(『天然生活』2022年4月号掲載)
竹中翔子さんが選ぶ“心のデトックス"のための「本と映画」8作品
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
おおきな木
少年は木と遊び、木に語りかけ、そして忘れる。木は彼のためにすべてを与え、そして最後のよりどころとなる。
「さびしい気持ちに寄り添ってくれる本です。愛されたいときに」
モモ
町はずれの円形劇場跡に迷い込んだ少女モモ。その前に“時間どろぼう”が現れる。時間とは何か? を問われる1冊。
「“時間がない”と焦ってしまうときに。“ゆっくりでもいいんだよ”」
音楽〈完全版〉
不良学生3人組が思いつきでバンドを組み、衝動のままに楽器をかき鳴らす。2020年に公開されたアニメ映画も話題に。
「これぞ感動! まさしく感動! ザ・感動! 感動って素晴らしい」
自分の感受性くらい
1969年から1976年にかけての作品20篇を収めた詩集。言葉ひとつもゆるがせにしないその世界に背筋が伸びる。
「これ以上に、心を律してくれる本はありません。ばかものよ!」
フランシス・ハ
才能はなくてもやる気はたっぷり。ニューヨークでモダンダンサーとしての成功を決意して奮闘する、前向きな女性の物語。
「不器用でも、かっこ悪くても、それが私! 元気が出ます」
人生フルーツ
名古屋郊外のニュータウンの一角にある平屋で、自然とともに暮らす津端秀一さん、英子さん夫妻を追ったドキュメンタリー。
「毎日を大切に、豊かに暮らす。手本になるような生き方です」
きっと、うまくいく
真の友情や幸せな生き方を描き、競争社会への風刺も。ミステリー仕立ての10年後の物語も同時進行。ユーモアと感動の2本立て。
「うまくいかないことばっかり……そんなときの魔法の映画」
シーモアさんと、大人のための人生入門
89歳のピアノ教師・シーモア・バーンスタインが教える、深い愛と志。俳優のイーサン・ホーク初のドキュメンタリー監督作品。
「気持ちが落ち込んだとき、やさしいピアノの音色が心に響く」
いまの立ち位置を、確かめるために
心がざわついているな、と実感するのは、時間に追われているとき。映画は確実に、1本分の2時間弱を遠い世界に連れて行ってくれるから、雑事や悩みごとからつかの間解放してくれます。
「デトックスの必要を感じるのは、自分の立ち位置がわからなくなっているときでもあります。だから選ぶ映画は、日々の暮らしを描く、それらの価値を噛み締められる作品が多いです。『いま、やっていることは間違っていない』と確認できる、自分に立ち返らせてくれるものを自然に選んでいるのかも」
“時間”というキーワードなら、児童書の『モモ』。実はこちらは、大人になってからの愛読書だそう。
「小さなころにも挑戦したんですが、難しくて途中で断念。大人になって読み直し、こんなにも深い物語だったのかと驚きました。児童書は同じ作品でも、そのときどきで受け取れるものが変わります。皆さんにもぜひ、お気に入りをもう一度、手にとってほしいですね」
心のデトックスに欠かせない飲みもの
「カフェ香房」コーヒー
地元・鵠沼海岸にある喫茶店。
「マスターが淹れるコーヒーは、逆立った神経をなでるようなやさしさです」
〈撮影/山田耕司 取材・文/福山雅美〉
竹中翔子(たけなか・しょうこ)
神奈川県・鵠沼海岸にて、映画と本とパンの店「シネコヤ」を営む。元は写真館だったという店内では、ゆったりしたソファに腰掛け、パンをつまみながら本を読んだり、映画を楽しんだりと、気ままで心安らぐ時間を過ごすことができる。
https://cinekoya.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです