Q:おなかが弱くて、急にトイレにいきたくなります。おすすめの習慣はありますか?
体質なのか、腸が悪いのか……トイレに駆け込むくせを直したいです
おなかがゆるくて、食事の途中や、会議の前など緊張しているときにすぐにトイレに行きたくなります。電車の途中でおなかがぎゅるぎゅると下してしまい、途中下車することも。
トイレに行けば腹痛は治りますし、便秘よりはつらくないのかな……と思っていますが、体質でしょうか。おすすめの習慣や控えたほうがいい食べものなどあれば教えてください。
(むーちょさん 40代/会社員)
A:自律神経の働きが、腸に影響。体を温めて規則正しい生活を
「過敏性腸症候群」の可能性が高いでしょう
日本人の10%が発症する「過敏性腸症候群」
今回はむーちょさんからのおなかがゆるくなったり、おなかが痛くなったりするというご相談です。
会議の前の緊張などでトイレに行きたくなり、トイレに行くと腹痛が治るのは「過敏性腸症候群」の可能性がありますね。
過敏性腸症候群は精神的なストレスで自律神経が乱れ、腸の働きに異常が生じ、便秘や下痢を引き起こすものです。
人によって症状の現れ方や重症度が異なります。便通の異常の現れ方によって「下痢型」「便秘型」その両者を繰り返す「混合型」の3つのタイプに分けられます。
下痢型はストレスや緊張などのわずかなきっかけによっておなかの痛みと激しい便意とともに下痢を生じることが特徴で、とくに通勤などトイレに行けない状況の時に発症しやすいとされており、電車の途中でおなかがぎゅるぎゅると下り、途中下車してしまうむーちょさんは下痢型の過敏性腸症候群に当てはまるものと考えられます。
日本人の10%程度に見られるといわれ、原因がはっきり分からないケースもありますが、主な原因としては、脳腸相関が関係していて、ストレスなどの影響が脳から腸に行く自律神経のバランスをくずし、腸の働きに異常をきたすなどの症状があるのではないかと考えられています。
同時に腸の痛みを感じる知覚神経も過敏になり、おなかの痛みや張りなどを感じやすくなると考えられています。
他には感染性胃腸炎にかかった後に腸の粘膜が弱くなり、腸内細菌に変化が生じることで腸の働きに異常が生じるという説もあります。
ストレスや疲れも誘因となると考えられていて、就寝中や休日は症状が現れにくく、排便すると一時的に症状が改善することも特徴のひとつです。
ただ、なかには便通の異常に大腸癌や大腸ポリープ、甲状腺の病気などの場合もありますので、一度は消化器内科などで便の検査や血液検査、必要な場合には大腸カメラやCT検査なども受けておくと安心ですね。
おなかの調子を知るための、食事ダイアリーのすすめ
改善のポイントとしては、まずは規則正しい生活をしてストレスや疲れをためない生活を心がけることが大切です。
睡眠を規則正しくとり、適度な運動を心がけて、脂分の多い食事や刺激物、過度な飲酒を控えるのも重要です。
冷え性も腹痛や軟便をきたすため、おなかが冷えないように腹巻きをしたり、冷える食べ物である生野菜や果物、砂糖が入った甘いデザートを控えたり、あたたかい飲み物、食べ物を心がけることも大切です。
僕もニンニクを多く含む食事や冷たいビールを飲むとおなかが下りやすいのですが、控えるべき食事を見つけるために、食事のダイアリーをつけて、おなかの調子が悪くなる確率が高い食べ物を事前に知っておくと、ある程度避けることができると思います。
おなかの調子を整える漢方
それでもつらい場合には、整腸剤や軟便を改善する西洋薬もありますし、漢方薬では温めておなかの調子を整える大建中湯や、ストレスを和らげおなかの調子を良くする半夏瀉心湯などの漢方薬もあります。
最近では先ほどお伝えした脳腸相関の関係で、片頭痛と過敏性腸症候群は関連があるという報告もあり、片頭痛の治療をすることで過敏性腸症候群が落ち着いたり、逆に過敏性腸症候群の治療で頭痛が改善したりという報告もあります。
今回の記事がむーちょさんはじめ、おなかの不調に悩む皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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