(『天然生活』2016年11月号掲載)
直してずっと使うもの
気に入ったものを思いきってそろえ、直しながら愛用している粕谷さん。
たとえば、食卓用のYチェアは25年選手ですが、3年前に座面の張り替えをしました。背もたれや肘掛けの削り直しも可能ですが、直したのは座面だけ。「小さな傷や、古びた風合いは嫌なものではないから」と、あえて残しておいたそう。

「べつに、新品の状態に戻したいわけではないんですね。それは、同じく直しながら25年ほど使っている漆のお椀や、器も同じこと。とくに器の金継ぎなどは、きれいに仕上がっていなくてもかまわないんです。繕ってくれた人の手の跡やクセが残っているほうが面白いと思っているくらい」
結婚当初からずっと使いつづけているものも多くあります。使い込まれたもの特有の風合いがいとおしいのです。
25年目 有次の包丁

結婚するときに持ってきた包丁。半年に一度、築地の店に行って、研いでもらうのを習慣にしている。「上の包丁は、もう刃が減ってしまって、ほとんど柄と同じ幅に。あとどれくらい使えるんでしょう……」
7年目 ラ・バーゼのまな板

発売当初から使っている、「ラ・バーゼ」のゴムの木のまな板。刃の当たりが柔らかく、正方形サイズが使いやすいのがお気に入り。「2枚、持っていて、黒ずんできたら削り直しに出して、2枚を順繰りに使っています」
25年目 有次のおろし金

こちらも、結婚以来ずっと使っている愛用品。「刃の鋭さが鈍ってくると、築地のお店に行って目立てをしてもらいます。目立てしたてのときは何本でも大根をおろしたくなってしまうくらいの、すり具合なんですよ」
25年目 漆の椀

結婚のときに持ってきた、浄法寺塗の漆の椀。「傷がついてしまったり、漆がはげてしまったりするたびに、購入したところへ修理に出して使いつづけています」。塗り直すたびに、美しくなって戻ってくるのがうれしい
10〜20年目 陶の器

なるべく “おそろい” を選ぶ粕谷さんだけれど、例外は陶の器。「欠けたり割れたりしたものは、知り合いに頼んで金継ぎをしてもらっています。プロではない人に頼むのですが、そのほうが、味わいがあっていいんです」
7〜8年目 カシミヤのストール

カシミヤは、長く使っても柔らかな肌触りが変わることなく、ずっと大切に身にまとえる。「虫食いや、ひっかけてほつれてしまったときは、すぐに繕って。そこまでしても使いつづけたいと思うものを選びます」
繰り返しながら使うもの
気に入ったら、同じものをルーティーンで。「これは、きっと廃番にならない」……そんな嗅覚も、重要かも?
3巡目 リーデルのグラス

「ワイングラスは、酔った状態で洗うから、つい、割ってしまうこともあって」。ようやくたどり着いたのは、薄手だけれど丈夫な「リーデル」。いつでもまったく同じものが手に入るという、安心感
20巡目 はいばらのはがき

お礼状を書いたり、季節のあいさつをしたり。大人になると、なにかと必要になるはがき。「字を書くのが苦手なのですが、このはがきは罫の幅がちょうどよく、字をバランスよく見せてくれるのがお気に入りです」
7巡目 fogのキッチンクロス

キッチンクロスは、12枚を1セットにして一度に買う。「古くなっていく度合いが同じなので、取り替え時がひと目でわかるのがいいんです」。下は食器をふくためのもの。上のワッフル地は、手をふくためのもの
ずっと 調味料いろいろ

いろいろ試し、定番化したのがこちら。一番の古株は「旭ポンズ」で、使いはじめて12年。「兵四郎だし」は、忙しいときにも、おいしいだしがさっととれて便利。調味料を決めておけば、安定した “わが家の味” になる。
ずっと マークス&ウェブの製品

ハンドソープから、シャンプー、リンスまで統一して。自然な素材を使い、どの商品もレフィルがあるので、環境にやさしいことも選ぶ理由。「容器が古びてきたら、それごと取り替えて。パッケージのシンプルさも好き」
6巡目 有次の菜箸と合羽橋の木べら

有次の菜箸は、2種類あるうちの長いほう。「家庭で使うのであれば、細めのタイプでは繊細すぎる気がして」。木べらは東京・合羽橋にある「キッチンワールドTDI」で。へら部分がコンパクトなのが、使いやすさの秘密
<撮影/嶋本麻利沙 取材・文/福山雅美 構成/fika>
粕谷斗紀(かすや・とき)
スタイリスト・吉本由美さんのアシスタントを務めたあと、独立。子育てをしながら、幾つかのブランドのプレス業を行う。現在は普段使いのリネンを提案する「フォグ リネンワーク」にてプレスとして勤務。夫、長男、長女との4人家族。
http://www.foglinenwork.com
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです