Q: 工夫しても部分的な冷えが治らない! 改善方法を知りたいです
じっとしていると手足がひんやり……
体の部分的な冷えを改善したいです。とくに、朝の起きたてや、仕事中にじっとしているときに、手の甲や足先、首だけ強い冷えを感じてしまいます。
夜はお風呂に入ったり、ふとんを湯たんぽであたためたりと、あたたかくして寝ることを心がけているのですが、朝や日中の冷えた体がなかなかあたたまらないのはどうしてでしょうか。
部分的な冷えに効くふだんの習慣と、おすすめの漢方を教えていただきたいです。
(みいやん さん/40代・会社員)
A:手足の先や首まわりはとくに冷えやすい部分。冷えの要因を知って温める習慣を
体の真ん中から離れるほど冷えやすいものです
冷えは万病の元。放置するとさまざまな不調につながります
入浴や湯たんぽなどの工夫もされているのに、手の甲や足先、首の強い冷えでお悩みなのですね。
私たちの体には体温を調節する仕組みがあり、体温が一定に保たれるようになっています。具体的には体の真ん中から離れるほど冷えやすい部位となります。みいやんさんの冷える部位つまり手足の先や首まわりなどはまさに冷えやすい部分となります。
それは、体が、手足の先から熱が逃げるのを防ぐために、交感神経が緊張し手足の血流を絞って熱が逃げるのを防ごうとする反応でもあります。
冷え性は放置すると頭痛や、肩こり、生理痛や便秘や下痢など他の体の症状にもつながるため、冷えを改善することはとても大切なことです。
まれには貧血や甲状腺機能低下症などの病気が隠れていることもあるため、一度は内科で血液検査や検診などは受けておくと安心です。
冷えやすい要因となる生野菜や果物、甘い飲み物などを控えましょう
現代の私たちの生活は冷え性になりやすい要因がたくさんあります。たとえば、一年中果物や生野菜が手に入ります。夏でも多くの場所で冷房が入っており、冷房が効きすぎて夏でも冷える場合もあります。
またお砂糖のたくさん入った飲みものやおいしいデザートがすぐに手に入ります。まずは生野菜や果物、甘いお砂糖の入った飲み物、食べ物を控え、旬の野菜や果物をできれば、生のサラダなどではなくて、煮たり焼いたりして火を通して食べることが重要です。
一般的には夏の果物、あるいは南国のトロピカルフルーツなどは体を冷やす作用があります。また太陽に近い木の上になる果物は体を冷やす作用があり、冬が旬の果物や野菜、地面の下になる根菜類はあたためる作用があります。りんごは木になりますが、冬が旬なので、冷える作用は少ない果物です。バナナやパイナップルなどは控えましょう。
根菜類であたためる代表的なものはしょうがですね。漢方薬にも含まれますが、シナモンも血流を改善し冷え性予防にも効果があります。
タバコは血流が悪くなるため控えてください。飲み物も注意が必要で、氷を入れない、冷蔵庫から出してすぐに冷たいまま飲まない、少しぬるくなってから飲むなどの工夫も大切です。
コーヒーや野菜ジュース、甘いサイダー類も冷えが悪化するため温かい番茶がおすすめです。
筋肉を増やして冷えにくい体に。ストレスや緊張は血流に悪影響
また体を冷えにくくするには、筋肉が熱を産生するため運動や筋トレをして筋肉量を増やすのも大切です。
ダイエットなどで痩せてしまうと冷え性になりやすくなりますし、皮下脂肪も冷えやすくなるので、筋トレで皮下脂肪を減らし、筋肉を増やすのも有効です。
ストレスなどで交感神経が緊張すると手足の末梢の血管が収縮して血流が悪くなり冷え性が悪化します。ストレスを減らし、リラックスすることが大切です。
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとってください。
何かリラックスできる音楽やアロマ、ヨガやストレッチ、ウォーキングなどもおすすめです。
体は「おしぼり」と一緒!? 水分のとりすぎによるむくみにも注意
またむくみがあるとその場所は冷えやすくなります。
たとえばおしぼりを想像してみてください。水分を含まない乾燥したおしぼりと水分を含んでいて温めたおしぼりがあるとします。
それを放置しておくと、最初は温かかったおしぼりも時間が立つとどうでしょう? 乾燥したおしぼりよりも冷えて冷たくなってしまいますよね。
このように余分な水分(むくみ)は冷え性の要因となるため、むくみをとるカリウムを多く含む食べ物をとるのも有効 です。
カリウムを多く含み冷えにも良い食べ物にはほうれん草、にんじん、小松菜、芋類、豆類、りんごなどもおすすめです。タンパク不足でもむくむため、鶏肉などでタンパク質をとることもおすすめです。
体から離れている部位は熱が逃げやすく冷えやすいため、あたたかい長めの靴下や熱を発生したり保温性の高い長袖などの下着、首にはスカーフを巻いたり、貼るカイロ、入浴剤などさまざまな温活グッズを利用するのもよいと思います。
冷え性におすすめの漢方
漢方薬では手足の冷えにはしょうがを含み手足の血流をよくする当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)や、むくみをとって血流をよくする当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がおすすめです。
また顔がのぼせて、足が冷える冷えのぼせにはシナモン(桂皮)を含む桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、体全体を温めて元気をつけるには真武湯(しんぶとう)、胃腸の調子を整え、冷えを改善し元気をつけるには人参湯(にんじんとう)、お腹が冷え、腹痛や下痢、便秘を繰り返しやすい人には大建中湯(だいけんちゅうとう)などが用いられます。
冷えは万病の元です。冷え性を改善して健康な生活を送ってくださいね。
今回の記事がみいやんさんはじめ、冷え性で悩んでいる皆さまの少しでもお役に立てば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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