• 支え合い、認め合う大切なつながり。少数も大勢も、世代も血縁も、飛び超えて、新しい社会で自由に変容していく多様な家族の形。エッセイストで漫画家のしまおまほさんは、結婚はせずに出産、いまは息子とふたり暮らしです。息子のお父さんとは別居暮らしですが、何があっても子どもの親には変わりないのです。
    (『天然生活』2021年9月号掲載)

    いま、家族として思うこと

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    結婚はせずに出産、親子3人での同居を経て、息子とふたり暮らしという選択をしたしまおさんの家族への想い。

    画像: しまおさんと遊ぶ万史郎くん。保育園が休みの日には、近くの公園へ行き、穴を掘ったり、タイヤを転がしたりと、泥んこになってダイナミックな遊びをしている

    しまおさんと遊ぶ万史郎くん。保育園が休みの日には、近くの公園へ行き、穴を掘ったり、タイヤを転がしたりと、泥んこになってダイナミックな遊びをしている

    私はなかなか決断できない性格なので、別居を始めるまではずいぶんもやもやしていました。自分に鞭を打つために別の住まいを探し始めても相手にハッキリいえず、「どうしたの?」と聞かれてようやく……。ずるかったかもしれないと、いまでも思い出します。

    彼は当初は別居に消極的でしたが、このときばかりはここで考え直したら後悔すると思いました。

    これから何があっても、子どもの親には変わりない

    半年くらい実家にいて、いまの家に越してきてすぐに息子の保育園が決まったことが、やはり大きかったと思います。

    以前通っていた保育園では、子どもがけんかするたびに、先生方がわざわざそろって謝ってくれるようなところでした。ケアが行き届いていて安心な部分もあったけれど、そこまでしてくれなくてもと思うこともあって。

    いまの保育園は、けんかしたら先生がキッカケから勝敗までを教えてくれるようなオープンさで、親同士も「ごめんね」で済むほど大らかなので、楽ですね。息子も、前までは体力が有り余っていて、夜寝なかったりで苦労しましたが、いまは毎日どろんこになって帰ってくるし、ぐっすり寝ます。洗濯は大変ですが……。

    彼も、保育園の活動にどんどん関わるようになって、楽しそうです。ふたりで保育園の話でよく盛り上がります。以前は近くに住んでいたので、毎朝息子を保育園に送りにも来てくれますし、少し前に数駅離れた場所に越したのですが、何かあるときは前日に泊まりに来ます。

    それなら一緒に暮らせば……と思われるかもしれませんが、いまのこの距離感だからこそ、いいんだと思っています。このあいだも、保育園の高尾山の登山にそろって参加して、いい思い出ができました。

    いまは協力して子育てをしていますが、子どもはいつか自立して私たちから独立していきます。ですから、お互いに幸せの形を追求していけたらいいと思っています。

    新しいパートナーができるということもあるかもしれないけれど、お互いの幸せが一番。私も、気が合ってともに助け合えるようないい人がいないかなあと思ってはいます。もし、新しいパートナーができたとしても、私たちが息子の両親であることには変わりありません。

    結婚せずに出産したことも、別居を始めたことも、大きな決断でしたが、案ずるより産むが易しでした。

    これからも自分の気持ちに正直に、家族と向きあって、矛盾のない生活をしていきたいなと思っています。

    家族の思い出

    両親が写真家という芸術一家に育ったしまおさんの幼少期から、妊娠・出産を経て、現在まで。

    写真集にもなった幼少期

    画像: 写真集にもなった幼少期

    しまおさんが5、6歳のころの写真。父の伸三さんは35歳、母の登久子さんは42歳ぐらいとのこと。「昔住んでいた豪徳寺の家で、セルフタイマーで撮影したものです。私が水着を着ているのは、どうしてだろう? 当時、父のなかで押印が流行っていたので、写真の左上に押してありますね」

    おなかが目立ってきた妊娠8カ月

    画像: おなかが目立ってきた妊娠8カ月

    新しいマタニティウエアを買ったときに、記念に自撮り。妊娠中から産後3カ月くらいまで過ごした実家で撮影した。

    「息子は4月産まれ。これは2月に撮影したものなので、妊娠8カ月くらいですね。おなかが大きい姿を残しておきたいと思って、撮影しました」

    このあと臨月までどんどんおなかが大きくなった。

    生後すぐの万史郎くん

    画像: 生後すぐの万史郎くん

    予定日より、20日ほど早く産まれたという万史郎くん。このころは、まだそのうち結婚するだろうと意識していたそう。

    万史郎くんは、野外活動が積極的な保育園に通い、朝の着替えは自分で選び支度している。月に1度の高尾山登山もなんなくこなし、ケガしてばかりの元気印の男の子だ。

    人形劇の劇場を訪れた万史郎くん

    画像: 人形劇の劇場を訪れた万史郎くん

    物語を読んだり、お芝居を見たりするのが好きな万史郎くん。お気に入りは東京・代々木にあるプーク人形劇場での人形劇。

    「偶然なんですが、母方の祖父が参加していた大学のサークルが創立したそうです。演目が新しくなるたびに通っています」

    この日の演目は、『ねずみくんのチョッキ』。

    しまおまほさんの家族の年表

    2014年(36歳)妊娠。出産までの間、豪徳寺の実家と、新居のマンションを行ったり来たり
    2015年(37歳)息子誕生。出産3カ月後より、新居のマンションへ完全引っ越し。婚姻をしない形で、親子3人での暮らしがスタート
    画像: 万史郎くんのズボンは画家の土橋とし子さん作

    万史郎くんのズボンは画家の土橋とし子さん作

    2017年(39歳)息子とふたり暮らしに
    2018年(40歳)現在通っている野外保育などが盛んな保育園に息子が入園。送り迎えやイベントなど、息子の父親も積極的に参加
    画像: 名前入りカバーは園からの入園祝い

    名前入りカバーは園からの入園祝い

    2021年(43歳)現在
    画像: 野外活動で釣ったザリガニがペット

    野外活動で釣ったザリガニがペット

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    <撮影/中垣美沙 取材・文/長谷川未緒>

    しまお・まほ 
    エッセイスト・漫画家。1978年生まれ。大学在学中に『女子高生ゴリコ』で漫画家デビュー。雑誌等でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのレギュラー出演などでも活躍。2015年に第1子を出産。著書に『家族って』(河出書房新社)など。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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