(『天然生活』2022年5月号掲載)
気持ちよく過ごすための朝のルーティン
長年積み上げてきて定着した小川さんの朝のルーティンは、執筆のためにありました。
小川さんの朝は、制服のように日常着を決めて、着る服に悩む時間をなくし、洗濯回数を減らしてできるだけ、むだな家事を省くようにするなど、徹底的に省エネルギーです。
ベルリンで暮らしていたときに知り合ったドイツの友人たちの影響も大きいのだとか。
「彼らは環境に負荷をかけないためにも、電気を使いすぎず、物を持ちすぎず、やみくもにエネルギーやお金を使わないんです。日常生活においては効率を優先し、できた時間でやりたいことをやっているんですよ」
平日は朝の澄んだ空気のなかで小説の執筆に集中して取り組みたい。朝のルーティンは、その時間をつくり出し、有効に使うために工夫した結果なのでした。
06:00 手のひらに日光を当てる
朝日を手のひらに当てると14時間後に睡眠ホルモンといわれるメラトニンが分泌されると聞き、続けている習慣。
「創作が佳境に入って目が冴えたり、時差ボケだったり、ときどき眠れないことがあるので。窓越しの日差しでも効果があり、手のひらがぽかぽかしてきます」
06:05 朝食は食べず、おなかを空に
小説の仕事に集中するためには、空腹状態のほうが小川さんには合っているそう。
「食べると消化にエネルギーを使いますし、眠くなってしまうこともあるので、執筆が終わるまでは食べないですね。ごはんを食べるまでは、だれとも話さないようにもしています」
06:10 身支度に迷わない
今日は何を着ようと考えたり迷ったりする時間がもったいないので、日常着は、肩がひっかかったりせず、着ていて楽な服を制服のように決めています。
「マロバヤや、エヴァムエヴァのカットソーやサルエルパンツが好きです。同じ服がそろっていると、洗濯も効率的にできます」
夏は半袖一枚で、冬は長袖にベストやフリースを合わせるのが定番
07:00 洗濯は5日に1回
以前は毎日のように洗濯機を回していましたが、環境への配慮から洗濯回数を減らすようになりました。
そのための工夫として、スペースを取る大きなバスタオルはやめて、スポーツタオルサイズに。
「お風呂上がりに体も髪もこれ一枚で。このサイズで、私には必要十分です」
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<撮影/公文美和 取材・文/嶌 陽子>
小川 糸(おがわ・いと)
小説家。2008年『食堂かたつむり』でデビュー。 多くの作品が、英語、韓国語、中国語、フランス語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、さまざまな国で出版されている。 『食堂かたつむり』は、2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ小説賞を受賞。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです