(『天然生活』2017年12月号掲載)
家族の歴史を見守る一生もののテーブル
いまから34年前、アメリカで3年間暮らしていた引田さん一家。帰国するときには、現地で買って使っていた木製の丸いダイニングテーブルも椅子も一緒に持ち帰ってきました。
「でも、日本の暮らしには合わなかったの。サンフランシスコで暮らした家は、3ベッドルームの広々とした家だったから。テーブルの天板も、椅子の座面も高すぎて、座ると脚がブラブラして落ち着かなくて」と、かおりさん。
そんなとき、たまたま雑誌で、とある料理家のご自宅で使っていたテーブルが目に留まります。
「ひと目で気に入って、調べてみたら、日本の家具ブランド『ウッドユウライクカンパニー』のものでした。ぼくが大好きなチェリー材で、やさしく柔らかな質感。天板は無垢板だから、ちょっと傷ついても、濡らしたティッシュで24時間、覆っておけば、傷が目立たなくなるんですよ。木が生きているんだよね」とターセンさん。
「なにより、脚がきちっと四角いのがよかったんです。私たち、猫脚をはじめ、アールを描くデザインは苦手なので」と笑う、かおりさん。
こうしてやってきたテーブルは、まさに一生もの。昨年、新居へと引っ越しましたが、テーブルを買い替える気にはならなかったそうです。

「ウッドユウライクカンパニー」の「ベイシックテーブル」
ストレートな角柱脚が特徴。シンプルで飽きがこない端正なフォルムは、ありそうでないもの。やや赤みのあるチェリー材は、やさしい質感。無垢の木の味わいを生かすため、植物性オイルフィニッシュ仕上げ
それまで使っていた椅子は若い人たちに譲って、新たに買い替えました。
革の座面の「スタンダードトレード」の椅子は、この新居のリフォームを依頼した家具職人の渡邊謙一郎さんにセレクトしてもらったそう。

「スタンダードトレード」の「CHR-05A-L」
大きく傾斜した後脚に支えられる4本のスポークが背中にフィットする。「姿勢よく座れるの」と、かおりさん。浅いすり鉢状の座面はレザー張り。モダンな黒と木の組み合わせが、キリッとした印象
一方、北欧の巨匠、ボーエ・モーエンセンがデザインしたペーパーコードの椅子は、軽いので、掃除をするときに移動しやすくていいのだといいます。

ボーエ・モーエンセンの「J39 チェア」
デンマークの家具デザイナー、ボーエ・モーエンセンがシェーカー家具をモチーフにつくったもの。ペーパーコードの座面は心地よい収まり感で、背もたれの微妙なカーブも体に具合よくなじむ
娘や息子家族が集まるときは、渡邉さんに高さをそろえてつくってもらったパソコン用のデスクをテーブルにドッキング。にぎやかに食卓を囲みます。
吟味を重ねて選んだシンプルなテーブルや椅子が、家族の歴史を見守ってくれているようでした。

人が集まるときにはデスクと組み合わせて
パソコンデスクは、「スタンダードトレード」で、ダイニングテーブルの高さに合わせてつくってもらったもの。来客時には、ふたつを組み合わせると、広々とした食卓をつくることができる
おまけの一脚

最近、2脚目を購入した家具職人・斉藤衛さんのスツール
クローゼットやパントリーに置いておき、高い位置のものを取り出すときに踏み台として使っている。やや湾曲した座面は安定感がある。左は17年前に購入したもの。右が最近、買い足したもの
<撮影/尾嶝 太 取材・文/一田憲子>
引田ターセン、かおり(ひきた ・たーせん、かおり)
「ギャラリー fève」とパン屋「ダンディゾン 」オーナー。山あり谷ありの結婚40年を近著「しあわせの作り方」(KADOKAWA)に。2016年より娘夫婦と2世帯で暮らす。
www.hikita-feve.com
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです