• 豊かな人生とはどんなものでしょうか? 歳を重ねて生き生きと自分らしく、充実感に満たされた日々を送る方々の暮らしぶりに、そのヒントが隠されていそうです。今回は90代のユーチューバー、多良美智子さんが、人生が変わったというお稽古事での学びと、暮らしへの生かし方を紹介します。
    (『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』より)

    お稽古事の暮らしへの生かし方

    リメイク教室でおしゃれを楽しむ

    画像: おしゃれしたい日の定番は、娘の義母の形見を仕立て直したワンピース。ミシンが苦手で一針ずつていねいに仕上げている。「習い始めてまだ数年。先生にべったりついて教わっています」

    おしゃれしたい日の定番は、娘の義母の形見を仕立て直したワンピース。ミシンが苦手で一針ずつていねいに仕上げている。「習い始めてまだ数年。先生にべったりついて教わっています」

    夢中になっているのが着物から洋服へのリメイク。知人から大量の着物を譲り受けたことがきっかけで、教室に通い始めるように。

    画像: 着物からセットアップやワンピースなどに生まれ変わった服が、日々の装いを彩る

    着物からセットアップやワンピースなどに生まれ変わった服が、日々の装いを彩る

    「知っている教室へ着物を持参したら、喜んで活用してくれて。その作品を写真で報告すると、元の持ち主も大喜び。おしゃれが楽しめて、ものが捨てられずに循環していくのがいいなと思っています」

    写経で心を整える

    画像: 書き写した写経は箱に入れて保管

    書き写した写経は箱に入れて保管

    小さくて細かい文字に集中すると、心が落ち着くそう。20年書きつづけても一字一句が難しく、飽きることはありません。「墨の濃さや書き損じに、その日の心の乱れが映るのが面白いです」

    初めは黙々と書いていたけれど、次第に仲間とのおしゃべりも楽しみに。「いまは話しながらでも書き上げられるよう、進化しました」

    パナマの伝統手芸の「モラ」を学ぶ

    画像: 重ねた布に切れ目を入れ、内側に折り込み模様をつくる

    重ねた布に切れ目を入れ、内側に折り込み模様をつくる

    「モラ」との出合いはPTA。素敵な女性の持ち物にひと目惚れし、眺めていたら、「好きなら教えてあげる」と誘われたのが始まりです。

    「よっぽど熱心にみていたんでしょうね。いまはもうつくっていませんが、好きなものにはすぐピンと来て、思わず体が反応してしまう。そんな直感を信じて飛び込む経験は、私の宝物です」

    下手だっていい。心ゆくまで歌う幸せ

    画像: 「同じ旋律をみんなでひたすら歌うだけだけど、それがよくて」

    「同じ旋律をみんなでひたすら歌うだけだけど、それがよくて」

    18年続けている歌の教室は、月に2回、欠かさず通う大切な場所。童謡、歌謡曲、クラシックなど幅広いジャンルの曲を、3カ月1クールのペースで教わっている。

    「楽しくて歌っているので下手でも気にしません。歌いつづけるおかげで声に元気があるといわれるように。のどが鍛えられ、誤嚥予防にもなっていると思います」

    絵手紙で地域や人とつながる

    画像: 実物より大きく、葉書からはみ出すように描くのがコツ。最初は小さくしか描けませんでしたが、いまは迷いなく筆を動かせるように

    実物より大きく、葉書からはみ出すように描くのがコツ。最初は小さくしか描けませんでしたが、いまは迷いなく筆を動かせるように

    絵手紙を習いたてのころ、描きたい思いが強く、毎日描いて孫に送っていたという多良さん。「その妹が自分のことのように心待ちにして、郵便受けへ走っていたそうです」

    画像: お礼に届いた手紙はいまも大切にしている。「眺めるたびに、元気がわいてきます」

    お礼に届いた手紙はいまも大切にしている。「眺めるたびに、元気がわいてきます」

    大好きだった絵手紙の先生とは、頂いた毛糸のお返しに毛布を編んで贈ったことから文通がスタート。身につけた手仕事を通じて、温かな交流が続いています。

    画像: 先生が冊子として残してくれた生徒の作品集。表紙を付けて保管している

    先生が冊子として残してくれた生徒の作品集。表紙を付けて保管している 

    画像: 「仕上げに名前のハンコを押すと、画面がぐっと引き締まります」

    「仕上げに名前のハンコを押すと、画面がぐっと引き締まります」

    70代からは約15年、地域のコミュニティーで絵手紙の手ほどきを担当。「『ヘタでいい、ヘタがいい』という絵手紙の精神を伝えると、みんな安心して筆を動かしてくれます」

    生徒が上達し、伸び伸びと大きな絵を描く姿をみるのが何よりの喜び。「教える側になっても、根底にあるのは描く楽しさを共有する幸せです」。

    学びで変わった私の人生

    知らないことが知れる
    人と話すと、自分では気づけない情報が次々と入ってくるように。趣味が似ている仲間だからこそ相談への答えも的確。「新しい情報に触れるのは何よりの刺激です」

    大笑いすることが増えた
    おしゃべりは大笑いで終わることが多い。「笑うだけで抱えていた悩みもどこかへ消え、気持ちがふわっと軽くなります。免疫力が上がって、健康にもいい気がします」

    自分の成長を感じる
    できないことができるようになるのは、いくつになってもうれしいもの。少しずつでも上達を感じられることが自信につながり、暮らしにハリと喜びを与えてくれます。

    本記事は『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』(扶桑社)からの抜粋です

    <撮影/林紘輝 取材・文/小松﨑裕夏>

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    『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』(扶桑社ムック)

    『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』(扶桑社ムック)|amazon.co.jp

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    自分をまんなかに置いて、これからをもっと自分らしく。暮らしを整えることから、体や心のケア、人生を楽しむための時間まで。歳を重ねたからこそ見つかる、心地よく豊かに暮らすためのヒントを集めました

    家族や仕事のために多くの時間を費やしてきた時期を経て、やがて、自分をまんなかに置いて暮らせるステージへ。そんなこれからの毎日を、自分らしく楽しむ人たちの暮らしには、歳を重ねたからこそ見つかる小さな幸せや、心地よく暮らすための知恵が詰まっています。

    本書では、空間や暮らしのリズム、体を整えることから、おしゃれや肌・目と耳のケア、食事、夫婦の時間、学びや夢中になれることまで、これからの人生を豊かにするさまざまなヒントを紹介します。

    【巻頭 [晩年のインタビューから]】
    料理家・枝元なほみさんの「支え合う幸せ、助ける料理」。人と支え合いながら暮らすこと、料理を通して誰かを助けることについて伺います。
    【第一章 幸せを生む暮らしの整え方】
    空間、暮らしのリズム、体を整えることから、毎日を心地よくする方法を紹介。ぬ衣さん、引田かおりさん、德田民子さん、伊藤千桃さん、中島デコさん、萩尾エリ子さんらの暮らしから、日々を楽しむための工夫を探ります。
    【第二章 いつまでも若々しく健やかに】
    橋本靖代さん、德田民子さん、ぬ衣さんによる「好きな、白の着こなし」、山本浩未さんが伝える若々しい肌のつくり方、今泉久美さんの体を強く美しくする朝ごはん、目と耳のいやし方など、毎日を健やかに楽しむための情報を紹介します。
    【第三章 豊かな人生に必要なもの】
    ミシンなど夢中になれること、夫婦で過ごす時間、90代からのお稽古事など、人生を豊かにしてくれる「楽しみ」に注目。それぞれのペースで、自分らしく日々を楽しむ人たちの暮らしを紹介します。
    【コラム】
    文筆家・大平一枝さんの「私の背中を押してくれる言葉」のコラムも収録。

    これからの暮らしに、ひとつの正解はありません。自分の心や体に耳を傾け、そのときどきの自分に合うものを選びながら、無理なく心地よく暮らす。歳を重ねたからこそ味わえる小さな幸せを見つけ、これからの人生を楽しむための一冊です。



    多良美智子(たら・みちこ) 
    1934年長崎県生まれ。27歳で結婚後、1967年より神奈川県の団地に暮らす。11年前に夫を見送ってからはひとり暮らしに。高校生の孫とともに、YouTubeで「Earthおばあちゃんねる」を配信中。著書に『88歳ひとり暮らしの 元気をつくる台所』『90年、無理をしない生き方』(ともにすばる舎)などがある
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