• 大人世代が抱える「こころとからだ」のお悩みや疑問について、頭痛・漢方専門「らいむらクリニック」の來村昌紀先生が、やさしく回答。今回は、生理前にさまざまな不調の症状(PMS)が出てしまうという、M.Sさんのお悩みにアドバイスをお送りします。

    : 生理前の不調「PMS」に悩んでいます。効果的な食事や生活習慣を知りたい!

    画像1: 生理前の不調の症状「PMS(月経前症候群)」との上手なつきあい方は? おすすめの食材・漢方・対処法|來村先生のこころとからだのお悩み相談室

    イライラしたり落ち込んだり……情緒が大変です

    生理前になると、おなかが痛くなったり、眠くなったりします。

    PMS(月経前症候群)の症状だと思うのですが、ほかにもささいなことで落ち込んだり、イライラしたり、感情の起伏に悩まされることも。

    仕事に集中できないこともあるのですが、不調の原因を周囲にも伝えにくいので、困っています。

    PMSに効果的な食事や生活習慣、おすすめの漢方などがあれば教えていただきたいです。

    (M.S さん/40代・会社員)

    :PMSはまじめで我慢してしまう人がなりやすい傾向が。自分にやさしくすることも大切です

    画像2: 生理前の不調の症状「PMS(月経前症候群)」との上手なつきあい方は? おすすめの食材・漢方・対処法|來村先生のこころとからだのお悩み相談室

    別名「血の道症」。実は昔から食事療法や漢方薬で対処されてきたのです

    こころと体にさまざまな不調を起こすPMS(月経前症候群)

    生理前の腹痛や眠気、感情の起伏などにお悩みなのですね。PMSは“Premenstrual Syndrome”の略で、日本語では「月経前症候群」と訳されています。

    月経前症候群は生理3〜10日ぐらい前に始まり、さまざまな精神的・身体的不調を起こします。

    月経周期は、「月経」→「卵胞期」→「排卵期」→「黄体期」→「月経」というサイクルを繰り返すのですが、この月経前の「黄体期」に起こる女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンの急な変動が、さまざまな精神的・身体的症状を起こしてくると考えられています。月経周期と連動するPMSは、早ければ月経が始まる思春期から出始め、閉経するまで続く方もおられます。

    症状としては色々な症状があるのですが、代表的なものを挙げると、

    こころの不調

    イライラ、気分の落ち込み、感情の起伏、集中力低下

    体の不調

    乳房のハリ、体のだるさ、眠気、生理痛、食欲の増加、肌荒れ、頭痛、腹痛、お腹のハリ、便秘、肩こり、むくみ、吐き気、めまい

    などが報告されています。

    M.Sさんの症状もすべて含まれており、生理前に起こることからまさにPMSが原因と思われますね。

    女性のライフステージによってもPMSのさまざまな影響がある

    女性にはライフステージに応じて色々な役割があり、そのライフステージに応じてPMSが影響してきます。具体的には妊娠・出産、子育て、仕事をしているかどうかなどです。

    一般的には妊娠・出産経験がある女性の方がイライラなどの心の症状が現れやすいという報告もあり、子育ての悩みが心の状態に影響しているのではという分析もあります。

    働く女性ではM.Sさんのように仕事に集中できずにミスが増えて落ち込んだり、逆にささいなことで他人に腹が立ったりしてしまうこともあります。

    専業主婦の場合でも、家事が手につかなかったり、イライラして家族に八つ当たりしてしまったりすることもあります。

    このようなPMSですが、実は昔から同じような症状はあり、昔はこのような症状を「血の道症」と呼んで、食事療法や漢方薬で対処されていました。

    対処の基本は、しっかりとセルフケアをすること。まずは規則正しい生活バランスの取れた食事適度な運動十分な睡眠が大切です。

    PMSを和らげる食べものと、控えたい食べもの

    食事は症状に合わせて食材を選びましょう。

    ● イライラや頭痛、便秘にはカルシウムやマグネシウムのミネラルが有効で小魚ヨーグルトチーズなどに多く含まれています。

    ● 血流を良くするビタミンEやγ-リノレン酸、貧血を改善するビタミンB6なども有効です。

    ● ビタミン類は緑黄色野菜に多く含まれますが、生野菜は体を冷やすため、旬の野菜を火を通したり、ゆでる、蒸すなどして温野菜でとることが大切です。

    ● リノレン酸などのよい油は青魚に多く含まれています。大豆のイソフラボンは女性ホルモン作用があり、PMS全体の症状を和らげる効果があります。

    ● コーヒーやお茶などに多く含まれるカフェインはとりすぎるとイライラなどの原因となるため、PMSの時期は少し控えましょう。

    ● またさきほどお伝えした生野菜以外にも甘いお砂糖の入ったものやタバコは、冷え性や血流が悪くなる原因となるため、PMSによくない影響を与えます。

    PMSにおすすめの漢方

    漢方薬としては昔から婦人3大処方といわれるものがあります。

    冷え性やむくみ、貧血気味の人で生理痛がひどい人には温めて血流を良くしてむくみをとる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、便秘気味でイライラ、のぼせ気味の人には血流を良くして、気分を安定させる加味逍遙散(かみしょうようさん)、顔はのぼせるが、足が冷えたり、月経不順や月経痛がひどい人には血流を良くして冷えのぼせを改善する桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が有効です。

    肌荒れが気になる人には桂枝茯苓丸にハトムギ(薏苡仁)が入った桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)もあります。

    またPMSには個人差があるのですが、まじめで我慢強い、完璧主義の人がなりやすいという傾向があるという報告もあります。

    一見するとまじめで、我慢強いのはよいことのように思いますが、たまにはあまり完璧主義にならずに我慢しすぎず、自分にやさしくすることも大切かもしれませんね。

    今回の記事がM.SさんはじめPMSでお困りの皆様の少しでもお役に立てば幸いです。

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    〈イラスト/コグレチエコ〉

    画像: PMSにおすすめの漢方

    來村昌紀(らいむら・まさき)

    頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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