(『栗しごとと栗のお菓子』より)
栗のペーストのつくり方
栗しごとの中でも一番シンプルで気軽に取り組めるのが栗ペースト。ゆでるか蒸した栗に少量の砂糖を加え、粒を残してつぶした「粗タイプ」となめらかに裏ごしした「細タイプ」をつくり、用途に応じて使い分けます。
冷凍保存ができるので、モンブランや栗きんとんなどをつくりたいときに、さっと使えて便利です。
食べごろ・保存
ひと晩おくと味がなじむ。保存は冷蔵で5日ほど、冷凍で2~3カ月。
※グラニュー糖の分量を、ゆでて実を取り出した栗の重量の20%より少なくする場合、保存期間は短くなるので注意。
材料(粗タイプ・細タイプ共通/つくりやすい分量* )
● 栗 | 500g |
● グラニュー糖 | ゆでて実を取り出した栗の重量の20~30%(今回は20%) |
● 塩 | ひとつまみ |
*2つのタイプを同時につくる場合は、材料を倍量にしてそれぞれ栗500gずつでつくる。
準備
・栗は時間があれば前日からたっぷりの水につける。
栗の加熱の仕方
[圧力鍋を使う場合]
栗をひと晩水につけ、破裂防止のため栗の頭にペティナイフで一文字または十文字に切り目を入れる。圧力鍋に栗と栗がつかる程度の水を入れて火にかけ、圧がかかったら弱火にし、7分加圧して火を止める。そのままおいて圧力が抜けたら栗を取り出す。
[ 蒸す場合]
湯気が上がった蒸し器に栗を入れ、50~60分蒸す。加熱中に湯が減ったら、適宜湯適量を足す。
つくり方
step1 【栗をゆでる】
栗を洗い、鍋に栗とたっぷりの水を入れて中火にかけ、50~60分ゆでる。加熱中に湯が減ったら、適宜湯適量を足す。
⇒栗のサイズによって加熱時間が異なるため、ある程度時間が経過したら栗を1個取り出し、半分に切って火の通りを確認するとよい。
step2 【中身を取り出す】
水けをきって栗を縦半分に切る。
⇒バットにペーパータオルを敷き、栗を鍋から数個ずつ取り出してのせ、水けをきってから切るとよい。
step3
熱いうちにスプーンで中身をすくって取り出す(渋皮がついてきたら取り除く)。
step4
ボウルに入れて重さを量り、栗の重量の20~30%量のグラニュー糖を用意する。
⇒栗の甘さは幅があるため、まずはstep6で20%量のグラニュー糖を加えて味をみて、調整するとよい。
step5 【粒を残してつぶす】
step4の栗をマッシャーで細かい粒が残る程度につぶす。
step6
用意したグラニュー糖(今回は20%)と塩を加える。
step7
全体がなじむようにゴムべらで混ぜて味をみる。甘みが足りなければ、さらに最大10%までグラニュー糖を加えて混ぜ、好みの甘さに調節する。
step8
ボウルにラップをかけ、15~30分おいてなじませる。
⇒栗から水分が出てきてしっとりする。
step9
鍋に移して弱火にかけ、ゴムべらで混ぜながら4~5分加熱する。
⇒水分量が少ない栗の場合は、水大さじ1〜2を加えてから加熱すると混ぜやすくなる。
step10
しっとりなじんだら粗タイプの完成(細タイプはstep11へ)。
⇒加熱することでグラニュー糖が溶けてなじみがよくなるほか、殺菌効果もある。
step11 【裏ごしをする】
step10が熱いうちに、バットなどを当てた裏ごし器に少しずつのせ、木べらで押しつけるようにして裏ごしする。
⇒冷めたら器に入れてラップをかけ、電子レンジ(600W)に10~20 秒かけて再加熱しながら行うとよい。
step12
細タイプの完成。
step13 【保存する】
step10 の粗タイプ、またはstep12の細タイプをカードなどで半量ずつにして、それぞれラップの上に取り分ける。
step14
空気を抜きながらピッチリ包み、平らに整える。
step15
冷蔵でひと晩おくと味が落ち着く。
⇒5日以内に使う場合は冷蔵で保存。長期保存する場合は、ジッパーつきの保存袋に入れて冷凍で保存する(使う前日に冷蔵室に移して解凍する)。
栗のペーストでつくる
栗きんとんのつくり方
栗の和菓子といえば、真っ先に頭に浮かぶのがこのお菓子ですが、栗のペーストをつくっておけば手軽につくれます。
和栗そのものの繊細な風味を思う存分堪能してください。
材料(6個分)
● 栗のペースト(粗タイプまたは細タイプ) | 180g |
⇒栗のつぶつぶ感があるほうが好きな場合は粗タイプ、しっとりなめらかなほうが好きな場合は細タイプを。
つくり方
1
栗のペーストを6等分(1つにつき30g)にする。
2
軽く湿らせたふきん、またはさらし(ラップでも可)を手のひらに広げ、1をのせて包み、ふきんをねじって絞る。そのまま絞り口をおさえて、反対の手の親指の付け根あたりにきんとんの底を軽く押しつけて形を整え、ふきんをゆっくり開く。同様に計6個つくる。
食べごろ・保存
つくりたてがおいしい。保存は乾燥しないようにラップで包み、冷蔵で3日ほど。食べるときは室温に戻す。
本記事は『栗しごとと栗のお菓子』(山と溪谷社)からの抜粋です
〈撮影/馬場わかな スタイリング/西﨑弥沙〉
下園昌江(しもぞの・まさえ)
お菓子研究家。1974年鹿児島県生まれ。筑波大学卒業後、日本菓子専門学校で製菓の技術と理論を学ぶ。その後パティスリーで6年間修行。2001年スイーツのポータルサイト「Sweet Cafe」を立ち上げ、幅広い視点でスイーツの情報を発信しながら、国内外のさまざまなお菓子を実際に食べ歩く中で、フランス菓子の魅力に惹かれる。2007年より自宅でお菓子教室を主宰し、お菓子の歴史から素材の特徴まで深く学べるレッスンが評判を呼び、人気の教室となる。著書に『おいしいサブレの秘密』『アーモンドだから、おいしい』『4つの製法で作る 幸せのパウンドケーキ』(すべて文化出版局)などがある。『栗しごとと栗のお菓子』(山と溪谷社)を2023年9月に発売。
インスタグラム:@masaeshimozono
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はじめてでも上手につくれるいちばん親切な“栗しごとの教科書”。製菓素材の王様「栗」のおいしさをぎゅっと閉じ込めた栗しごとと、和洋のお菓子レシピをたっぷり収録。
つくりやすいうえに、とびきり端正に仕上がるお菓子が人気の下園昌江さんは、自他ともに認める大の栗好き。いろいろな情報があふれつくり方の正解がわからない中、何年にも渡り試行錯誤をしてたどり着いたいちばん親切な「栗しごと」のレシピを、惜しみなく紹介してくださいました。秋の恵みを和洋のお菓子で存分にお楽しみください。