• 日本には心惹かれる器をつくる作家が大勢います。作家と私たちの暮らしをそっとつないでくれるのが器屋さんです。東京・北千住にある「うつわ萬器(うつわばんき)」は、生活を彩る上質な器を揃える器屋さん。店主の久保田真弓さんに、お薦めの作家をこっそり教えてもらいました。

    暮らしをほんのり格上げする器を

    5路線が乗り入れする北千住駅周辺は、開発が進みつつも、新旧が融合する魅力あふれる街。もとは宿場町の中心だった商店街、宿場町通りにあるのが、今回紹介する器屋さん「うつわ萬器 北千住店」です。

    本店は千葉県柏市にあり、本店も北千住店も取り扱う作家は同じ。
    「個性の強いものではなく、食卓に置いたときに、ほんの少し洗練された感じがでる器を選ぶようにしています」と話すのは、店主の久保田真弓さんです。

    画像: 活気ある商店街にあり、幅広い年代の人が店に訪れます

    活気ある商店街にあり、幅広い年代の人が店に訪れます

    画像: 鉢ふたつは一柳京子さん、焼き締めのポットとマグは、上野剛児さんのもの

    鉢ふたつは一柳京子さん、焼き締めのポットとマグは、上野剛児さんのもの

    久保田さんはもともと食べることが大好き。“器によって料理が変わる”、そんな身近な経験を何度も経ることで、器への関心が深まっていったのだとか。

    「会社員時代は、器が趣味みたいな感じでしたね。器屋に通い、作家の器を手に入れるようになったのですが、量産品にはない特別な刺激を、作家ものから感じて。つくり手というものの大切さに気づいたんです」

    そんな器への想いが、いつしか「食卓にまつわる仕事をしたい」という願望へ。奮起して、器屋をスタートさせたのが、30年ほど前のことでした。でも当時は、器専門店は敷居が高いと思われ、足を運ぶ人は限定的。そこで考えたのが器の講習会でした。

    画像: ユーモラスな表情の動物が描かれたスリップウェアは、中川紀夫さんの作品

    ユーモラスな表情の動物が描かれたスリップウェアは、中川紀夫さんの作品

    画像: ガラス作品も充実。並ぶのは、ヤマノネ硝子、荒川尚也さんらのもの

    ガラス作品も充実。並ぶのは、ヤマノネ硝子、荒川尚也さんらのもの

    講習会は、レクチャー数回と食事会で構成。食事会は料理屋で開催し、店から運んだ作家の器に、料理を盛りつけてもらいます。久保田さんが器使いや作家について話をし、おいしいものを囲む。そんなスタイルが人気を呼び、地元に少しずつ浸透していきました。

    画像: 在職13年のベテランスタッフ、和田さん。気づかいに満ちた接客も、「うつわ萬器」のよさ

    在職13年のベテランスタッフ、和田さん。気づかいに満ちた接客も、「うつわ萬器」のよさ

    現在はもう講習会はしていませんが、食事会だけを継続しているそう。
    「器を手に入れた後も、家で再現していただければと思い、あえて家庭で取り入れやすいメニューにしていただいています」と久保田さん。プロの料理人による盛りつけの技を見て楽しめる、器との出合いの場になっています。

    確かな技術を持つ、つくり手の器を

    そんな久保田さんに、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。

    まずは、佐賀県唐津市とアメリカ合衆国メイン州で半年ずつ作陶する、中里花子(なかざと・はなこ)さんの器です。

    画像: 中里さんの器は、無国籍な雰囲気が魅力。こちらは代表作、チャクラシリーズの「チャクラパスタ」

    中里さんの器は、無国籍な雰囲気が魅力。こちらは代表作、チャクラシリーズの「チャクラパスタ」

    「花子さんは、唐津焼きの名家の生まれですが、初めから作家を志したわけではなくて。アメリカに留学し、その過程で食や器への強い想いが芽生え、帰国後にお父さまの中里 隆さんに師事されました。

    感覚的にろくろを回されますが、技術がとても高く、天性的な才能を感じます。こちらの『チャクラパスタ』は、高台に高さのある形がおもしろく、春巻きだったり、カットした酵母パンなんかを、ラフに盛りつけても様になりますよ。

    画像: やわらかな水色の釉薬と、美しいたわみが印象的な「ダブルリップボール」

    やわらかな水色の釉薬と、美しいたわみが印象的な「ダブルリップボール」

    こちらは“ダブルリップ”という定番で、口縁が二重になったもの。見る角度で景色が違い、普段のおかずも洒落た感じに見せてくれる、頼れる器ですね。花子さんはおおらかで、エネルギッシュな方。そんな花子さんのパワーが、どの作品にも宿っているように感じます」

    お次は、岐阜県多治見市で作陶する、榎本 泉(えのもと・いずみ)さんの器です。

    画像: 左が「伊羅保(いらぼ)カップ」、右が「赤絵カップ」。どちらも軽すぎず重すぎずで、扱いやすい

    左が「伊羅保(いらぼ)カップ」、右が「赤絵カップ」。どちらも軽すぎず重すぎずで、扱いやすい

    「榎本さんは、土の持ち味を生かした器をつくるのに、とても長けた方。このカップは手びねりで成形していますが、手びねりとは思えない薄さで、腕の確かさを感じます。

    意図的にほんのりと指跡を残されていますが、それによって手の馴染みがすごくよくて。心をほぐしてくれるような、心地よさがありますね。『伊羅保カップ』は、伊羅保釉という釉薬が使われ、和紙のような独特の質感があります。

    画像: 「赤絵カップ」は、内側にも模様が。飲み終わった後の景色も楽しい

    「赤絵カップ」は、内側にも模様が。飲み終わった後の景色も楽しい

    『赤絵カップ』は、榎本さんなりの粉引きで、模様を描きこみすぎず、粉引きのよさを引き立てています。佇まいもいいですが、使い心地も抜群で、実際使ってみた後に、家族の分を買い足したり、贈答用に選ぶお客さんが多いですね」

    最後は、岡山県井原市で制作する、仁城逸景(にんじょう・いっけい)さんの器です。

    画像: 分業せず、木地づくりからすべてひとりで行う仁城さん。こちらは、濃い飴色が美しい「椀」

    分業せず、木地づくりからすべてひとりで行う仁城さん。こちらは、濃い飴色が美しい「椀」

    「仁城さんのお父様は、仁城義勝さんという有名な漆作家さんです。仁城家では、木を無駄にせず、木に無理をさせないというのがモットーで、製材から自分たちの手で行っています。過剰生産をせず、自分たちの生活が維持できる範囲でしか作品をつくりません。

    黒漆などは塗らず、生漆(きうるし)を何重にも塗り重ねていく手法をとっているので、普通の漆器とは違い、始めからうっすらと木目が透けて見えています。使うほどに艶みを帯び、木地の表情がさらにでてくるのですが、漆器といっても軽やかさのある不思議な器ですね。

    形もおおらかで、作為のなさが伝わってきて。椀のほかにも、麺鉢やプレートもつくられていますが、仁城さんの器に盛ると、料理が息をのむほど美しく見えます」

    画像: 愛らしい形のボウルは、河上智美さんのもの

    愛らしい形のボウルは、河上智美さんのもの

    画像: 上品な白漆のプレートとボウルは、大澤知美さんの作品

    上品な白漆のプレートとボウルは、大澤知美さんの作品

    久保田さんは、作家さんを選ぶとき、どんなことを大切にされているのでしょうか。

    「まずは、高い技術でつくられたものというのが、選ぶ際の基本にあります。それでいて、奇をてらわず、盛りつけたときに料理が格段によく見えるものですね。

    また、肌触りのよさや、重さのバランスなども含めてですが、実用性の高さも選ぶ際の大切なポイントです。私ひとりでは新しいつくり手に目が行き届かないので、スタッフにもどんどん提案してもらっていて。実際スタッフが見つけてきてくれた作家の器も並んでいます」

    画像: カップは、鹿児島で作陶する野口悦士さんのもの

    カップは、鹿児島で作陶する野口悦士さんのもの

    「技術の良し悪しを見る目は、骨董も含めいろんな器を見て触れることで、養ってきたように思いますが、作家さんに育てていただいた部分も大きいですね」と話す久保田さん。そんな店主が選ぶのは、実直な佇まいのなかにも洗練さをまとう、毎日に潤いを与えてくれる器たち。ぜひ訪れてみてください。

    ※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。

    画像: 確かな技術を持つ、つくり手の器を

    <撮影/星 亘 取材・文/諸根文奈>

    うつわ萬器 北千住店
    03-5284-8220
    10:00~19:00
    不定休 ※営業日はSNSにてお知らせしています
    東京都足立区千住4-18-11 宿場町通り
    最寄り駅:JR・東京メトロ・つくばエクスプレス「北千住駅」より徒歩6分ほど
    http://utuwa-banki.com/
    https://www.instagram.com/banki_fushi/
    ◆赤木明登さん(漆)の個展を開催予定(12月9日~12月25日)
    ◆謝恩セール(2024年1月17日~1月26日)



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