(『天然生活』2021年7月号掲載)
梅は一度に大量に仕込まなくても大丈夫。まずは半量からでも
「長野に遅い春が来て、庭の梅の花が咲くころになると、『今年はどのくらい実ってくれるかしら』と、そわそわ。徐々に心は、梅仕事の準備に向かいます」
そう話すのは、横山タカ子さん。
一年を通してさまざまな保存食づくりを実践していますが、なかでも梅は「暮らしに欠かすことのできない特別な存在」といいます。
約30年前に考案した「さしす漬け」は、おいしさと手軽さで多くの人に愛される人気レシピに。
「手順はとてもシンプルなうえ、砂糖、塩にお酢の防腐効果も加わることで失敗知らず。漬け込んだあとの梅酢=さしすも、酢飯やピクルスはもちろん調味料としても幅広く役立ってくれますよ」
甘い香りに包まれる時間も楽しい、梅仕事。
「一度に大量に仕込まなくても大丈夫。まずは半量からでもお試しください」
伝えたい、梅仕事のコツとポイント
1.梅干しには完熟梅を
ふっくらとした梅干しに仕上げるためには、完熟の梅を漬けるのが一番。しっかりと色づいた、香りのよいものを選びます。「あと一歩のときは、ざるにあけて日陰に置いて。遅くても3日以内に仕込みましょう」
2.調味料選びも大切に
せっかくの梅仕事は、調味料にもこだわりたいもの。「塩や砂糖なら精製度が高すぎないもの、酢やみりんは伝統的な製法を受け継いでいるものを選んでいます。よい調味料で、仕上がりもぐっと変わります」
3.消毒は「口に入れられるもの」で
容器は洗ったあと天日でからりと乾かし、酢か35度以上のアルコールでふき清めるのが横山さん流。「消毒とはいえ、口に入っても安心なものを使うことを基本に。私は40年来、この方法を続けています」
4.オーブン干しも有効です
三日三晩、天日と夜露にさらす「土用干し」は天気が心配ですが……。「雨に当たったら梅酢で実を洗い、干しなおせば大丈夫。いざというときの仕上げは100℃のオーブンで1時間の『オーブン干し』も有効です」
「梅の下処理」4ステップ
梅をやさしく洗って水分をふき取り、ヘタを取るだけと簡単。傷んだ梅も、軽度ならその部分を切り落として生かします。「新鮮な梅が水をはじく姿も美しく、毎回ハッとさせられます。一年一度の恵みに幸せを感じるひと時です」
1.洗う
ボウルに入れ、流水で汚れを落とします。傷があれば包丁で取り除きます。
2.水をきる
ざるにあげて水をよくきります。
3.ふく
清潔なふきんを使い、軸の中までしっかりと水分をふき取ります。梅を仕込む際に、念のためふきながら容器に入れても。
4.なり口(ヘタ)を取る
竹串などの先端を使い、ヘタを取り除きます。その後、くぼみの水もふき取って。
「冷凍梅」もおすすめ
下処理した梅をチャック付き袋などに入れて冷凍しておけば、思い立ったときすぐ梅仕事ができて便利です。
〈料理/横山タカ子 写真/山浦剛典 取材・文/玉木美企子〉
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県生まれ。長野の食文化を研究すべく、各地での聞き取りも長年重ねている。梅仕事歴は40年以上で、「さしす漬け」が好評。著書に『私の梅仕事』(扶桑社)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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料理家の横山タカ子さんが40年続けてきた梅仕事の集大成。代表的な、砂糖、塩、酢で漬ける梅干しは、失敗なくつくれるので、はじめての方にもおすすめです。
ほかにも、シロップ、梅酒、梅肉エキスなど、幅広く紹介。さらに、さしすの梅干しを使った料理、副産物の梅酢(さしす)の料理などの展開料理も充実。
「梅ひと粒はその日の難逃れ」といわれる梅。「生きる知恵と力の詰まった日本の宝」である梅仕事の数々を紹介します。
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