稚鮎のこと
稚鮎とは、読んで字のごとく、成魚になる前の小さな鮎のことです。
稚鮎の骨はとても柔らかいので、丸ごと調理して、骨ごと食べることができます。鮮度のいいものを調理する場合は、腸も出さず、そのまま調理することが多いです。
とにかく、鮮度が命ですので、新鮮なものを選び、早めに調理をすることが大切です。
鮎は特有の香りから、香魚といわれ、夏を感じる、私のすきな魚のひとつです。
蓼(タデ)のこと
蓼(タデ)は、日本では古くから薬味として親しまれてきました。一説には、平安時代から、魚を食す際に、生臭みを消す食材として重宝されてきたそう。
とくに、殺菌作用があることから、川魚にいる寄生虫などを殺菌すると考えられ、使用されたと言われています。その知恵と食文化は、現在まで1000年以上も続き、いまでも、鮎の料理には欠かせない薬味となっています。
草全体や茎、葉に辛味があり、「たで食う虫も好き好き」ということわざがあるように、辛みのある葉を好んで食べる、蓼虫(タデムシ)と呼ばれる虫だけしか食わないことから、このことわざが生まれたようです。
蓼のもつ独特の香りと辛味は、塩焼きにした鮎の内臓の苦み、鮎の独特の香りと相性がよく、鮎とともに、夏を感じる風物詩となっています。
焼き稚鮎の蓼ソースかけのつくり方
香ばしく焼き上げた稚鮎に、
さわやかな酸味の蓼ソースをかけて。
材料(10尾分)
● 稚鮎 | 10尾 |
● 塩 | 少々 |
● オリーブオイル | 大さじ2 |
● 蓼 | 1束 (葉先を摘んで1カップ) |
● A | |
・オリーブオイル | 1/4カップ |
・魚醤(できれば鮎の魚醤) | 大さじ1と1/2 |
・米酢 | 大さじ2 |
つくり方
1 蓼ソースをつくる。蓼の葉を洗い、水気をペーパータオルでふく。すり鉢に加え、すりこぎで擦りつぶし、Aを加え、味をみる。器に盛り、ラップをぴったりとかぶせて、空気を遮断しておく。
2 稚鮎に塩をふり、オリーブオイルをからませる。220℃に予熱をしたオーブンに入れて焼く。5分たったところで、尾に部分に、2重に折ったホイルを被せ、上火を強くして、さらに約5分、香ばしく焼く。熱々の稚鮎に、1の蓼のソースをかける。
※ 蓼が手に入らない場合は、味は違うが、大葉を1と同様にすりつぶすとよい。
〈料理/松田美智子 撮影/山田 耕司〉
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を1993年より主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった保存食づくりを基本に、いまの時代に無理なく楽しめる季節の仕事を提案。著書に『丁寧なのに簡単な季節のごはん』(小学館) amazonで見る など。