120267edac56f0c.jpg)
小学生の息子、凛太朗君も壁塗りをお手伝い
松下純子さんの家で楽しむ工夫
金継ぎで長く器を愛おしむ
![画像: 片口や飯碗のほか、ガラス器も金継ぎできるそう。素朴な器が独特の表情に](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/c51f49a5141e3cf3c2bb29472a3c9d819809c27d.jpg)
片口や飯碗のほか、ガラス器も金継ぎできるそう。素朴な器が独特の表情に
お母さまが長らく陶芸をたしなみ、金継ぎも習得していることから、好きな器は割れても継いで使いつづけます。ただ、金継ぎすると、用途は少し変わるそう。
「この茶色い器は私の飯碗でしたが、ごはんではなく、おひたしなどを入れるようになりました。くっつきやすいものを入れてゴシゴシ洗うと、金粉がはがれてしまう恐れがあるんですね。でも金継ぎすることで、さらにいとおしくなりますよ」
松下純子さんの家で楽しむ工夫
割れた植木鉢を簡易コンロに
![画像: 炭火にはつきっきりではなく、畑仕事の合間に調理することが多いそう。マシュマロを串先につけて焼き、食べることも](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/cedb79bd3244f02ec6895a72e96d284b34768d42_xlarge.jpg)
炭火にはつきっきりではなく、畑仕事の合間に調理することが多いそう。マシュマロを串先につけて焼き、食べることも
畑仕事をしている庭の一角に、割れた植木鉢を利用した簡易コンロを。
「アルミホイルに包んだお芋や玉ねぎを入れておき、晩ごはんの材料として使ったりしています。炭火だとやっぱりおいしくて。発酵食品もそうですが、とくに凝ったことをしなくても、素材をいくつか用意するだけで時間が勝手においしくしてくれる、というのが好き。そんな料理未満のシンプルな手づくりだから、続けられるんです」
![画像: 松下純子さんの家で楽しむ工夫 割れた植木鉢を簡易コンロに](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2023/08/08/97e9324c806f202fb0fa88d1fa980f8b025558d9.jpg)
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/野崎 泉、鈴木理恵(TRYOUT)〉
松下純子(まつした・じゅんこ)
「Wrap Around R.」主宰。現代の暮らしになじむデザインの着物リメイクを提案。『型紙いらずの浴衣リメイク』(河出書房新社)ほか著書多数。
webサイト:http://w-a-robe.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです