• 支え合い、認め合う大切なつながり。少数も大勢も、世代も血縁も、飛び超えて、新しい社会で自由に変容していく多様な家族の形。エッセイストで漫画家のしまおまほさんに、家族の物語を聞きました。

    自分に正直に、家族の幸せの形を追求したい
    家族構成:しまおまほさん、息子

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    高校の授業中にプリントの裏に描いていた落書きが評判を呼び、『女子高生ゴリコ』という漫画で漫画家デビューした、しまおまほさん。

    写真家の島尾伸三さん、潮田登久子さんを両親にもち、幼少期からの思い出や、家族について綴ったエッセイも人気です。

    しまおさんは2015年4月に息子の万史郎くんを出産しました。冬でも半袖、短パン姿がお気に入りで、家の中でも側転をしたり、でんぐり返りをしたりと、のびのび元気いっぱい。

    画像: ビーフンと焼きおにぎりでお昼ごはん。息子の万史郎くんは、保育園で給食が出る日は、もりもり野菜を食べるものの、家ではあんまり食べないそう。にんじんだけは好きで、「乾いているところが甘いから」なのだとか。好きな食べものは、牛丼とうな重と水餃子。水餃子は包むのを手伝ってくれることも

    ビーフンと焼きおにぎりでお昼ごはん。息子の万史郎くんは、保育園で給食が出る日は、もりもり野菜を食べるものの、家ではあんまり食べないそう。にんじんだけは好きで、「乾いているところが甘いから」なのだとか。好きな食べものは、牛丼とうな重と水餃子。水餃子は包むのを手伝ってくれることも

    いま、一番楽しいことは「保育園の友達と水鉄砲で遊ぶこと」という万史郎くんの父親は、ミュージシャンや漫画家として活躍する、かせきさいだぁさんです。実はしまおさんは、かせきさんと結婚はせずに、母となりました。

    違うからこそ、面白い。違うからこそ、難しい

    「昔から、いずれは結婚をして子どもを持つだろうなと思っていましたし、子どもができたとわかったときも結婚は意識していました。出演しているラジオ番組でも『入籍したらお知らせします』と発表したくらいです。でも、出産が近づくにつれ結婚するという考えに違和感が出てきて、ちょっと違うなあと思うようになり、しばらく先延ばしにしていました」

    しまおさんにとって家族とは、一枚岩になり、何もいわずとも同じ方向性の未来を思い描けることが理想。しかし、ふたりの間に、家族に対する価値観の違いを感じるようになったといいます。

    「彼からは考えがまったく重なる人間などいないといわれました。でも、私はぬぐえない違和感をもったまま結婚はできないと思ったんです」

    画像: イケアの子ども用調理器具。「ちょっとやらせて」とお手伝い

    イケアの子ども用調理器具。「ちょっとやらせて」とお手伝い

    万史郎くんを出産後、3カ月を実家で過ごしたしまおさんは、当初からの予定どおり、3人で暮らし始めました。子ども好きのかせきさんは万史郎くんの面倒をとてもよく見てくれ、お風呂に入れたり、ごはんを食べさせたりと、育児に協力的。しかし、一緒に暮らすうちに変化するかもしれないと期待していた自身の考え方は、結局、変わらず、歩み寄れなかったといいます。

    「そもそも、考えの違う人間同士だから面白いんですよね。すごく気が合う部分もあるし、一緒にいて楽しいんですよ。でも生まれ変わらない限り、価値観はなかなか変わらないということも実感しました」

    2017年に別居を決断し、半年ほど実家に身を寄せたあと、万史郎くんとのふたり暮らしを始めたのでした。

    別居という距離感が、いまの充実した暮らしに

    結婚しなかったことも、別居に至ったことも、それぞれの家族が見守ってくれたことはありがたかったといいます。

    「みんなを振り回している罪悪感がありましたが、お互いの家族が静観していてくれたことに本当に感謝しています。私の母からは、『あなたが結婚するような人だとは前から思っていなかった』といわれましたが」

    それでも友人や世間の目は気になったそう。別居について当たり障りのない話題しかできないことで、かえってメンタルが追い込まれてつらい時期を過ごしました。

    画像: 実家から持ってきた折り畳み机を食卓に

    実家から持ってきた折り畳み机を食卓に

    画像: 写真家の母、潮田登久子さんが使っていたもので、名前入り

    写真家の母、潮田登久子さんが使っていたもので、名前入り

    画像: 脚にはしまおさんが子どものころに描いた落書きが

    脚にはしまおさんが子どものころに描いた落書きが

    「後ろめたさを感じているわけじゃないし、自分を曲げたくないんだけれど、何か自分を正当化できる理由を探してしまう日々が続きました」

    転機になったのは万史郎くんの転園です。別居してからすぐの2018年6月から通い出したのは、子どもたちの人間力を育むことに重点を置いた保育園。野外活動を盛んに行うのびのびした保育を実践しています。友人の紹介で入園しました。そこでは親同士の関係が密だけれど、風通しはよく、気持ちがオープンになりました。

    「いきなり『別居してるんでしょ』と切り出されて、プライベートゾーンに入られるのは苦手なほうでしたが、腫れ物に触るような扱いをされるよりも、そのほうがよほど楽でした」

    週に2回の遠足をはじめとした野外保育では、親が先生の手伝いに行くことも多く、かせきさんも楽しんで関わっているといいます。同じクラスに事実婚のカップルがいたりと、この保育園のおかげで視野も広がりました。

    「彼は彼で、ママ友やパパ友と仲よくやっています。私は一緒に暮らしていたときより、いまのほうが共に協力して子育てできる、いい関係が築けていると思います」

    * * *


    <撮影/中垣美沙 取材・文/長谷川未緒>

    しまお・まほ 
    エッセイスト・漫画家。1978年生まれ。大学在学中に『女子高生ゴリコ』で漫画家デビュー。雑誌等でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのレギュラー出演などでも活躍。2015年に第1子を出産。著書に『家族って』(河出書房新社)など。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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