• 日本には心惹かれる器をつくる作家が大勢います。作家と私たちの暮らしをそっとつないでくれるのが器屋さんです。自然豊かな土地、宮崎県・日向市にある「器と暮らしの道具 OLIOLI(オリオリ)」は、暮らしに溶け込む器を揃える器店。店主の金澤さんに、お薦めの作家をこっそり教えてもらいました。

    地方在住でも、器と気軽に出合える場を

    太平洋に面する宮崎県・日向市は、「馬ヶ背」「願いが叶うクルスの海」をはじめとした景勝地が数多くある自然豊かな土地。そんな場所に佇む器屋さん「器と暮らしの道具 OLIOLI(オリオリ)」に足を踏み入れると、花の絵がついた可愛いいものから、和の情緒あふれるもの、貫入が入ったアンティーク感漂うものなど、多彩な器が出迎えてくれます。

    こちらは、20代の頃から器好きという金澤美香さんが営むお店。夫も協力的で、店を始めるときは古い物件を一緒にリノベーションしたり、夫が焙煎を手掛けるコーヒー豆も店で販売しているのだとか。

    画像: 2008年に Web ショップを、2013年に実店舗をスタート。作家さんの個展は、年に3~4回ほど開催されています

    2008年に Web ショップを、2013年に実店舗をスタート。作家さんの個展は、年に3~4回ほど開催されています

    画像: 器とブローチを中心に手掛ける作家、松本美弥子さんによる銀彩の器も人気

    器とブローチを中心に手掛ける作家、松本美弥子さんによる銀彩の器も人気

    画像: 五右衛門風呂があるほどの古い民家を、夫婦でリノベーション。いまも五右衛門風呂は残されたままだそう

    五右衛門風呂があるほどの古い民家を、夫婦でリノベーション。いまも五右衛門風呂は残されたままだそう

    画像: 村上直子さんの耐熱の器。奥がグラタン皿、手前ふたつが「浅PAN」といって、ひとり用の小鍋のようなもの

    村上直子さんの耐熱の器。奥がグラタン皿、手前ふたつが「浅PAN」といって、ひとり用の小鍋のようなもの

    「若い頃から器が好きだったものの、地元には作家ものの器を手にとって見られる場所がなく、当時は格安航空券もないから“陸の孤島”の宮崎からは、陶器市に気軽に足を運ぶこともできなくて」と金澤さん。その後は進学で福岡に移り住み、やがて結婚。旦那さまの仕事の都合で日本各地を転々とするようになると、身軽に陶器市に出掛けられるようになりました。

    そんな日々を12年ほど過ごした後、宮崎に戻ることに。

    「地元での暮らしを想像して、いろいろ考えました。そこで思い至ったのが、宮崎だけじゃなく、全国に私みたいな人がいるかもしれない、ならば自宅にいながら陶器市を訪れたように器と触れ合える場をつくりたいということでした」

    画像: 器を並べる棚やテーブルは、ほとんどがアンティーク。懇意にしている福岡の古道具店「古物屋nibbles」を招いて、古道具市を年に2回開催しています

    器を並べる棚やテーブルは、ほとんどがアンティーク。懇意にしている福岡の古道具店「古物屋nibbles」を招いて、古道具市を年に2回開催しています

    画像: 夫が焙煎するコーヒー豆(屋号は「jyunitsuki coffee」)も販売。スペシャルティコーヒーを、酸味がまろやかになるように焙煎しています

    夫が焙煎するコーヒー豆(屋号は「jyunitsuki coffee」)も販売。スペシャルティコーヒーを、酸味がまろやかになるように焙煎しています

    画像: 天井には素敵な花の飾りが。店のアニバーサリーに合わせて、お友だちの花屋さん「Lierre」につくってもらったもの

    天井には素敵な花の飾りが。店のアニバーサリーに合わせて、お友だちの花屋さん「Lierre」につくってもらったもの

    そうしてwebショップを始め、何年か後にお客さんからの「やはり器を手にとって見たい」という声にも後押しされ、実店舗をスタートさせました。

    使いやすく、暮らしに馴染む器を

    そんな金澤さんに、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。
    まずは、北海道の余市町で作陶する馬渡新平(まわたりしんぺい)さんのお皿です。

    画像: 味わい深い貫入がたっぷり入った「白ヒビ粉引きプレート」。大きさは大中小の3タイプ

    味わい深い貫入がたっぷり入った「白ヒビ粉引きプレート」。大きさは大中小の3タイプ

    「馬渡さんは北海道で採れる土など地元のものを使って、風土に根ざした焼き物づくりをされています。代表作は『ヒビ粉引き』といって、木のような独特な茶色の粉引きなんですが、これは『白ヒビ粉引き』といって、少し黄色みを帯びた白をしています。

    貫入がたくさん模様のように入り、アンティークな趣。表面に出ている鉄粉もすごくきれいです。リムが細く立ち上がっているので、お料理がすごく盛りつけやすいですよ。10年ほど自宅で使っていますが、シミも気にならないし、欠けることもなく丈夫です」

    お次は、兵庫県丹波篠山市で作陶されている市野吉記 (いちのよしき)さんのお皿です。

    画像: 可憐な花柄が乙女心をくすぐる「安南手八角楕円皿」。「おもてなしはもちろん、普段のおかずやひとり分の焼き魚、お菓子でもなんにでも合います」と金澤さん

    可憐な花柄が乙女心をくすぐる「安南手八角楕円皿」。「おもてなしはもちろん、普段のおかずやひとり分の焼き魚、お菓子でもなんにでも合います」と金澤さん

    「市野さんとは2、3年ほど前に陶器市で出会いました。安南手(あんなんで)という技法の器をつくっていらっしゃるんですが、絵柄のにじんだ雰囲気がすごく可愛く、一目惚れして。安南手とは、フランス統治時代のベトナムの技法で、呉須という青色の顔料で描いた絵を、釉薬をかけることでにじませたものです。

    よくみなさん驚かれるのですが、市野さんは男性の作家さん。可愛らしい作品が多いので、意外みたいですね。お話しするととてもユニークな方で、いつも笑わせてもらっています」

    最後は、長野と埼玉に工房を持つ、加藤あゐさんのお皿です。

    画像: 風合いのある表情と美しいフォルムが魅力の「黒結晶変形皿」。6、7年ほどつくりつづけている定番のシリーズ

    風合いのある表情と美しいフォルムが魅力の「黒結晶変形皿」。6、7年ほどつくりつづけている定番のシリーズ

    「結晶釉という釉薬を使った技法の作品です。結晶釉はゆっくりと温度を上げた後、ゆっくりと冷却させることで結晶化するそうで、結晶化による肌質が独特で素敵です。リムがアシンメトリーになっているのは、『テーブルは丸や四角が多いから、中心をずらすことで動きをつけたい』という考えによるもの。

    画像: 横から見た姿。「テーブルが華やかになり、お料理をちょこっとのせるだけで絵になります」と金澤さん

    横から見た姿。「テーブルが華やかになり、お料理をちょこっとのせるだけで絵になります」と金澤さん

    加藤さんは、すごく親しみの持てるやわらかな感じの方。もともと美術がお好きで芸大に入り、二十代前半は現代美術作家のアシスタントをされていたそう。その後で、陶芸の世界に進まれたのは、生まれが愛知県の瀬戸市で、陶器が身近だったこともあるようです。最近は瀬戸の釉薬を使ったりもされているんですよ」

    金澤さんが器を選ぶ際に大切にしていることは、「料理が映えて使いやすく、暮らしに溶け込むもの」というもの。そんな基準を満たしたうえで、器選びはその時々の自分の考えや趣味嗜好を反映しているようです。

    「もともと私自身好きなテイストが幅広いというのもありますが、お店を始めた頃は、『こんな器もあるんだよ』って皆さんにご紹介したいという想いもあり、いろんなタイプの器を選んでいました。いまもその名残はありますが、ここ数年は、静けさを感じるもの、少しアーティスティックなものに惹かれていて、そんな器を中心に選んでいるような気がしますね」

    自身が気軽に器と触れ合えない環境にいたことがあったからこそ、お客さんの立場に寄り添うことができる「OLIOLI」。お店のHPには、器のお手入れの仕方や作家さんごとの器の扱い方の注意点が丁寧に書かれ、お客さんが器と上手に付き合える手助けをしているのも、そんな姿勢の表れのようです。

    ※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。

    <撮影/金澤美香 取材・文/諸根文奈>

    器と暮らしの道具 OLIOLI
    0982-53-3982
    11:00~17:00
    日休、臨時休業あり ※時々日曜もオープン ※臨時休業などは、SNSにてお知らせしています。
    宮崎県日向市原町4-1-14
    最寄り駅:JR日豊本線「日向市駅」東口より徒歩10分
    http://oli-oli.net/
    https://www.instagram.com/olioli2008/
    ◆企画展「春を纏う器」を開催予定(2021年3月)、大沼道行展を開催予定(2021年春頃)、小澤基晴展を開催予定(2021年9月)


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