「短大を出て、なんとなくスタイリストの道を選んで。誘われるがままに服づくりに参加して。そうしているうちに、小柄な私(身長155cm)でも似合う服をつくろうということになって。結局、どの道も実際は大変なのですけれど、始めるときはふわっとしているんです、私(笑)」
けれど、“好きなこと”は譲らない強さは、つくる服を見ればわかります。色は日本人の肌に合う紺、シルエットは誰もがバランスを取りやすいAライン……。肌にとびきり心地よいコットンシルクは、求め続けたに違いない素材です。「納得のいく服だけにしたいんです。そうすると、大量生産はできず、少しずつに」
「自分が好きな服だから、ごく自然に、毎日着ています」という大橋さんに、“いま好きなスタイル”を教えていただきました。
服は重ねることを前提につくる
「私の服には季節がないんです。肌寒ければ重ねればいいし、暑ければ1枚になればいい。その分、すべての服を重ねても美しくなるようにデザインしています」(大橋さん)。淡いラベンダー、サックス、そしてオフホワイト。絶妙な配色はもちろん、着丈も裾から見えるボリュームも完璧に計算されている証し。
夏でも肘は出さない
透け感もあるコットンシルクなら、暑い夏も涼しく着られます。「私は肘は隠す方が服のバランスがいいと思います。ガーゼのように薄い素材で、風通しのよいふわりとしたシルエットのブラウスは、夏本番にも頼りになりますよ」。“fruits of life”のテーマカラーでもある深い藍色で。
昔買ったものをいまのものと合わせる
「手元に残している服は、いま自分がつくる服にも合うんです」と大橋さん。
「素敵な服を求め続けたスタイリスト時代は、手に入れたときの喜びがたまらなかった。いまも手を通すだけで興奮します」。右から東京で一目惚れした“dosa”のレーシーカーディガン、パリで出会った“サンローラン”の70年代ヴィンテージ、左はパリ郊外まで赴き手に入れたワークウエア。「新品も20年たって、古着に育ちました(笑)」
「スポーツアイテムが苦手なら着なくていい。レースが苦手なら避ければいい。無理をしないでいれば、自分のスタイルが見えてくると思います」と話してくださった大橋さん。さらに詳しい内容は『これからの私が似合う服 春夏』に掲載しています。
〈撮影/前田晃 取材・文/宮崎桃代〉
大橋利枝子(おおはし・りえこ)
1965年生まれ。女子美術大学短期大学部卒業後、アシスタントを経て1988年に『Olive』のスタイリストに。2018年からシックな大人の服をつくろうと「fruits of life」をスタート。著書に『おしゃれって いいもの』(文化出版局刊)など。
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50代以上の、おしゃれを自分なりに愉しみたい女性に向けた、好評ファッションムック第2弾!表紙は伊藤蘭さん登場。
今回は、コロナ禍で、出かける場所も服もこれまでとはがらりと変わった時代に、「どの服を捨てるか、残すか、直して着るか」を大人のおしゃれ達人に徹底的に取材。1号め同様、「自分なりにおしゃれを、人生を楽しもう!」と背中をおしてくれる方が多数登場します。
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