• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫がしっぽで語ることとは?

    猫がしっぽをボワッとさせている時は

    猫のしっぽが、タヌキみたいにぶわっと膨らむ。

    そんな光景を、猫と暮らしている方なら一度は見たことがあるかと思います。

    私はかれこれ40年近く猫と暮らしていますが、猫たちは、びっくりしたときや怖いとき、怒っているときに、そうしてしっぽを膨らませるのを見てきました。

    ところが、今、我が家にいる5歳の男の子「全」は、しっぽを膨らませるタイミングが普通の子とはちょっと違う……。

    というより、1日に何回もしっぽを膨らませるのです。

    それだけ毎日恐怖を感じているのでしょうか?

    怖い時だけじゃない、うれしくてしっぽを膨らませる猫もいる

    見ていると、しっぽを膨らませるタイミングは、とてもそうは思えないときばかり。

    たとえば、夫が歩いているときにそこに走り寄って。

    夫のひざの上で撫でてもらいながら。

    はたまた、夫がダイエットのための運動をしているときにまとわりついて。

    画像: 怖い時だけじゃない、うれしくてしっぽを膨らませる猫もいる

    なんだか、まるで「嬉しくて嬉しくて」「好きで好きで」いてもたってもいられなくなって、しっぽが膨らんでしまうようなのです。

    そこで、はたしてそんなことが猫におこるのか、調べてみました。

    猫のしっぽが膨らむ理由ですが、どうやら猫は意識してしっぽを膨らませているわけではない様子。しっぽが膨らんでいるとき、しっぽにある立毛筋とよばれる筋肉が収縮し、反射的に毛が逆立つようなのです。

    立毛筋は感情をつかさどる交感神経と連動しています。怒りや驚きなど、気持ちが高ぶったときに筋肉も刺激されるんですね。

    猫がしっぽで伝えたい気持ち

    では、猫のしっぽが膨らむとき、猫はどんな気持ちでいるのでしょうか?

    (1)驚いている

    人間が驚いたとき、体をびくっとさせるのと同じで、猫も驚くとしっぽが膨らみ、背中の毛が逆立ちます。

    (2)怖がっている

    猫は恐怖を感じていてもしっぽを膨らませます。驚いているときと似て見えますが、怖がっているときは、膨らんだしっぽが垂れているのが、驚いているときとの違いです。

    (3)威嚇

    猫はなわばり意識が強い生き物。ケンカをするときなどには、しっぽを膨らませ、全身の毛を逆立て、自分を大きく見せることで強さをアピールします。

    (4)興奮している

    実は猫は怒りや恐怖だけでなく、気分が高まって興奮してもしっぽが膨らみます。おもちゃで遊んで夢中になったり、テンションが上がりすぎても膨らむのです。

    なるほど。全は、この(4)の「興奮している」で、大好きな夫がそばにいるとき、まるでおもちゃで遊んでいるように嬉しくなってしまっているんですね。

    画像1: 猫がしっぽで伝えたい気持ち

    しっぽが膨らんだときの対応ですが、そっと離れるのがいいのだとか。

    でも、うちの全は、離れてもどんどん追いかけてくるので逆効果かも? むしろ、なでなでして、落ちつくのを待つようにしています。

    しっぽの膨らむ理由も十猫十色。その子をよく見てあげて、その子にあった対応を心掛けたいですね。

    画像2: 猫がしっぽで伝えたい気持ち

    画像3: 猫がしっぽで伝えたい気持ち

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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