• 画廊と美術館での学芸員経験をもち、74歳の現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん。郊外にある高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。1日1000円生活をしながら豊かな生活を目指している小笠原さんの「ものをもたずに暮らす理由」を紹介します。
    (『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』より)

    私が「もの」を持たずに暮らす理由

    私の住まいは、東京郊外の団地群の一つで、高齢者向けの3DKの賃貸です。

    バリアフリー、緊急非常時連絡受信機、転倒防止手すりなどが設置されていますが、築40年に近いので、防音や防湿は不備です。

    最寄り駅からはバスで15分ほどかかりますが、バス乗り場には近く、また家から歩ける範囲内に大小のスーパーがあります。

    私の住まいの基準は、とにかく「もの」を最小限にすること。室内が雑多に見えず、すっきりさせるのを理想としています。

    画像: 小笠原洋子さん

    小笠原洋子さん

    定職に就いていた頃は、それなりに家具や服も持っていました。でも、大きな洋服ダンスを処分せざるをえなくなったあるとき、「ものから自由になる解放感」を実感しました。この経験から、徐々に私の持たないルールが固まってきました。

    ・不要なものを明確にし、なくても困らないものは処分を検討する

    ・必要なものが出てきたら、まずはあるもので代用する

    ・すぐに捨てずに、とことん使い切る

    なぜものを減らすのでしょうか? それは、ものへの執着から離れたとき、その空いた隙間を満たしてくれるのが、潔さという心地よさだからです。

    そしてこの、「持たないで生きる知恵絞り」によって、生活が活性化していくからです。

    私が目指す精神の豊かさは、ものに縛られず、もの選びに煩わされず、必要不可欠なものだけで生きる倹約の隣にあるものだと思っています。

    キッチン回りは最小限に。食事はお気に入りの場所で

    画像: キッチンにはなるべくものを置きません。調理グッズや器類などはすべて備えつけの収納に収まる量にしています

    キッチンにはなるべくものを置きません。調理グッズや器類などはすべて備えつけの収納に収まる量にしています

    南から光がたっぷり入る部屋にキッチンとリビングペースがあります。台所は狭く、食器棚などはとても置けません。

    キッチン道具や食器類は、備えつけの収納に入るだけ、というルールにしています。炊飯器もありませんし、余分な器類は欲しい方にお譲りしました。

    また、カーペットもキッチンマットも敷かないので、床を広々と見せることができます。いちばんのメリットは掃除がしやすいことですね。

    画像: キッチン横にあるリビングスペース(洋室6畳)は書斎です。デスクと資料などを置いています。食事は窓際の小さなテーブルでとります

    キッチン横にあるリビングスペース(洋室6畳)は書斎です。デスクと資料などを置いています。食事は窓際の小さなテーブルでとります

    すぐ隣のバリアフリーでつながっているリビングルームは、他の部屋の住人さんならここに大きなテーブルを置いて食事をしているかもしれませんね。でも、私はここに兄が使っていた大きめな机を置き、書斎としました。

    となると「小笠原さんは、どこで食事をとるの…?」とお思いでしょう。

    そこで、古い籐のスツールを2台並べた上に、解体した本棚のボードを渡し、更紗のクロスをかけた食卓をつくりました。

    画像: 食卓も、スツールを2つつなげただけの自作のものです

    食卓も、スツールを2つつなげただけの自作のものです

    40年前に買ったこのスツールが好きで、座面中央が劣化して座れなくなったのに捨てずにいたことが功を奏しました。

    食卓としては低く、とても小さいのですが、「おひとりさま食」には最適。とかく携帯や眼鏡、鍵、雑誌など「ちょっと置き場」になりやすい食卓が、あまりの狭さで置けないため、おかげですっきり保つことができます。

    画像: 南側の窓に食卓を置いたこちらを絶景食堂と呼んでいます

    南側の窓に食卓を置いたこちらを絶景食堂と呼んでいます

    その食卓はリビングの隅に、野原と林だけを望む我が家の“絶景エリア”に置いています。

    画像: カーテンがない代わりに、モビールを飾っています

    カーテンがない代わりに、モビールを飾っています

    正面のガラス戸には、メモ用紙をさまざまな形に切り抜いてつなげたモビールが、カーテン代わりの目隠しとして、下げられています。

    本記事は『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)からの抜粋です


    小笠原洋子 (おがさわら・ようこ)
    画廊と美術館で学芸員の仕事をしたあと、美術エッセイストとして活躍。東京郊外の高齢者向け団地にひとり暮らし。若い頃からゲーム感覚で節約を楽しみ、持たない暮らしを心がける。近著に『ケチじょうずは捨てじょうず』(ビジネス社)がある。2024年2月、『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)を発売。

    ◇ ◇ ◇

    『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)|amazon.co.jp

    『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)

    『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)|amazon.co.jp

    amazonで見る

    「ケチカロジー」の生みの親、美術エッセイスト小笠原洋子さんの暮らしのエッセイ。「ものは上手に手放し、すっきり」「服を買わずにおしゃれを楽しむ」など、「お金は困らないくらいあれば十分」と語る小笠原さんのエレガンスで豊かな暮らしのアイデアが満載です。



    This article is a sponsored article by
    ''.