(『天然生活』2022年11月号掲載)
「乾燥」には水分を摂りすぎるのもあまりよくありません
秋になって湿気が落ち着き、大気が乾燥してくると、体も乾燥しやすくなります。そこから、皮膚にかゆみが出たり、喉が痛くなったりという不調につながっていくのです。
漢方の世界で健康というのは、「津液(しんえき)」が体に満ち足りている状態。「津液」とは、涙、鼻水、胃液など体内を流れる水の総称です。
これらが、血流とともに体をめぐり、しっかり排出されていると、皮膚や粘膜など体の隅々を適度に潤しておくことができ、乾燥が防げるのです。
それには水分をたくさん摂ればいいということではありません。必要以上の水分が体にたまってしまうと、むくみや頭痛、下痢などを起こしてしまいます。
水分も摂りすぎるのはよくありません
「乾燥」の処方
処方①
当帰飲子(とうきいんし)
皮膚がカサカサと乾燥し、かゆみが気になるときに。血と気をめぐらせる働きのある当帰や、入浴剤などにも用いられる川芎(せんきゅう)などを配合。
処方②
麦門冬(ばくもんどう)
気管支や口の粘膜の渇きを潤す。潤すと楽になるような咳、痰、ぜんそくの症状に用いられる。主な生薬の麦門冬はユリ科の植物の根。
処方③
瓊玉膏(けいぎょくこう)
6種の生薬からつくられた滋養強壮剤。生薬をはちみつで練ってペースト状にしたもの。肌や粘膜を潤し、髪の毛を丈夫にしてくれる効果も。
こんな症状には
目や口が乾く
体を潤す力「陰」の不足が原因で、目や口が乾きやすくなっているのかも。
⇒処方:②/③
かゆみ、湿疹
空気が乾燥し、皮脂が不足して、汗もかかなくなると、皮膚トラブルが。
⇒処方:①
声がかれる
声の通りが悪くなる、出しにくくなるなどの場合も、口中や気管支の乾燥が原因かも。
⇒処方:②
咳が出る
「潤いを好み、乾燥を嫌う」といわれている肺の働きが弱っているのかも。
⇒処方:②
肌あれ
夏の紫外線ダメージ、北風やエアコンなど乾燥から肌トラブルになることも。
⇒処方:①/③
〈撮影/近藤沙菜 イラスト/須山奈津希 構成・文/鈴木麻子〉
杉本薬局(すぎもとやっきょく)
1950年の創業以来、一人ひとりの体質に合った漢方薬や自然薬を提案。三代目の杉本格朗さんと弟の哲朗さんらと家族で経営。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです