• 身のまわりにあるものを生かして心地よく、楽しく、毎日を過ごすラムヤート店主の今野満寿喜さんと美環さんに、暮らしのなかの工夫と小さな暮らしの相棒を伺いました。
    (『天然生活』2022年1月号掲載)

    “正しい”と信じることをふざけながら、淡々と

    ラムヤートにはいつもだれかが訪れている。芸術家に菓子研究家、ミュージシャン。札幌から道内から、東京から全国から。

    2年近く前に取材で訪れたとき、合間に今野満寿喜さんがごみ袋片手に向かいの水の駅まで歩いて行くのが目に入りました。

    何気なく見ていると、駐車場のごみを拾い始めます。するとスマホ片手の観光客と思しき人が。満寿喜さんは「どこかお探しですか?」とみずから声をかけ、周辺のお店をさらりと案内。

    最後に「楽しんでくださいね」とも添えて。きっと本人は覚えてすらいない、ささやかな日常。

    でも、なぜここにみんながひかれて集まるのか、その秘密が少しだけわかった気がした瞬間でした。

    今野家の暮らしの根底にあるのは、まぎれもない利他の精神。

    けれど、それを声高に主張も、周りに押し付けもしません。

    日々を慈しみながら、日常に転がる小さな楽しみを見つけては、面白がりながらふざけながら、ただ自分の行動をするだけ

    それが周囲に、みんなに、役立つと信じて──。

    工夫
    車は持たない、携帯も持たない

    移動が苦手なうえ、車の環境への影響も気になっていました。

    画像: 昔郵便局で使われていた赤い自転車が、満寿喜さんの愛車。「これで郵便局に行くのが好き」と笑う

    昔郵便局で使われていた赤い自転車が、満寿喜さんの愛車。「これで郵便局に行くのが好き」と笑う

    「車の維持費が年間20万円以上かかるとして、車を手放せばそれが浮きます。携帯もそう。必要最低限の生活費がわかったので、そのぶんだけ働くことにしたんです」

    画像: 週1回、息子と仲間家族でバスケをするのも、余白時間の楽しい使い方

    週1回、息子と仲間家族でバスケをするのも、余白時間の楽しい使い方

    結果、ラムヤートは4〜12月の土日のみ営業に。

    お金を手放すことでできた余白時間は、ものづくりや子どもとの時間になり、豊かな瞬間の重なりで満たされます。

    工夫
    廃材は宝物。町から出るものを大切に

    引っ越しのたびに家具を廃棄したり新調したりするのが理解できない、と話すふたり。

    画像: 「拾った」スチールの枠に、大工さんに分けてもらった廃材を載せて棚板に

    「拾った」スチールの枠に、大工さんに分けてもらった廃材を載せて棚板に

    「この町が大好きだから、洞爺湖町から出たもので暮らしを紡ぎたい」と考え、店をつくるときも、建築資材や什器など、ほぼ洞爺湖町から出た廃材で手づくりしました。

    画像: 廃業した和菓子屋さんから譲り受けた食器棚。ほとんど朽ち果てていた側面は、トタンを張って修復

    廃業した和菓子屋さんから譲り受けた食器棚。ほとんど朽ち果てていた側面は、トタンを張って修復

    倉庫には、頂いたり、拾ってきたりしたお宝がまだまだいっぱい。

    最近は湖でごみを拾うときに行う「黒曜石探しが楽しみ」と満寿喜さん。



    <撮影/古瀬 桂 取材・文/遊馬里江>

    今野満寿喜、美環(こんの・ますき、みわ)
    北海道・洞爺湖町にある薪窯のパン屋・ラムヤートと、日用品店のtoitaオーナー。商品は仲間と立ち上げたオンラインショップFROm TOYA からも購入可能。https://fromtoya.shop-pro.jp/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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