• 健康な心身を保つためには、不調の原因に向き合い根本を理解することが大切。自然由来の生薬を組み合わせて処方される「漢方薬」は、やさしくいたわり、じっくり治すケアにもってこいです。漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さんに、秋から冬にかけての季節に知っておきたい「乾燥」におすすめの養生と漢方薬を教えていただきました。
    (『天然生活』2022年11月号掲載)

    「乾燥」には水分を摂りすぎるのもあまりよくありません

    秋になって湿気が落ち着き、大気が乾燥してくると、体も乾燥しやすくなります。そこから、皮膚にかゆみが出たり、喉が痛くなったりという不調につながっていくのです。

    漢方の世界で健康というのは、「津液(しんえき)」が体に満ち足りている状態。「津液」とは、涙、鼻水、胃液など体内を流れる水の総称です。

    これらが、血流とともに体をめぐり、しっかり排出されていると、皮膚や粘膜など体の隅々を適度に潤しておくことができ、乾燥が防げるのです。

    それには水分をたくさん摂ればいいということではありません。必要以上の水分が体にたまってしまうと、むくみや頭痛、下痢などを起こしてしまいます。

    画像: 漢方家に聞く“秋から冬”の養生「乾燥」におすすめの漢方/杉本薬局の漢方相談室

    水分も摂りすぎるのはよくありません

    画像: 神奈川・大船で70年以上続く漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さん。料理家の野村友里さんとの縁で、グロサリーショップ「イートリップ ソイル」に漢方相談所も構えます

    神奈川・大船で70年以上続く漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さん。料理家の野村友里さんとの縁で、グロサリーショップ「イートリップ ソイル」に漢方相談所も構えます

    画像: 陳皮(ミカンの皮)、クコの実、八角など、食卓でおなじみの食材も漢方の生薬には多くある。「漢方薬は、味と香りも効能のひとつです」

    陳皮(ミカンの皮)、クコの実、八角など、食卓でおなじみの食材も漢方の生薬には多くある。「漢方薬は、味と香りも効能のひとつです」

    画像: 桂皮(シナモンの皮)とハトムギ。粉になる前の状態で見ると、本当に自然由来だと実感。「漢方薬は、これら生薬を組み合わせ、何を何グラム入れるかという配合の妙でつくられます」

    桂皮(シナモンの皮)とハトムギ。粉になる前の状態で見ると、本当に自然由来だと実感。「漢方薬は、これら生薬を組み合わせ、何を何グラム入れるかという配合の妙でつくられます」

    「乾燥」の処方

    処方①
    当帰飲子(とうきいんし)

    皮膚がカサカサと乾燥し、かゆみが気になるときに。血と気をめぐらせる働きのある当帰や、入浴剤などにも用いられる川芎(せんきゅう)などを配合。

    画像: 上から時計回りに:当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)

    上から時計回りに:当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)

    処方②
    麦門冬(ばくもんどう)

    気管支や口の粘膜の渇きを潤す。潤すと楽になるような咳、痰、ぜんそくの症状に用いられる。主な生薬の麦門冬はユリ科の植物の根。

    画像: 上から時計回りに:麦門冬湯(ばくもんどう)、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)

    上から時計回りに:麦門冬湯(ばくもんどう)、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)

    処方③
    瓊玉膏(けいぎょくこう)

    6種の生薬からつくられた滋養強壮剤。生薬をはちみつで練ってペースト状にしたもの。肌や粘膜を潤し、髪の毛を丈夫にしてくれる効果も。

    画像: 上から時計回りに:地黄(じおう)、人参、茯苓(ぶくりょう)

    上から時計回りに:地黄(じおう)、人参、茯苓(ぶくりょう)

    こんな症状には

    目や口が乾く

    体を潤す力「陰」の不足が原因で、目や口が乾きやすくなっているのかも。
    ⇒処方:②/③

    かゆみ、湿疹

    空気が乾燥し、皮脂が不足して、汗もかかなくなると、皮膚トラブルが。
    ⇒処方:①

    声がかれる

    声の通りが悪くなる、出しにくくなるなどの場合も、口中や気管支の乾燥が原因かも。
    ⇒処方:②

    咳が出る

    「潤いを好み、乾燥を嫌う」といわれている肺の働きが弱っているのかも。
    ⇒処方:②

    肌あれ

    夏の紫外線ダメージ、北風やエアコンなど乾燥から肌トラブルになることも。
    ⇒処方:①/③



    〈撮影/近藤沙菜 イラスト/須山奈津希 構成・文/鈴木麻子〉

    画像: 神奈川県鎌倉市大船1丁目25-37

    神奈川県鎌倉市大船1丁目25-37

    杉本薬局(すぎもとやっきょく)
    1950年の創業以来、一人ひとりの体質に合った漢方薬や自然薬を提案。三代目の杉本格朗さんと弟の哲朗さんらと家族で経営。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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