(『アメリカ菓子図鑑 お菓子の由来と作り方』(誠文堂新光社)より)
シロップをたっぷり注いで焼き上げる、素朴なりんごのお菓子
果物をパイ生地やビスケット生地で包み、ゆでたり焼いたりするデザートのことを「フルーツダンプリング」といいます。
アップルダンプリングは、シナモンシュガーを詰めたりんごをビスケット生地で包み、シロップをかけて焼き上げるお菓子で、特にアメリカ北東部・ペンシルバニア州の食文化として知られ、朝食やデザートに食されてきました。
りんごのほのかな酸味と、シナモンシュガーの甘味がバランスよく、どこか懐かしさを感じさせるような、素朴な味わいです。
アップルダンプリングのつくり方
焼いている途中にシロップをすくって生地の上から回しかけると、全体に甘さがしみ込み、より家庭的な味わいに。
きれいな形に整えるよりも、手づくりらしくラフに包むと、ほっこりと心温まる趣に仕上がります。
材料(直径12cmの耐熱皿2個分)
〈生地〉 | |
● A | |
・薄力粉 | 65g |
・ベーキングパウダー | 小さじ1/3 |
・塩 | ひとつまみ |
● バター(食塩不使用。5mm角に切り、冷やす) | 35g |
● 牛乳 | 20g |
● リンゴ(「ふじ」など) | 小1個 |
● B | |
・ブラウンシュガー、またはきび砂糖 | 小さじ1/2 |
・シナモンパウダー | ひとつまみ |
〈シロップ〉 | |
● バター(食塩不使用) | 5g |
● ブラウンシュガー、またはきび砂糖 | 25g |
● シナモンパウダー | ふたつまみ |
● 水 | 100g |
● シナモンスティック(好みで) | 2本 |
つくり方
1 〈生地〉 ボウルにAをふるい入れる。バターを加えて指先で潰し、両手をすり合わせるようにしてサラサラの砂状にする。中央をくぼませ、牛乳を加えてカードで切るように混ぜる。2等分し、それぞれラップに挟み、めん棒で16cm角にのばし、冷蔵庫で30分以上休ませる。
2 リンゴは横半分に切り皮をむき、芯抜きやスプーンで芯を除く。1を取り出し、それぞれの生地の中央にリンゴの断面を底にしてのせ、Bをふる。生地でリンゴをしっかり包み、端は芯を除いた穴にたくし込む。バター(分量外)を塗った耐熱皿にのせる。
3 〈シロップ〉 材料をすべて小鍋に入れて中火にかける。ブラウンシュガーとバターが溶けて沸騰したら火からおろし、2のリンゴの2/3の高さまでそっと注ぐ(シロップは使い切らなくてもよい)。180℃に予熱したオーブンで35分焼く。生地が濃いきつね色になり、リンゴに竹串がすっと通れば焼き上がり。
ポイント
好みでシナモンスティックを添え、温かいうちにバニラアイスクリームや、ゆるく泡立てた無糖の生クリームを添えて食べる。
※ 本記事は『アメリカ菓子図鑑 お菓子の由来と作り方』(誠文堂新光社)からの抜粋です
<レシピ・撮影・スタイリング/原 亜樹子>
原 亜樹子(はら・あきこ)
菓子文化研究家。米国高校へ留学。日米の高校を卒業後、東京外国語大学へ進学し、食をテーマに文化人類学を学ぶ。国家公務員として特許庁で勤めた後、菓子文化研究家へ転身。『アメリカンクッキー』(誠文堂新光社)、『アメリカ郷土菓子』(パルコ出版)、『シートケーキとレイヤーケーキ』(東京書籍)ほか、アメリカの食に関する著書多数。
インスタグラム:@exploring_american_food
ウェブサイト:https://haraakiko.com/
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自然と歴史と人々の暮らしによって育まれた、郷土色豊かでおいしく楽しい115品のアメリカ菓子のレシピとその物語。広大で自然豊かな国土から生み出される豊かな食材に加え、時代ごとに各地域に住んできた人々の影響を大きく受けて発展してきたアメリカの菓子文化。
ヨーロッパ人の到達前から各地域に住んできた人々によって作られてきた伝統的な菓子、入植してきた移民によってもたらされた世界各国の郷土菓子、また南北戦争以前の南部の奴隷制度によるアフリカ由来の菓子。これらがときに混じり合い、またそれぞれの形を保ったまま、現代のアメリカ菓子の礎となってきました。
本書では、そんなアメリカ菓子の特徴や作り方(レシピ)を、菓子文化研究家として多数のアメリカの食に関する著書を持つ原 亜樹子さんが解説。
アメリカ合衆国を6つの地域に分類し、さらに細かく50の州に分け、各州の郷土菓子や名物菓子を、その背景となる歴史や食文化を踏まえて紹介します。