• 何かを手に入れるときは、思いきって “第一希望” を選ぶ。そのときは、高価さにドキドキするけれど、それは必ず、20年後、30年後、さらには世代を超えた、わが家の定番になるのです。
    (『天然生活』2016年11月号掲載)

    小さな暮らしの3カ条
     適当なものは家に入れない
    間に合わせのものを買わない。適当なものを入れると、結局は捨てられなくなって、物が増えてしまう。
     次の世代に受け継げる物選び
    シルバーのカトラリーは、将来、娘さんに譲る予定。上質なものであれば、何代にもわたって愛用できる。
     夜、寝る前はニュートラルな状態に
    新しい一日を片づけからスタートさせたくないから、散らかった状態では寝室に入らない。

    厳しい審査をパスした、自分の定番と暮らす

    粕谷家には、控え選手なし。居場所を与えられるものは、いつでもベストコンディション、代わりなんていないスタメンのみ。

    ※ スタメン=スターティングメンバー(和製英語)。スポーツの団体競技で、試合スタート時の出場選手。先発メンバーのこと。

    暮らしが、不必要に大きくなるのは、「あれがあったら便利かも」で、物がどんどん増えていくから。それがベストであるか、そうでもないかはともかくとして、つい、控えを増やしてしまうから。

    ちなみに、粕谷家では、スタメン登録されるまでに頭のなかでさまざまなシミュレーションが行われ、ふるいにかけられ、選び抜かれたものだけが、粕谷さんの家へとやってきます。

    その条件のなかで重要視されるのは、「長く使えるものかどうか(修理が可能であるか)」「買い足しが可能なものであるか」ということ。

    「たとえば、修理できないものについては……気に入ったグラスを8個セットで買ったとします。長く使ううちに、不注意でひとつ、またひとつと割ってしまうことも。そこでまったく同じものを買い足せないと、たとえよく似たものを合わせて使っても、どことなく居心地の悪さは残ってしまうはず。それが嫌なので、消耗品に関しては、長く製造されているもの、いわゆる定番のアイテムを選ぶことが多くなりますね」

    ダイニングの椅子は、結婚のときにそろえたもの。購入したのは東京・銀座のデパートで、「当時は本当に、いまほど高価ではなかったのよ」といいますが、一度に6脚ですから、相当の価格です。

    しかし、かれこれ25年。ふたりのお子さんが大きくなり、「もう、汚すことはないだろう」と、3年前に座面を張り替えて、いまも現役。これからもずっと、食事風景にはこの椅子の姿があるはずです。 

    画像: 新しく家庭を持った25年前から、このYチェアに腰かけ、食事を楽しんできた。「夫は体が大きいので、彼が同じ椅子にばかり座って、ひとつだけ傷みが早くならないように、定期的に椅子を取り替えて」

    新しく家庭を持った25年前から、このYチェアに腰かけ、食事を楽しんできた。「夫は体が大きいので、彼が同じ椅子にばかり座って、ひとつだけ傷みが早くならないように、定期的に椅子を取り替えて」

    いつでも繕いができるように

    画像: ボタンが取れたとき、服がほつれたとき。気づいたら、すぐ繕えるように、裁縫道具はかごに入れて、さっと手に取れるリビングに。「後まわしにすると、結局、面倒になるから。直せるものは、即座に直します」

    ボタンが取れたとき、服がほつれたとき。気づいたら、すぐ繕えるように、裁縫道具はかごに入れて、さっと手に取れるリビングに。「後まわしにすると、結局、面倒になるから。直せるものは、即座に直します」

    流行り物、便利物にも飛びつかない

    画像: みんなが持っているもの、あると便利とされているものは、少し離れたところから観察して、自分に必要かどうかを見極める。「よくよく考えてみれば、自分の暮らしに本当に必要なものは、そんなに多くはないんです」

    みんなが持っているもの、あると便利とされているものは、少し離れたところから観察して、自分に必要かどうかを見極める。「よくよく考えてみれば、自分の暮らしに本当に必要なものは、そんなに多くはないんです」

    シルバーのカトラリーは気長に集める

    画像: イギリスの「デビット・メラー」のカトラリーは、結婚当初、25年前に何セットかをまとめて購入。その後、気に入ったアンティークのものを見つけるたびに一本ずつ買い足している

    イギリスの「デビット・メラー」のカトラリーは、結婚当初、25年前に何セットかをまとめて購入。その後、気に入ったアンティークのものを見つけるたびに一本ずつ買い足している

    小さな暮らしの楽しみ

    朝、自分のために淹れるコーヒー

    家族がまだ寝静まっている朝、ゆっくり味わうひとりの時間。

    画像: 自分のためにコーヒーを淹れて、雨戸を開けたり、朝食の準備をしたり。毎朝の、ゆったりとしたウォーミングアップの時間

    自分のためにコーヒーを淹れて、雨戸を開けたり、朝食の準備をしたり。毎朝の、ゆったりとしたウォーミングアップの時間



    <撮影/嶋本麻利沙 取材・文/福山雅美 構成/fika>

    粕谷斗紀(かすや・とき)
    スタイリスト・吉本由美さんのアシスタントを務めたあと、独立。子育てをしながら、幾つかのブランドのプレス業を行う。現在は普段使いのリネンを提案する「フォグ リネンワーク」にてプレスとして勤務。夫、長男、長女との4人家族。
    http://www.foglinenwork.com

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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