頭痛持ちになったら、目や喉にも不調が……。
なかしま:先生は頭痛と漢方、どちらも専門でいらっしゃいます。両方って、とても珍しいですよね。
來村:まだ少ないですけど、今後増えてほしいと思っています。最新の西洋医学に漢方をミックスさせることで、より患者さんに適した治療ができるからです。西洋医学は頭痛にフォーカスしますが、東洋医学は体全体を整えて改善を目指します。頭痛の患者さんはたいてい他の症状も併発していて、そっちがよくなると頭痛も緩和することが多い。だから漢方の有用性は高いと感じています。
なかしま:頭痛以外の症状は私もあります。頭痛持ちになってから目などにも不調が出始めました。最近、頭痛はおさまっていますが、喉がつまるようになり飲み込みづらさや息切れがあって。それを脳神経外科の先生に話したら、『気のせいです』と一蹴されて、なんだかショックでした。
來村:それはたしかに「気のせい」ですね。といっても、その先生が言った意味とは違います。漢方では『気・血・水』がバランスよく巡る状態が健康と考えますが、気の巡りが滞ると、喉や胸のつまりとして現れるのです。おそらく、頭痛のつらさによって交感神経が過活性になり、体の緊張状態が続いていることが要因かと。
なかしま:そうなんですね。先生ならどんな漢方薬を処方しますか?
來村:ストレスを抑えながら気の巡りを促してあげるといいので、どちらにも作用する抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)かな。ストレスがやわらぐと目の不調もラクになりますよ。あとは便秘で出口がつまることも喉のつまりにつながるので、腸活もおすすめです。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
神経の高ぶりを抑え、食欲不振や吐き気を防ぐ漢方薬。脳の血流を促す働きもある。
話題のCBDオイルは頭痛にも効く?
なかしま:自分でできるケアとして食事を見直したりしているのですが、先生が監修された頭痛に効くサプリも飲んでいます。
來村:そうでしたか、ありがとうございます(笑)。『KAMRO』というサプリで、頭痛をやわらげる効果が報告されているビタミンB2やマグネシウム、大豆イソフラボンなどをバランスよく配合しています。なかしまさんの頭痛緩和にもつながるといいのですが……。
なかしま:ふだんのメンテナンスに、もうひとつ試したいものがあって。医療用大麻の成分を使った「CBDオイル」はご存じですか? 私は頭痛になるとカッカして気が上りやすいので、鎮静作用もあるCBDオイルが効くんじゃないかと漢方薬局の方にすすめられたんです。
來村:麻(ヘンプ)から抽出されるカンナビジオールを含むオイルのことですね。僕は患者さんに処方したことはないけれど、使っている先生は頭痛をやわらげる効果があるといっていました。漢方でも麻の種を使うものがあるし、きちんとしたルートで販売されているものなら試してみてもいいと思いますよ。
なかしま:鎮痛剤と一緒には使えないとネットに書いてあったのですが、やっぱり併用は避けた方がいいですか?
來村:鎮痛剤の効果を落としてしまうのかもしれないですね。痛みが辛いときは鎮痛剤の方を優先したほうがいいと思います。もしいま飲んでいるお薬があって、CBDオイルを試したい場合は、まずは担当医の先生に相談してみてください。ちなみに、CBDオイルと漢方の併用は問題ないと思います。
頭痛持ちの人は天才肌なんです!
來村:ところで、なかしまさんは睡眠をしっかりとっていますか? 僕の患者さんでも、毎晩遅くまで韓国ドラマを見ていた人が夜更かしをやめたら薬が必要なくなった。夜にスマートフォンを見る時間を減らしたら痛みがラクになった。そういう例がたくさんあるんですよ。
なかしま:ちょっと耳が痛いです……。頭痛がひどいときはパソコンもスマホも見られないですけど、おさまるとついつい見てしまうんですよね。見すぎない方がいいとわかっているんですが、情報を集めるのが好きな性分というか。
來村:命にかかわらない頭痛は、脳の疲れと興奮がおもな原因。現代人は脳を酷使しすぎて頭痛が増えているんです。とくに頭痛持ちの人は情報をとる能力がもともと高いので、意識的に脳を休息させてあげないとダメですよ。
なかしま:情報をとる能力ですか。
來村:脳の感度が高いといったらいいかな。頭痛持ちの人は普通の人が気づかないようなことまでキャッチしやすいんです。歴史上の人物でも頭痛持ちは多く、卑弥呼や上杉謙信もそうだといわれています。彼らは気圧の変化をいち早く察知し、先々の天気を予見して田植えや戦に備え、成功を収めました。ほかは芥川龍之介や樋口一葉なども著書で自分の頭痛に触れています。天才肌ゆえの頭痛ともいえるんです。
なかしま:自分はあてはまらない気がしますが……(笑)、とりあえずスマホの見過ぎは注意します!
〈取材・文/熊坂麻美 撮影/星 亘〉
なかしま しほ
さまざまな飲食店勤務を経て、料理家として独立。2006年、東京・国立に、「foodmood」をオープンし、体にやさしい素材を使ったお菓子が評判に。『たのしいあんこの本』(主婦と生活社)など著書多数。
來村 昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』(あかし出版)など。
『天然生活』2023年2月号の「なかしましほさんが医師に聞く 頭痛との上手なつきあい方」では、なかしまさんと來村先生の対談、頭痛の主な種類とおすすめの漢方、頭痛予防におすすめの食材など、さらに詳しい内容を掲載しています。