味噌の薬膳的効能ついて
味噌は栄養価の高い、素晴らしい発酵食品です。
良質のたんぱく質をはじめ、老化防止に役立つビタミンE、コレステロールを下げるレシチンやサポニン。女性ホルモンのような働きをするイソフラボンのほか、麹菌や酵母菌、乳酸菌などの微生物も豊富に含まれ、腸内環境を整えるのに役立ちます。
体を温める性質で、とくに胃腸を温めて活性化したり、毒素などを解毒したりする作用にも優れています。
【発酵料理】味噌のつくり方
味噌をつくり始めて20年ぐらいになります。一度つくったらあまりのおいしさに、毎年つくらずにはいられなくなりました。
大豆をつぶして麹と塩を混ぜるだけと、つくり方もいたってシンプル。
麹の種類によって米麹なら米味噌、麦麹なら麦味噌、豆麹なら豆味噌になります。大豆は一般的にゆでることが多いと思いますが、私は蒸してつくっています。そのほうが大豆のうま味や甘味が残るので、より濃厚で味わい深い味噌になります。
塩も好きなものを選べますし、手づくりならまさに自分だけの手前味噌ができるわけです。
材料(米味噌仕上がり約1kgの場合)
●乾燥大豆 | 250g |
●米麴 | 450g |
●塩 | 110g |
つくり方
1 大きな容器に大豆と少量の水を入れ、こすりあわすようによく洗って汚れを落とす。
2 大きめの容器に大豆と、大豆の重量の4倍くらいの水を入れ、ひと晩つける。水を吸うと2.2~2.3倍の重量になり、かさも増えるため、できるだけ大きな容器を用意する。
3 大豆はざるなどにあげて水をきる。大豆を漬けておいた水はあとで使うので取り分けておく。蒸気のあがった蒸し器で大豆がやわらかくなるまで2〜3時間蒸す。小指と親指で軽く押してつぶれるぐらいまでやわらかくなればOK。
4 米麹を大きめの鍋やボウルに入れ、塩を加えてよく混ぜる。
5 大豆の粗熱が取れたら、すり鉢やビニール袋などに入れ、すりこぎやめん棒、手でしっかりつぶす。大豆の粒がなくなって、ねっとりしてきたらOK。大豆をゆでた場合、ざるにあげて水けをきってからつぶす。ゆで汁はあとで使うので取り分けておく。
6 5に4を加え、全体にまんべんなく練り込むように混ぜる。水分が足りなくて固いときは、取り分けていた水(蒸した場合は、大豆をつけていた水を一度沸かして冷ます)を少しずつ加えて混ぜる。耳たぶくらいのやわらかさになったらOK。
7 6をひとつかみ手に取り、丸めて味噌玉をつくる。保存容器の内側を焼酎や消毒用アルコールで拭き、味噌玉を投げ入れる。一段投げ入れたら、空気を抜くように手でしっかり押さえて平らにする。
8 すべてのみそ玉を投げ入れたら、隅までしっかり詰めて空気を抜くように平らにならす。カビ防止のために、表面に薄く塩(分量外)をまぶし、ラップで表面をきっちり覆って中蓋(平皿などでよい)をする。ラップの周囲に酒粕を敷き詰めて空気が入らないようにする。できあがり重量の2〜3割の重しをのせてふたをする。
[保存・熟成]
味噌は、直射日光や風雨の当たらない、できるだけ温度と湿度の変化の少ない場所で保管してください。熱がこもる場所やガス台やエアコンの近くは避けてください。とくに、仕込んだばかりの味噌は涼しいところで保管しましょう。味噌の麹は、暑い夏を越すことで発酵熟成が活発になり、うま味も増します。夏でも冷蔵庫に入れずに常温で保管してください。
[食べごろ]
仕込みから10カ月ぐらいから食べられますが、おすすめは1年おくこと。塩気がマイルドになってうま味も高まります。その後も微生物は活動を続け、また酸素の影響による品質変化もあるため、仕上がった味噌は小分けにして、冷蔵庫など低温で保管してください。
味噌づくりの豆知識
大豆をゆでる場合、蒸す場合の違い
大豆には、味噌を茶色く変色させるたんぱく質が含まれています(メイラード反応)。この成分は水溶性のため、水の中に溶け出します。ゆでた場合、色は白くきれいで、麹の甘さが引き立ちますが、水溶性のタンパク質やうま味成分も流れてしまうため、味噌の風味やうま味は薄れます。一方、大豆を蒸すと、たんぱく質が大豆の中に残るため、仕上がりの色は濃くなりますが、うま味や栄養がぎゅっと詰まった味の強い味噌になります。
酒粕について
味噌ができ上がったら、酒粕は取り除きます。味が変わるので絶対に混ぜ込まないこと。取り取り除いた酒粕は、酒粕汁や味噌粕漬けなどに利用できます。酒粕は板粕にするとはがしやすくておすすめです。
保管場所について
仕込んだばかりの味噌には雑多な微生物が含まれています。気温の低いところに置くことで、この微生物の増殖を抑制し、反対に好塩性の乳酸菌の活動を促します。乳酸菌が活発になると、味噌の中に乳酸が生成されて全体のpHが下がり、雑多な微生物の活動が抑えられるからです。
〈料理/山田奈美 イラスト/しらいしののこ〉
山田奈美(やまだ・なみ)
「東京薬膳研究所」の武鈴子氏に師事。東洋医学や薬膳理論、食養生について学ぶ。神奈川県葉山町のアトリエ「古家1681」にて薬膳の料理教室や発酵食品の教室を開催。季節の食養生を伝える活動を行う。著書に『季節のお漬けもの』、『菌とともに生きる 発酵暮らし』(ともに家の光協会)などがある。
インスタグラム:@nami_yamada.tabegoto
YouTube:「山田奈美の発酵暮らし」