天然生活 最新号

犬とふれあうことで、心癒され元気になる。そんなコミュニケーションを通じた癒し体験で、人と犬とが助け合う力を発揮する「ドッグセラピー」。日本レスキュー協会の赤木さんが、相棒「にこり」と一緒に、セラピードッグの活動について紹介します。今回は、セラピードッグと闘病中の子どもたちとの交流についてお届けします。

闘病中の子どもたちと、そのご家族を元気づけたい

日本レスキュー協会のセラピードッグは、「大阪母子医療センター」に入院する子どもたちを、週に1回定期的に訪問しています。

医師をはじめ、看護師や心理士、ホスピタルプレイ士などからなるQOL(Quality of life)サポートチームとともに、子どもたちの闘病意欲を高めることを目的とした動物介在活動を行っています。

今年で6年目になるこの活動も、衛生管理の厳しい病院で最初からスムーズに活動できたわけではありません。

「免疫力の低下した子どもたちへ犬から感染する病気は?」「病院の中に犬がいることをよく思わない人もいるのでは?」など、さまざまな課題がありました。

そこで、まずは「人畜共通感染症」に対して正しく理解してもらうこと、「吠える・咬む・不衛生」などといった犬のマイナスイメージを取り払ってもらうこと、約半年間の時間をかけて、セラピードッグについてご理解いただくことから始めました。

「感染対策」と「安全面」、「セラピードッグの衛生管理」の徹底、そして「周囲の理解」を得て、2016年のクリスマス会、はじめて子どもたちとセラピードッグの対面が実現しました。

画像: 体調や治療のタイミングによって病室から出られないときは、窓越しでハイタッチ

体調や治療のタイミングによって病室から出られないときは、窓越しでハイタッチ

にこりの背中にチャック?

大阪母子医療センターで出会う子どもたちの中には、生まれてから一度も「犬」を見たことがないという子も少なくありません。

初めて自分の体よりも大きくて毛むくじゃらの「にこり」を見たとき、「中に誰が入っているの?」と真剣に聞く女の子にびっくりしながらも、みんなで背中のチャックを探したことが今でも忘れられない経験として残っています。

画像: 中に人が入っていそうな「にこり」。チャックはどこに?

中に人が入っていそうな「にこり」。チャックはどこに?

子どもたちとの交流

2ヶ月に1回のペースで始まった訪問も、この活動を応援して下さる方々や企業のみなさまのご支援により、週に1回まで回数を増やすことができました。

それにより子どもたちとセラピードッグの心の距離も近くなったように感じます。

また、病院内でのセラピードッグの活動場所もどんどん広がっていきました。

画像: 病室のベッドにもお邪魔します

病室のベッドにもお邪魔します

プレイルームに留まらず、処置室への付き添いやNICU(新生児集中治療室)への訪問、そして病院内で最も衛生管理が厳しいと言われているICU(集中治療室)への入室が許可されました。

処置室では隣にいるセラピードッグを触ることで、子どもの気持ちをイヤな注射から逸らすことができるなど、つらい治療に向き合う子どもたちを励ましています。

画像: 病院内で最も衛生管理が厳しい「ICU(集中治療室)」へ

病院内で最も衛生管理が厳しい「ICU(集中治療室)」へ

子どもたちの家族にも広がる笑顔の連鎖

闘病中の子どもたちのそばにはいつも、ご家族や病院のスタッフが付き添われています。そしてその間、おうちでお留守番をしている「きょうだい」たちがいます。

ときにはきょうだいも一緒に、ご家族みんなでドッグセラピーに参加してくださることもあります。

画像: ご家族にとっても癒しの存在

ご家族にとっても癒しの存在

セラピードッグと交流することで子どもたちが笑顔になると、その笑顔を見たご家族もまた笑顔になり、前向きな気持ちで治療に向き合うことができるそうです。

画像: 実は子どもたちより、ご家族や病院スタッフの中にファンが多いかも。休憩時間に癒しを求めて「にこり」に会いに来られます

実は子どもたちより、ご家族や病院スタッフの中にファンが多いかも。休憩時間に癒しを求めて「にこり」に会いに来られます

オンラインドッグセラピーのこと

そうして続けてきた活動も、新型コロナウィルス感染拡大により、子どもたちを訪問することができなくなってしまいました。病院内ではすべてのイベントの中止とご家族の面会規制が続き、子どもたちも強いストレスを感じていると聞きます。

そこで始まったのが、「オンラインドッグセラピー」

オンライン会議、オンラインサロン、オンライン授業……、さまざまなことがオンラインで実施されているのだから、「ドッグセラピー」もできるはず!

でも実際は「オンラインでの交流を通して子どもたちを元気づけたい!」と思う反面、画面上での交流、子どもたちの反応、さまざまな不安を抱えながらのスタートでした。

画像: 心がけていることは「双方向のコミュニケーション」。「ワンちゃんの声が聞きたい!」という子どもたちのリクエストに応えられるのは「オンライン」ならでは

心がけていることは「双方向のコミュニケーション」。「ワンちゃんの声が聞きたい!」という子どもたちのリクエストに応えられるのは「オンライン」ならでは

最初は手探りで始まったオンラインドッグセラピー。

回を重ねるごとに「動くものを見る・画面の向こうから自分の名前を呼ばれる」など、私たちには些細に思えることが、病院環境にいる子どもたちにとっては「当たり前」ではないということ、オンラインドッグセラピーを通して気づかされたこともたくさんあります。

画像: 病院のプレイルーム。大きなスクリーンにセラピードッグが映し出されます

病院のプレイルーム。大きなスクリーンにセラピードッグが映し出されます

次回は、大阪母子医療センターの医師・平山先生に、子どもたちとセラピードッグの交流について紹介していただきます。


赤木 亜規子(あかぎ・あきこ)
日本レスキュー協会でセラピードッグと一緒にお仕事しています。
https://www.japan-rescue.com/
インスタグラム:@japanrescue



This article is a sponsored article by
''.

No Notification