• 家族との大切な思い出や出来事、時間が経つと記憶が薄れてしまうことも。たとえば、息子がひとりで留守番したときのこと、段ボールを電車に見立てて遊んだこと……、何気ない日常を切り取って、半世紀近くで90冊の絵本をつくってきた町田さん家族。その絵本の1冊『とまとばたけのにちようび』を公開します。子どもに土いじりをさせたいという動機でスタートし、9年間続けた区民農園でのエピソードです。

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    はるの にちようび。きょうは くみんのうえんにいくひだ。

    おとうさんが いった。「おなかいっぱい たべとけよ。たべないと、ちからが でないぞ。」

    「うん、ほたか、がんばっちゃうよ。もう 5さいだもん。」

    「たのむよ。おとうさんも、はたけしごとは、はじめてなんだ。」

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    じゅうたくと くるまのとおりに かこまれた くみんのうえん。

    「おはようございます。」

    「いい おてんきですね。もう、しごとに とりかかっている ひとたちが たくさんいる。じぬしさんのいえで くわや シャベルを かりてきた。」

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    まず つちを ふかく ほりおこす。

    ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ。

    ぷーんと つちのにおい。ほたかも はるかも

    いっしょうけんめいだ。ところが…

    「あっ みみず!」ほたかは シャベルを なげだした。「だんごむしだ。」「はさみむしもいる。」

    もう つちを ほりおこすことなど わすれてしまう。

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    つぎの にちようび、たねと なえを かいにいった。

    「きうり、えだまめ、だいこん、とまと… みんなやってみたいけど せまい はたけでは むりね。」

    おかあさんは ためいきを つく。

    「ほたか とまとが すき。」

    「おとうさんも とまとが いい。たいようの したで まっかに うれた とまとを たべたいな。」

    とまとのなえを たくさん かった。

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    「くさい、くさい。」

    と いいながら ほたかは つちに ひりょうをまぜた。

    みずを たっぷり ふくませた つちに

    なえを いっぽん いっぽん うえていく。

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    とまとのなえは すくすく そだち、

    ちいさな きいろい はなが さいた。

    さいたあとに あおい とまとの み が

    なった。

    「はるかみたいに ちっちゃい とまと!」

    ほたかは そっと、さわってみる。

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    ひざしが つよく なった。

    やわらかい はに、あぶらむしが いっぱい ついている。

    「くすりをまくと、からだに どくだから てで つぶそうね。」

    おとうさんが いった。

    ざっそうも いっしゅうかんで ぐーんと のびている。

    「とまとの じゃまだ。よいしょっ、よいしょっ。」

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    あるにちようび そらが きゅうに くらくなって

    ぽつぽつと おおつぶの あめが ふってきた。

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    あめは しだいに はげしくなり そらに しろい いなずまが はしった。かぜも ひゅうひゅう うなっている。

    「がんばれ がんばれ とまと。」

    「がんばえ がんばえ とまと。」

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    つぎのひ さんにんで はたけへ いった。

    「すごい かぜだったわね。」

    おかあさんは かたむいた しちゅうを なおす。

    あめと かぜに まけた とまとが おちていた。

    「あーあ かわいちょう。」

    「もったいない…。」

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    やっと ぎらぎらの なつが きた。

    「わーい ぴっかぴかの とまとだよ。」

    ほたかも はるかも ぴょんぴょん とびはねる。

    「さあ とるぞ!」

    おとうさんが いった。

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    おおきいとまと

    ちいちゃい とまと

    でこぼこ とまと

    くきを きずつけないように はさみを もつ。

    ちょっきん

    すとん

    てのひらに ずっしりと おもたい とまと

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    がぶり。

    「わあ あまーい!」

    おいしいあじが くちいっぱい ひろがる。

    「おいしい?」

    「うん おいちい。」

    「もう いっこ たべて いい?」

    こんな おいしい とまとは はじめてだ。

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    Copyright © MARIKO MACHIDA ※本記事の無断転載、使用を禁じます

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    まちだファミリー
    母・万里子さんは元小学校教師。長男の穂高さん、長女のはる香さんの育児中は専業主婦になり、手づくり絵本を通じて地域活動に励んだのち、教師に仕事復帰(現在は病気療養中)。父・弘さんは元高校教師で化学を教えていた。2016年より「ヒロシとマリコの手づくり絵本展」を開催し、縁のある場所を巡回している。インスタグラム:@mahiro_publishing

    ※まちだファミリーの「日常を愛で紡ぐ、小さな幸せの物語」は、『天然生活』2024年9月号、P.26~23に掲載されています。



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