(『天然生活』2020年2月号掲載)
心の奥に明かりが灯るような出来事を見つけて
萩尾さんを支えるひとつとして「物語」があります。本を読み、映画やドラマの世界に耽溺するひと時が心の養生に大いに役立つのです。
「物語のなかでたくさんの人生や旅を味わい、泣いて笑って、これまで幾度となく力をもらってきました。ここにはない世界を見るのも想像するのも、昔から大好きなの。気持ちがわきたちます」
萩尾さんは創作のなかだけでなく、身のまわりに散らばる物語や美しいものも丹念に拾い集めます。
縁あって再び手にした器、落ち葉の美しいグラデーション、りんごの甘い香り……。吹けば飛んでいきそうな、小さなものたちです。
「人生って、理不尽なことが多いじゃない。大事な人が急にいなくなったりもする。だからこそ、心の奥に明かりがともるような出来事を見つけて『今日も素敵だね、ありがたいね』っていいながら、上機嫌で生きていきたいと思うの」
日常にそっとひそむ「心を震わせるもの」を見つける感性は、蓼科の自然と暮らす年月のなかで磨かれたのでしょう。萩尾さんはいいます。
「自然の姿は四季折々に美しく豊かで、いつも発見があります。そして蓼科の空気は透きとおり、秋にはピンクに色づいて、まるでシャンパンのよう。清涼感いっぱいに体に染みわたって、いつだって私を元気にしてくれるのです」
日常のささやかな幸せを見つける
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姫りんごともいう「アルプス乙女」と「王林」。小さくてかわいいものにはつい手が伸びる
「暮らしのなかには、美しいものや幸せがあちこちに落ちている」と萩尾さん。
いつも目を凝らし、それらをすくいとって愛でるのが、ひそかな楽しみ。
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「宝物のようにいただく」栗の渋皮煮を美しいコナラの葉にのせて
「おいしいな、きれいだなと、喜ぶ心をいつももっていたいし、ユーモアも忘れちゃいけないと思います。だって人は、笑うことでたちまち元気になれますから」
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鉢上げの際に採れたレモンバーベナの葉。清々しい香りにいやされる
本を読む
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幼いころから「本が友達」。図書館で借りたさまざまなジャンルの本を積み上げ、手が空いたときに本の世界に潜り込むのが至福の時。
3週間で8冊読むのが目標で、寝る前はミステリーがお約束とか。
「昔は移動図書館、いまは茅野市図書館にお世話になっています。本は冒険や旅の宝庫。別の人生を体験できる大切なものです」
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まず初めにチェックするという新刊書コーナーで見つけた『ドラゴンの教科書』が最近のヒット。
萩尾さんが畏敬の念を抱くドラゴンにまつわる神話や伝承がまとめられている。
「原書房の本というだけで心躍りましたが、最高に面白い。近いうちに私の本棚に迎え入れます」
頼りにしている健康のもと
オレガノカプセル
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「天然の抗生剤」と呼ばれるオレガノ精油と抗菌作用の高いレモン精油を配合したカプセルは、風邪やインフルエンザの予防に。
「ハーブよりも薬効が凝縮され、呼吸器が不調のときや風邪が流行っているときに助けてくれます。旅にもお守りとしても必ず持っていくほど、心強い存在」
ジューサー
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食療法を研究していた親友に勧められ、10年以上、コールドプレスジュースを飲んでいる。ヒューロムのジューサーを愛用し、こちらは2代目。
「にんじんをベースにりんごやレモン、青菜を入れることも。低速のしぼり方で酵素や栄養素を損ねない、自然なジュースに」
<撮影/寺澤太郎 取材・文/熊坂麻美>
萩尾エリ子(はぎお・えりこ)
ハーバリスト。諏訪中央病院にハーブガーデンをつくり、患者にアロママッサージのボランティアも行う。著書『香りの扉、草の椅子』(扶桑社)、『あなたの木陰』(扶桑社)が好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです