梅の薬膳的効能ついて
梅は中国が原産で、奈良時代に日本に伝えられたとされますが、当時の主役は梅酢。梅酢は消毒や胃腸病などの病気治療のための漢方薬でした。
梅干しはこの梅酢を作ったあとの副産物で、当初は黒焼きにしたものを、腹痛の治癒や虫下し、解熱、腸内の消毒を目的に用いていたとされます。
薬膳では体を温め、“肝腎要(かんじんかなめ)”である肝と腎を補う食材とされます。すぐれた殺菌・解毒作用や疲労回復作用があるほか、消化器官を刺激して唾液や胃液の分泌を促進して食欲を増進させたり、消化をスムーズにする働きがあります。
【保存料理】梅干しのつくり方
梅干し名人だった祖母の味を受け継いで約20年、毎年欠かさずたくさんの梅を漬けています。
「梅はその日の難逃れ」といわれるように、古くは病気や災難から身を守るための万能薬とされてきました。わが家にとっても梅干しは、ぬか漬けや味噌汁と並ぶ、家族の健康を支える三種の神器のひとつです。
疲れているときや外食をしたときに、梅干しを口にすると体のバランスが整う気がします。風邪のひき始めで寒気がするときにも、梅干しとしょうがを合わせた梅しょう番茶を飲めば、風邪の邪気を吹き飛ばすことができます。
昔から「体調が悪いときに梅を漬けるとカビが生えやすい」といういい伝えがありますから、ぜひ体調のよいときに漬けてみてくださいね。
今回は塩で漬けたあとに赤じそに漬けるつくり方を紹介していますが、塩だけで漬け込む「白梅干し」にしても。赤じそに漬ける工程を省き、土用干しをすればでき上がります。
材料(つくりやすい分量)
● 完熟梅 | 1kg |
● 塩 | 120〜180g(梅の重量の12〜18%) |
● 赤じそ | 200g(梅の重量の約20%) |
● しそ用の塩 | 40g(赤じその重量の約20%) |
つくり方
<塩に漬ける>
1 梅は水でやさしく洗い、ふきんなどでていねいに水けをふき取る。
2 梅を傷つけないように、なり口(へた)をていねいに竹串で取り除く。
3 清潔な保存容器の底に塩を薄くふり入れ、2を並べ入れ、塩をふる。同様に梅と塩を交互に入れる。上の方は塩を多めにし、すべての梅を並べたら表面を塩で覆う。
4 梅の重量と同じくらいの重しをのせてふたをし、冷暗所で保管する。
5 2〜3日で水分(白梅酢)が上がってくる。4〜5日で梅全体がつかっているか確認し、梅酢がなかなか上がらない場合は、塩を追加するか重しを重くする。
<赤じそに漬ける>
6 6月末から7月初旬に赤じそが出回ったら、しその葉を摘み、水できれいに洗い、ざるにあげて水けをきる。
7 ボウルにしその葉を入れ、塩1/3量を加え、手でしっかりもむ。あくが出てきたら、よくしぼってあくを捨てる。同様の作業をあと2回繰り返す。
8 5の保存容器から白梅酢を大さじ2取り出して7に加え、紫紅色の汁が出るまでよくもむ(赤梅酢)。
9 5の梅に、8のしそをほぐしながら汁ごとのせる。
10 しそが白梅酢につかる程度の重しをのせ、ふたをして、約1カ月冷暗所に置いておく。
<土用干しをする>
11 梅雨が明け(夏の土用のころ・7月下旬から8月上旬)、晴天が続きそうな日を選び、ざるに梅としそを並べ、天日で3日干す。1日1回上下を返す。
12 干し上がったら赤梅酢の入った保存容器に入れる。または、赤梅酢と梅干しはそれぞれ煮沸消毒した別々の保存容器に入れて保存する。
※保存期間はとくになし(冷暗所で保管)。
※干したしそはミキサーにかけたり、手でもみしごいたり、細かく刻んだりすれば、ゆかりになる。
※最後に梅酢に戻す際、はちみつなどを加えるとよりマイルドな仕上がりに。
〈料理/山田奈美 イラスト/しらいしののこ〉
山田奈美(やまだ・なみ)
「東京薬膳研究所」の武鈴子氏に師事。東洋医学や薬膳理論、食養生について学ぶ。神奈川県葉山町のアトリエ「古家1681」にて薬膳の料理教室や発酵食品の教室を開催。季節の食養生を伝える活動を行う。著書に『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』(ナツメ社)、『菌とともに生きる 発酵暮らし』(ともに家の光協会)、『二十四節気のお味噌汁』(WAVE出版)などがある。
インスタグラム:@nami_yamada.tabegoto
YouTube:「山田奈美の発酵暮らし」