(『天然生活』2022年4月号掲載)
曽我部恵一さんが選ぶ“心のデトックス"のための「本と映画」8作品
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
暮らしの哲学
気楽にできる101の方法
いますぐできるカンタン哲学101例。ありふれた日常が驚きに満ちた発見に変わる。
「平坦な生活にひとつの切れ目を入れてみること。そこから気づかなかった何かがこぼれ出してくる」
自然のレッスン
自分の中にみずみずしい自然を蘇らせる、心と体と食べ物のレッスン。
「どこにいようと人間はナチュラルに生きることができるはず。精神と体を1本の線で結ぶためのガイドブック」
老人と海
ひとり小舟に乗り、海へ向かう老人。大魚を相手に戦う漁夫の姿を通して自然の厳しさと人間の勇気を問う。
「冒険することをやめたら終わり。何が終わりかというと、青春の終わりです」
水俣曼荼羅
日本四大公害病のひとつ、水俣病をめぐるドキュメンタリー。
「日本で生きるときについてまわる政治に対する我々の無力感。でも絶対に諦めてはいけないと、この映画が教えてくれる」
夏の娘たち ひめごと
山間の小さな町に、養父の最期を看取りにやってきた主人公。かつて関係をもった義理の弟と、町に戻ってきた幼なじみの間で揺れ動く。
「美しい日本の田舎で繰り広げられる純で粗野な恋」
ベティ・ブルー
激しく愛し合うベティとゾルグ。深く愛するほどベティの行動はエスカレートし、破滅に向かう。
「単純だけど何よりも強い恋の力。暴力のように恐ろしく、真夜中の深い青のように美しい」
ヴェノム
レット・ゼア・ビー・カーネイジ
マーベルコミック史上最も残虐なダークヒーロー。
「ただただ熱くなれるシンプルなヒーローもの(ダークですが)。少年の心はいくつになっても、自分のなかで目覚めを待っている」
ザ・ハント
富裕層が娯楽目的で行う人間狩りを描いたバイオレンススリラー。
「撃って撃たれてどんどん人が死んでいきますが、どこかコミカルでストレス発散。実は現代社会の矛盾を射抜く深い映画」
“映画的”になった現実を吹っ飛ばすもの
ただ毎日を過ごしているだけなのに、心にたまる余計なもの。
「意識して捨てていくようにしないと、どんどん増えていくばかり。それらを解消するためには、買い物をしたり、料理をしたりといろいろあるけれど、なかでも本と映画は、僕にとって手軽な方法です。本は、内容はもちろん、手にとってページをめくる感覚そのものに心安らぎます。活字を目で追っていくうちに、不思議と静かな気持ちになり、落ち着くのです」
対して映画に求めるのは、非日常。エンターテイメントに徹したものを選ぶことが多いのだとか。
「苦悩なんて現実だけで十分。最近は激しいアクションや宇宙の話、なんてものにひかれるわけです。昔とはずいぶん、趣味が変わった。以前は、ミニシアター系の人生の鬱屈を描いた作品なんかが好きだったけれど……現実のハードさがそれに追いついてしまった。僕自身の生活が、かつて観ていた映画的になってきたせいかも」
心のデトックスに欠かせない飲みもの
JUHAのコーヒー
西荻窪にある手回し焙煎の喫茶店。
「近くに引っ越したいほど好き。店名の由来は、アキ・カウリスマキの映画」
〈撮影/山田耕司 取材・文/福山雅美〉
曽我部恵一(そかべ・けいいち)
’90年代初頭より、サニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動。デビュー作では、’70年代のフォークやロックを’90年代のスタイルで解釈・再構築したサウンドで音楽業界に鮮烈な印象を与えた。現在は、バンドおよびソロでの活動と並行し、プロデュース、楽曲提供、執筆、俳優活動なども行う。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです