• 手づくり暮らし研究家の美濃羽まゆみさんのおうちでは、家族みんなで家事をシェアしています。かつては美濃羽さんがひとりで担っていた家事を分担するのは苦労もあったけれど、いまではみんなの家事力もアップし、安心して任せられるように。また、以前よりも会話が増えて、うれしい変化もあったそう。そんな美濃羽さんに、家事シェアへを通じて発見したことを教えていただきました。

    家族4人の家事シェアを通じて見えてきたもの

    過去2回にわたり、私たち家族の家事シェアの移り変わりや苦労話、シェアのために欠かせないめんどうな家族会議の様子などをお伝えしてきました。

    家事シェアのなかで変化してきた家族の関係性、そして、私が発見したことをまとめてお話したいと思います。

    「わが家の家事シェア」過去2回の記事はこちら

    第一話:得意を持ち寄り、苦手はやり方を変えて

    第二話:わが家の家族会議はこんなふう

    結果は本人が引き受けてこそ意味がある

    まず、大きな変化があったのは夫でした。

    今年に入ってから食器洗い担当と洗濯担当を一気に引き受けてくれるようになった彼ですが、毎日繰り返すうちに技術がどんどんアップ!

    それはとくに、洗濯において著しいものがありました。

    当初はシワものばさず、ただ乱雑にラックにかけてあっただけだったのが、むらなく乾くように間隔をあけたり、サーキュレーターの当て方を変えたり……。

    彼自身、自分なりに仕上がりレベルが上がるよう工夫するようになり、その結果を実感しながら、どうやら家事を楽しんでいる様子なのです。

    前回もお伝えしましたが、わが家の家事シェアは「お手伝い」という概念ではなく、「〇〇は私の仕事」と各自に捉えてもらっています。なので、お互いの仕事には基本、手出し口出しはしません。

    長年洗濯を担当してきた私からは「おいおい、その干し方はないよ~」「それだとタオルごわごわになるやん……」など、はじめは突っ込みどころが山ほどありましたが、そこはぐっとこらえて見て見ぬふり。

    若かったころはもちろん、家族が残念な家事の仕方をしていると「なんで?!」とつい頭に血がのぼり、非難したり「そんなんやったらやらんでええ!」とつらくあたったりしたこともありました(ほんまごめん……)。

    けれど、それではお互いただただ悲しいだけ。そして、「叱られる」ということは責任の所在が本人にはないといっているようなものです。結局は本人が引き受けない限り、結果にはつながらないと思うのです。

    技術上達のために必要な4つのサイクル

    これは家事に限ったことではなく、たとえば幼いころの子どもたちの様子を見ていても、なにかひとつのことが上達するためにはこの4つのサイクルが必要不可欠だと感じていました。

     「仮説」

     「実行」

     「結果」

     「検証」

    「こうしてみようかな?」と思いつきから始まり(仮説)、実際にやってみる(実行)。そしてその良し悪し(結果)を受けて、「なぜこうなったのかな」と観察する(検証)。そしてまた「次はこうしてみよう」(仮説)につながる。

    そしてまた、実行、結果、検証……とサイクルが回るうち、ぐんぐんと能力を身に着けていきます。

    そしてこのサイクルは残念なことに、ほかの誰かから働きかけられてもうまく作動しません。本人が自発的に向き合ってこそ作動するもので、「やらされている」では身につかないのです。

    しかも、途中で叱られたり、邪魔が入ってしまうと、とたんにやる気がダウンしてしまいます。

    自分ごととして、目の前の物事に取り組んで初めてサイクルが回り、自分なりの工夫が生まれてどんどん上達していく。そこにはただただ、楽しさがあるばかりです。

    それは子どもも大人も関係ない。夫の家事力アップの様子を見ていて、そのことを改めて感じさせられたのでした。

    自分ごとになると見通しがつく

    高校生の長女ゴン、小学生の長男まめぴーも同じで、家事を自分ごととして取り組むことで、少しずつ変化が見られました。

    ゴンが関わっているのはおかずづくりだけですが、以前はただこちらがお願いした料理しかしてくれなかったのが、最近では余力があるときはお菓子をつくってくれることもあります。

    さらに、「調理中に台所を片付けておくと、次の作業がしやすいようだ」と自ら気づいたようで、こまめに鍋や調理道具を洗ってくれるようにもなりました。

    そうやって先の見通しをつける癖が自然とついたのか、外出から帰ってすぐ上着をクローゼットに片付けるようになったり、机の上を整理整頓するようになったり。

    かつて苦手だった身のまわりの片付けにも変化が。前よりはるかに(とはいえ、まだまだなとこもあるけれど)できるようになってきたのはびっくりです!

    そして、弟のまめぴーはというと、自分が担当になったことから、家事のしんどさも身に染みて感じたよう。

    そのためか、ことあるごとに大人たちをねぎらって「いつもありがとう!」「疲れてない? 元気注入するで!(=ハグするの意)」なんていってくれることが増えたように思います。

    家事シェアがもたらした家族の大きな変化

    何より、家族それぞれが意思を持って家事に取り組むようになったことでの一番の変化は、家族間でぐっと会話が増えたこと。

    とくに、夫はこれまで平日の帰宅は家族が寝静まってから、食事のタイミングすら合わず、コミュニケーションはほぼ無し。

    それが、夫の家事担当が決まってからは会話が自然と増えて、気になっていることを都度相談したり(いままでは土日にまとめてしていたり、相談できずにいたり)、他愛ない会話で和む時間が増えたのです。

    それはたぶん、私たちどちらかに事情があって担当の家事ができなかった場合、「これ今日だけお願い」と託すことがありますが、そのためにはお互いが、いま受け持っている仕事の具合やスケジュールを把握しておく必要があります。

    その積み重ねで、「いつも大変やな。けど一緒にがんばっていこか」とお互いを思いやれるようになっていきました。そんな雰囲気が子どもたちにも伝わり、家族みんなの結束につながったのではないかと思うのです。

    家事シェアってめんどう。自分ひとりでやってしまった方が早いし……。かつては私もそんなイメージしか持っていませんでした。

    でも、めんどうなことほど、一度じっくりどっしり取り組んでみたら、また違う結果が生まれることもある。家事シェアはそのことを改めて教えてくれました。

    画像: かつて、お風呂洗いは長女ゴンの担当で、毎回ピカピカにしてくれていました。ときどき私や夫が代わりにやることがあると、「洗い方がなってないー」と怒られる始末。鬼教官と化していたっけ!!

    かつて、お風呂洗いは長女ゴンの担当で、毎回ピカピカにしてくれていました。ときどき私や夫が代わりにやることがあると、「洗い方がなってないー」と怒られる始末。鬼教官と化していたっけ!!

    〈今回のスイッチポイント〉

    めんどうなことこそ、とことん向き合ってみることで、新たな道が拓けてくる!


    ―― 次回も日々の暮らしのなかで心掛けていること、子どもと過ごすなかで気づいたことなどを美濃羽さんにお話いただきます。お楽しみに!




    〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉

    画像: 家事シェアがもたらした家族の大きな変化

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi
    voicy:FU-KOなまいにちラジオ



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