「朝ごはんにタンパク質が必要」を改めて
「朝ごはんにはタンパク質が必要ですよ」
などとわたしが言うまでもなく、すっかり世の中では普及したな、と思っていたのですが、必ずしもそうでもない、ということも友人たちと話すと知らされることがあります。
先日も「運動部の息子に、朝からタンパク質を食べさせないと、しっかり食べて体つくっている子とどんどん差がつくんだって! 栄養指導を受けてびっくりしたわ〜」という友人に、「それ、ママのあなたも必要なんだよ」と言ったところ「え、でもわたしはもう中年だし、運動してるわけでもないし」。
確かに。わたしも3年前までそう思っていました。40代も後半になり、肉を食べると体に重いなとか、野菜のほうがおいしいわ、なんて思っていたものです。タンパク質なんて、アスリートや筋トレを頑張る人が気にする栄養素でしょ、と。
この機会に、わたしがタンパク質を朝ごはんに食べなくてはと目覚めた当初の話を久しぶりにさせていただこうかと思います。
「自分だけのためにごはんをつくってみる」ことの難しさ
お風呂の中で読んでいた雑誌で、50代に入っても活躍しているアスリートのインタビューがふと目に入ってきたのがきっかけでした。
40代後半になって体力が落ちまくり「でも老化だと諦めたくない!」ともがいていたわたしの心に「ごはんが基本。3食の時間と内容をきっちり守っている」という彼の言葉が、雷でも落ちたかのように響きまくったのです。
プロ選手としての平均寿命が30歳ほど、つまり20代で引退する選手も多いその競技内で彼がそれだけ長く活躍できた秘訣は食べ方なのか!
いつもなら他人事と流してしまうアスリートの言葉が、人生の先輩のものとしてすっと入ってきて「これだ!」と震えた瞬間でした。今でもそのお風呂の光景は思い浮びます。
わたしもあやかりたい! なら、とりあえず試してみよう。
ずーっといい加減にしてきた朝ごはんに取り組むなら、伸び代しかないやん!
そう朝ごはん改革を決意したのはいいけれど、いざ翌朝に取りかかろうとしたところ、卵ひとつを手に取るのにも躊躇する自分を発見しました。え、これって贅沢じゃないの?
なんと、母親業を20年近くやるなかで、おかずは子どもに回すという習慣がしみついていたのです。
いざ自分の朝ごはんをつくろうとしたときに、「これは子どもたちにとっておこうかな」と卵ひとつ、ウインナー1本も自分のために使うことを戸惑う自分に驚きました。
それもこれも、お母さんはこうあるべき、というわたしの思い込みから来るものだったのですが、「自分だけのためにごはんをつくってみる」に対する心の中のハードルは思いもかけず高く、そこを乗り越えるのに実に時間がかかったのでした。
でも、社会人になって25年以上、子どもを持って20年近く、こんなにもきちんと自分のことを見つめ、自分のための食べものを考えたのは久しぶりで、それはとても心地よくもありました。
少しでも元気になろうとスタートした朝ごはん改革チャレンジは、わたしにとっては思いもかけず、自分のことをきちんと見つめ直してケアしてあげる機会になったのです。
そんな朝ごはん生活も3年めに入り、今では大いばりで朝から2個の卵を自分のために使うオカンに進化しました。
卵を2個、あるいは卵2個分と同等のタンパク質をごはんやパンと一緒に摂ると、1日に必要なタンパク質50gのうちの3〜4割は摂れるよ。
ということを、ためらいなく実行しています。
タンパク質をしっかり摂れる、卵を使った朝ごはん
卵を使ったタンパク質朝ごはん①
スキレットでオープンオムレツ
器が変わると食欲のない朝も楽しい。ということで朝ごはん改革を始めてから愛用しているのがスキレット。
この日はかぼちゃ、しめじ、カマンベールチーズを入れたオープンオムレツに。魚焼きグリルで手軽に焼けて、実はフライパンよりも手軽なのです。
卵を使ったタンパク質朝ごはん②
生春巻の皮でキッシュ
ほうれん草とゆり根を入れてキッシュに。キッシュはどうしても皮がめんどう。かといって冷凍パイシートは手軽だけれどあまり味が好みでないし……と試した生春巻の皮が大成功!
もっちり仕上がり、びっくりなおいしさです。
卵を使ったタンパク質朝ごはん③
トマトエッグ
オリーブオイルでトマトを炒め、軽くつぶしたところで中央に卵を落とします。
半熟に仕上げてパンと絡めて食べるのが楽しくてお気に入り。トマトの酸味とうまみで卵がさらりと食べられます。ごはんを入れてもおいしい。
卵を使った朝ごはん④
ルッコラエッグ
最近発見したお気に入り。目玉焼きにルッコラをのせてオリーブオイルと塩こしょう。ルッコラの苦味とまろやかな卵の相性のよいこと!
卵2個でも必死で食べているわたしが、うっかり卵をおかわりしてもよいかも、と思うほど軽やかに食べられます。
※ ※ ※
自分を見つめ直して生活を整えることは、自分を大切にすること。
自分のための朝ごはんを考えることはわたしにとって、セルフケアの大きなきっかけになりました。
朝の静かなひとり時間に白湯を飲みながら、自分の体に今日の様子を聞いて、食べたい朝ごはんを考えてつくっていくことは、今ではわたしの大切なルーティンです。
みなさんもぜひ、いかがですか。
田内しょうこ(たうち・しょうこ)
「忙しい人のための時短料理」「時間価値を生むシステム料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。セミナーや出張教室のほか、食と暮らし、子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『汁かけごはん』(駒草出版)など。
インスタグラム:@tauchi.shoko
ツイッター:@oyakogohan