(『天然生活』2024年2月号掲載)
豊かな朝食や和菓子づくりなど、一つひとつのことにじっくり取り組む年に
「これまでは“早く庭仕事をしなければ”と、朝ごはんは大急ぎで食べていました。ときには立ったまま食べることもあったくらいです」
そう話す石黒智子さん。けれど、そんな生活もおしまい。10年以上かけてコツコツと続けてきた庭づくりが、やっと一段落したのです。
50代まで介護などで忙しくしていたために荒れてしまった庭。それを整えるべく、ブロックやレンガを積み上げる、植物を植え替えるといった作業を毎日少しずつしてきました。
どれも体力勝負の重労働だから、先に朝食を食べておくことは必須。でも最近、ようやく庭がきれいに整ったので、毎朝の作業は草取りや落ち葉掃きなどの簡単なものだけになりました。
そこでこれからは朝、森林浴と庭仕事を済ませてシャワーを浴びてから、ゆっくり朝食をとることにしようと決めたのです。
「庭にやってくる鳥を眺めたり、新聞や本を読んだりしながら、たっぷり時間をかけて朝食を味わいたい。
朝は夫と起きる時間が違うので、朝食はめいめいで用意して食べるのですが、ひとりでもきちんとテーブルクロスをかけて、花を飾って食事をしたいです」
かなりの時間と体力をとられた庭づくりの完了は、石黒さんの暮らしにとっての大転換。来年からは、朝食だけでなく、もっといろいろなことにじっくり取り組みたい、と目を輝かせます。
「子どもが小さいころは仕事や家事、介護などに追われて、季節の行事も十分お祝いできなかった気がします。これからは節句ごとにきちんと飾りや食べ物を準備して、もっと楽しみたいですね」
上質な和菓子の材料が手軽に手に入るようになったので、いろいろな和菓子をつくってみたい。
友人の終活を手伝いながら、自分も生前の形見分けを始めていきたい。
新年からしたいと思っていることはたくさんあります。
「もうひとつ、新たに取り組みたいと思っていることがあるんです。どんなことかはまだ秘密。そのために筆記具も新調したし、いつも新しいことを始めるときにつくるお針箱もつくりました」
そう声を弾ませる石黒さん。あふれる好奇心やアイデアを駆使して、新年の目標をきっと楽しくかなえていくに違いありません。
ささやかな目標をかなえるための近道アイテム
朝ごはんや和菓子の時間をよりおいしく、手軽にするために。石黒さんのアイデアやもの選びの力がいかんなく発揮されます。
おいしい朝食のための厳選した食材
朝ごはんの定番メニューは、温めたパン、ゆで卵、ドレッシングなしのサラダと果物、それにホットミルク。
気が向くとサンドイッチやフレンチトーストをつくったり、ごはんに卵の黄身をのせたものを食べることもあります。
「これからもっとメニューのバリエーションを増やしたい。おいしい食材もどんどん見つけていきたいですね」
ぶどうパンが好きなので、おいしいぶどうパンのあるパン屋さんも見つけたいし、パンのお供になるおいしいマーマレードも探したい。
シンプルな朝食も、ひとつひとつの食材にこだわればぐっと豊かになって、楽しみもいっそう増しそうです。
頂き物をアレンジして和菓子づくりを気軽に
粉の量さえ調節すれば、ひとり分からでも短時間でつくれるし、甘さも自分好みに調節できるのが和菓子づくりのいいところ、と石黒さん。
「でも、あんこをいちからつくるのは時間がかかるでしょう。だから、頂き物の和菓子とうまく組み合わせればいいと思うの。たとえば、羊羹を羽二重餅でくるんだらきっとおいしいはず」
白玉粉と砂糖、水、塩ほんの少しでつくる羽二重餅ですが、砂糖の量を少なめにすれば羊羹の甘さとのバランスもちょうどよくなって、おいしい一品に。
「最中を羽二重餅で包んでもおいしいです。好きなお皿に盛りつけると、さらに気分が盛り上がります」
〈撮影/杉能信介 取材・文/嶌 陽子〉
石黒智子(いしぐろ・ともこ)
雑誌や書籍を通じて収納、家事のアイデア、暮らしの工夫、道具の選び方などを独自の視点で発信。「亀の子スポンジ」など、台所用品の商品開発や、商品評価の仕事でも活躍している。『70歳からの軽やかな暮らし』(PHP研究所)など著書多数。サイト「石黒智子のLife Style」では毎日一文をアップしつづけている。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです