• 薬膳・発酵料理家の山田奈美さんに、2月におすすめの発酵料理と保存食のレシピを教えていただきました。腸内環境を改善し、免疫力向上の効果が期待できる発酵食品が注目されています。おうちで過ごす時間が増え、保存食づくりを始める人も。今回紹介するのは、「味噌」です。

    味噌の薬膳的効能ついて

    味噌は栄養価の高い、素晴らしい発酵食品です。

    良質のたんぱく質をはじめ、老化防止に役立つビタミンE、コレステロールを下げるレシチンやサポニン。女性ホルモンのような働きをするイソフラボンのほか、麹菌や酵母菌、乳酸菌などの微生物も豊富に含まれ、腸内環境を整えるのに役立ちます。

    体を温める性質で、とくに胃腸を温めて活性化したり、毒素などを解毒したりする作用にも優れています。

    【発酵料理】味噌のつくり方

    画像: 【発酵料理】味噌のつくり方

    味噌をつくり始めて20年ぐらいになります。一度つくったらあまりのおいしさに、毎年つくらずにはいられなくなりました。

    大豆をつぶして麹と塩を混ぜるだけと、つくり方もいたってシンプル。

    麹の種類によって米麹なら米味噌、麦麹なら麦味噌、豆麹なら豆味噌になります。大豆は一般的にゆでることが多いと思いますが、私は蒸してつくっています。そのほうが大豆のうま味や甘味が残るので、より濃厚で味わい深い味噌になります。

    塩も好きなものを選べますし、手づくりならまさに自分だけの手前味噌ができるわけです。

    材料(米味噌仕上がり約1kgの場合)

    ●乾燥大豆250g
    ●米麴450g
    ●塩110g

    つくり方

     大きな容器に大豆と少量の水を入れ、こすりあわすようによく洗って汚れを落とす。

     大きめの容器に大豆と、大豆の重量の4倍くらいの水を入れ、ひと晩つける。水を吸うと2.2~2.3倍の重量になり、かさも増えるため、できるだけ大きな容器を用意する。

     大豆はざるなどにあげて水をきる。大豆を漬けておいた水はあとで使うので取り分けておく。蒸気のあがった蒸し器で大豆がやわらかくなるまで2〜3時間蒸す。小指と親指で軽く押してつぶれるぐらいまでやわらかくなればOK。

    画像: ゆでる場合は、大豆をつけた水ごと強火にかけ、白いあくが出てきたら取る。沸騰したら弱火にし、アクを取りながら1〜2時間ゆでる。大豆が水から出ないように、ときどき水を足しながらたっぷりの水をキープする

    ゆでる場合は、大豆をつけた水ごと強火にかけ、白いあくが出てきたら取る。沸騰したら弱火にし、アクを取りながら1〜2時間ゆでる。大豆が水から出ないように、ときどき水を足しながらたっぷりの水をキープする

     米麹を大きめの鍋やボウルに入れ、塩を加えてよく混ぜる。

    画像: 米麴のかたまりがあればほぐし、むらが出ないように混ぜる

    米麴のかたまりがあればほぐし、むらが出ないように混ぜる

     大豆の粗熱が取れたら、すり鉢やビニール袋などに入れ、すりこぎやめん棒、手でしっかりつぶす。大豆の粒がなくなって、ねっとりしてきたらOK。大豆をゆでた場合、ざるにあげて水けをきってからつぶす。ゆで汁はあとで使うので取り分けておく。

    画像: 袋の角が破れて大豆が飛び出やすいので注意

    袋の角が破れて大豆が飛び出やすいので注意

     を加え、全体にまんべんなく練り込むように混ぜる。水分が足りなくて固いときは、取り分けていた水(蒸した場合は、大豆をつけていた水を一度沸かして冷ます)を少しずつ加えて混ぜる。耳たぶくらいのやわらかさになったらOK。

     をひとつかみ手に取り、丸めて味噌玉をつくる。保存容器の内側を焼酎や消毒用アルコールで拭き、味噌玉を投げ入れる。一段投げ入れたら、空気を抜くように手でしっかり押さえて平らにする。

    画像: ぎゅっぎゅっと空気を抜きながら丸める。投げ入れることでさらに空気が抜ける

    ぎゅっぎゅっと空気を抜きながら丸める。投げ入れることでさらに空気が抜ける

     すべてのみそ玉を投げ入れたら、隅までしっかり詰めて空気を抜くように平らにならす。カビ防止のために、表面に薄く塩(分量外)をまぶし、ラップで表面をきっちり覆って中蓋(平皿などでよい)をする。ラップの周囲に酒粕を敷き詰めて空気が入らないようにする。できあがり重量の2〜3割の重しをのせてふたをする。

    画像: 重石はペットボトルや本、塩袋などで代用しても。ラップの代わりにビワやハラン、竹皮など、抗菌作用のある大きな葉を表面にかぶせるのもおすすめ

    重石はペットボトルや本、塩袋などで代用しても。ラップの代わりにビワやハラン、竹皮など、抗菌作用のある大きな葉を表面にかぶせるのもおすすめ

    [保存・熟成]
    味噌は、直射日光や風雨の当たらない、できるだけ温度と湿度の変化の少ない場所で保管してください。熱がこもる場所やガス台やエアコンの近くは避けてください。とくに、仕込んだばかりの味噌は涼しいところで保管しましょう。味噌の麹は、暑い夏を越すことで発酵熟成が活発になり、うま味も増します。夏でも冷蔵庫に入れずに常温で保管してください。

    [食べごろ]
    仕込みから10カ月ぐらいから食べられますが、おすすめは1年おくこと。塩気がマイルドになってうま味も高まります。その後も微生物は活動を続け、また酸素の影響による品質変化もあるため、仕上がった味噌は小分けにして、冷蔵庫など低温で保管してください。

    味噌づくりの豆知識
    大豆をゆでる場合、蒸す場合の違い
    大豆には、味噌を茶色く変色させるたんぱく質が含まれています(メイラード反応)。この成分は水溶性のため、水の中に溶け出します。ゆでた場合、色は白くきれいで、麹の甘さが引き立ちますが、水溶性のタンパク質やうま味成分も流れてしまうため、味噌の風味やうま味は薄れます。一方、大豆を蒸すと、たんぱく質が大豆の中に残るため、仕上がりの色は濃くなりますが、うま味や栄養がぎゅっと詰まった味の強い味噌になります。

    酒粕について
    味噌ができ上がったら、酒粕は取り除きます。味が変わるので絶対に混ぜ込まないこと。取り取り除いた酒粕は、酒粕汁や味噌粕漬けなどに利用できます。酒粕は板粕にするとはがしやすくておすすめです。

    保管場所について
    仕込んだばかりの味噌には雑多な微生物が含まれています。気温の低いところに置くことで、この微生物の増殖を抑制し、反対に好塩性の乳酸菌の活動を促します。乳酸菌が活発になると、味噌の中に乳酸が生成されて全体のpHが下がり、雑多な微生物の活動が抑えられるからです。



    〈料理/山田奈美 イラスト/しらいしののこ〉

    山田奈美(やまだ・なみ)

    「東京薬膳研究所」の武鈴子氏に師事。東洋医学や薬膳理論、食養生について学ぶ。神奈川県葉山町のアトリエ「古家1681」にて薬膳の料理教室や発酵食品の教室を開催。季節の食養生を伝える活動を行う。著書に『季節のお漬けもの』、『菌とともに生きる 発酵暮らし』(ともに家の光協会)などがある。



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